ホーム ブログ

アイラモルト 1990-2021, 31年 49.3% Thompson Bros.

香味は穏やかながらフルーツとアイラピートが溶けて絡み合い、長熟アイラモルトの魅力を保っている。

2022年新年のご挨拶と2021年の総括

2022年、明けましておめでとうございます2021年も大変お世話になりました。

2021年は大変お世話になりました。あらためまして2022年あけましておめでとうございます。

昨年は公私ともに様々なことに手を出したせいもあり、ブログの更新頻度が例年にないくらい落ちてしまいました。今年は少しでも持ち直そうと思います。

オミクロン株によるcovid-19再流行も懸念されていますが、持ち寄り会も少しずつ再開しつつ、頓挫しているドリシェアプロジェクトも少しずつ進めていく予定です。

ウイスキーも500種類以上は飲みたいところです。


2021年の主な出来事

まずは昨年全体の振り返りから。

ウイスキー全体の好調な売れ行きに加えてcovid-19が流通網に与えていた影響が徐々に回復してきたのか、ウイスキーのニューリリースは例年以上に多かった気がします。

価格が全体的に上昇傾向なのは変わらずでした。ボトラーリリースに限らずオフィシャルボトルのスタンダードラインナップも幾分価格が上昇し、価格据え置きの場合は度数を下げたり、価格上昇に合わせて年間限定品になったり、価格は上昇したけどダブルマチュアードや度数上昇で付加価値を付けたりと、各社様々な印象でした。

また、ペルノリカール傘下のグレンリベットがイリシットスチルやカリビアンリザーブというオフィシャルスタンダード限定品をリリースしました。この分野ではLVMH傘下のアードベッグやグレンモーレンジ、グラント&サンズ社のグレンフィディックが数年先行していますが、大手各社の商品開発が旺盛になったことを示す分かりやすい事例だと思います。

50000円以上の高価格帯のボトルにあっては、引き続きニューリリース(新規ボトル)とオールドボトルの価格差がかなり縮小しています。

ニューリリースの価格上昇傾向は穏やかながら今も続いていることから、この傾向は今後もしばらく続くのではないかと思っています。


そうは言っても、2021年は国内ウイスキー産業の今後を占う大きな出来事が重なった年だった。

次に、2021年に起こった主な出来事をダイジェストで紹介していきます。

どれも日本国内ウイスキー業界の今後に大きな影響を与えるような出来事であり、そうした意味で2021年は、国内ウイスキー産業にとって特別な年だったのではないかと思います。

①日本洋酒酒造組合がジャパニーズウイスキーの定義を制定

一部抜粋

日本洋酒酒造組合HP:http://www.yoshu.or.jp/statistics_legal/legal/pdf/independence_06.pdf

食品産業新聞社WEBニュース:https://www.ssnp.co.jp/news/liquor/2021/02/2021-0217-1355-16.html

くりりんのウイスキー置き場の考察記事:https://whiskywarehouse.blog.jp/archives/1078585591.html

2021年、日本洋酒酒造組合によってジャパニーズウイスキーの定義が発表されました。ジャパニーズウイスキーの国際的な評価が高まる中で、ブランド価値の毀損を防ぐことが大きな目的です。このニュースは海外でも多いに注目されました。

施行日は2021年4月1日、経過措置として2024年3月31日までの期間が設けられています。

これに対してサントリー、ニッカ、キリンなどの大手ウイスキー企業に留まらず、イチローズモルトやマルスウイスキーを始め、国内の多くのウイスキー蒸留所が自社の販売ボトルの表記を改めることになりました。

細かい内容や考察は掲載したリンクを参照していただくのが早いでしょう。

今後の改訂は現時点では分かりませんが、ジャパニーズウイスキーの国外流通に対しては勿論、国内でのウイスキー生産に対しても長期的に大きな影響力を持つことになると思います。

②T&T TOYAMAによるジャパニーズウイスキーボトラーズプロジェクト始動。

https://camp-fire.jp/projects/view/403368

2021年のウイスキー関連ニュースの中で、今後の日本のウイスキーシーンにも大きな影響力を持つニュースだと思います。

すごく簡単に説明すると、海外でいうところのGordon & Macpail社のような他のボトラーにも自社保有の樽を供給するプライマリーボトラーが、国内でも誕生するかも知れないよ、というニュースです。

ジャパニーズウイスキーの定義制定から間を置かずにプロジェクトを実行に移すことができた意味も大きかったのではないでしょうか。今後の展開にも注目したいです。

③嘉之助蒸留所とディアジオが長期的な業務提携

https://kanosuke.com/special/newsrelease/

https://note.com/tk_whisky_kitan/n/n8e1c7fef0eaa

鹿児島県の嘉之助蒸留所が、国際的な種類販売大手企業のディアジオ社と長期的なパートナーシップを結びました。

国内のウイスキー蒸留所、特に嘉之助蒸留所と同じくここ5年以内に誕生したばかりの国内ウイスキー蒸留所にとってかなり注目度の高いニュースだったのではないでしょうか。

独立資本が主流であった日本のウイスキー産業に海外の大手資本が参入した初の事例でもあり、前述のジャパニーズウイスキーボトラープロジェクトとも合わせて、今後の国内ウイスキー産業の趨勢を占う出来事だと思います。


2021年、記憶に残ったボトル

黄金時代再来を予感させる、短熟ボトル飛躍の年だった

2021年のニューリリースはどれを飲んでもだいたい美味しく、ハズレが少なかった印象でした。

2000年代以降に蒸留された原酒も熟成が20年前後となり、過去の評価を刷新するような魅力や見どころを備えたボトルが出始めています。2002年蒸留のボウモア(TWC向けやアデルフィ20周年向け)などは典型だと思っています。

年末の目玉ボトルとして各社からリリースされた長熟ボトルも、どれも素晴らしい完成度でした。70年代や80年代蒸留の原酒は少なくなり、ほとんどが90年代原酒に移行しましたが、見方を変えれば90年代蒸留原酒にも長期熟成による風格が備わり始めたということだと思っています。

しかし個人的に特筆すべきは、熟成年数10年未満のボトラーリリースの中に見どころのあるボトルが散見されたことです。

ボトラーから10年未満の短熟ボトルが豊富にリリースされる様子は、1960年代やその付近に蒸留された原酒が多数リリースされた「ウイスキー黄金時代」を彷彿とさせます。

今後の数十年、時の試練を経ることで、現行の短熟ボトルの中から過去の短熟オールドボトルの名品たちと肩を並べるようなボトルが現れるかも知れません。

仮に同じような味わいにならなかったとしても、将来まだ誰も知らないようなかたちで珠玉の銘品となるボトルが現れる可能性もあります。

いずれにせよ非常に興味深く、未来に対してこうした期待を抱かせる短熟ボトルが徐々にリリースされ始めたことが、2021年最大の収穫だったのではないかと思っています。この傾向は今後もある程度まで続くかも知れません。

こうして振り返ると、2021年は「ウイスキーは時間を飲むものである」という言葉の意味を感じずにはいられなかった1年でした。

さて、前置きが長くなりましたが、2021年に記憶に残ったボトルを紹介します。ありがたいことに素晴らしいオールドボトルを飲む機会にも恵まれましたが、今年は例外的にニューリリースに絞って紹介します。

①クレイゲラキ2006-2010, 13Y. 57.4% BBR for TWC

お求めやすい価格と素晴らしい味わいを持ちながら数ヶ月以上売れ残っていたことは、今考えても不思議でしかありません。

我慢できずにブログで紹介したところ完売となり、飲み手の皆さんからは大いに怒られ、販売元のウィスクイーさんからは大いに感謝されました。

②ティーリング1989-2017, 28Y. 48.5% 信濃屋向け

ボトリングは2017年ですがリリースは2021年。

往年のアイリッシュトロピカルが、新しい飲み手には感動を、少し歴の長い飲み手には懐かしさを与えてくれたボトルだと思います。

ありがとうさようなら。そして、ありがとう。

③グレンタレット 1990-2021, 30Y. 46.1% ハンターレイン “OLD&RARE” モルトヤマ8周年記念

自称富山の弱小酒屋、モルトヤマ下野氏の選定眼の確かさを物語るボトル。2020年のグレントファースも素晴らしいボトルでしたが、内容でそれを超えたと思います。

三郎丸蒸留所を擁する若鶴酒造とタッグを組んだT&T TOYAMAでは前述のジャパニーズボトラーズプロジェクトのクラウドファンディングも大成功させたほか、今回は取り上げていませんがT&T TOYAMAのボトラーリリース「Wonder of Sprits」や「Don’t trapped by Dogma」シリーズからも見どころのあるボトルが多数リリースされました。

2021年、愛と情熱と勢いをもって最もチャレンジした国内ボトラーだったと思います。2022年も注目したいです。

④株式会社ラダーの各種ボトル

こういう選び方は若干ズルいかも知れませんが、ラダーさんのボトルははっきり言ってどれも美味しかったです。

代表の北梶氏の樽選びは、現在に至るまでブレることなく自身の求めるフルーティーさの追求という信仰に近い美学に貫かれながらも、常に新しい価値を提供しようとするものだと感じています。氏が折に触れて語る「伝統と革新」という言葉にも、それが表れているのだと思います。

シリーズが完結した「EIDORON」、高いクオリティを維持し続ける「ART SESSION」、短熟ながら新しい魅力を発信する新シリーズ「Trick Star」など、今後のリリースにも期待が高まります。

なぜ俺は全部買っていないんだ…(泣)

⑤キルホーマン 100% Islay Feis Ile 2021Release

シェリー樽熟成原酒の比率が高まったことは今後もしばらく賛否を呼ぶ気はしますが、キルホーマンクラブ向けリリースと共にキルホーマン蒸留所が取り扱うシェリー樽原酒の質の向上を確実に感じさせてくれるボトルでした。

今後のキルホーマンはバーボン樽熟成以外も要チェックではないかと思っています。

⑥スプリングバンク 2010-2020, 10Y. 55.6% 新ローカルバーレイ

様々な飲み手に話を聞く中で、2021年リリースの中でベストに挙げる人がもっとも多かったボトルです。リリース直後から二次流通市場での価格が跳ね上がりましたが、今はその頃が懐かしくなるくらいの超高値に。

先行で発売された海外からは入手できず、結局オークション経由でフランスの個人から無理を言って購入。期待していた国内流通は「バーに優先的に案内したいので…」とアナウンスがあったため涙を飲んで購入自粛したにも関わらず、しばらくしたらこっそり店頭などに並んでいて愕然としたことを、書きながら思い出しました(笑)


そんなわけで、2021年のまとめと、2022年のあけおめ記事でした!

あらためまして2022年もよろしくお願いします!

番外編:あずみ、ではなく、あさか

個人的には2021年これを超える出来事は起きませんでしたよね。

サマローリ エボリューション2013、49%:伝説的な古酒から近年ボトルまで全部盛り。全体のバランスではなく要素の多彩さを紐解きながら飲むのが楽しい。

SAMAROLI EVOLUTION 2013, 49%


評価:★★★

CP:☆

価格:★★★★-★★★★☆


ボトル紹介

伝説的な古酒から近年ボトルまで全部盛りな原酒構成は唯一無二。

サマローリ社が定期的にリリースしていたエボリューションシリーズの一つ。2013年Verはリリースとしては初期のボトルにあたります。度数は49%、カスクストレングス、Whisk-e限定なのでリリースはおそらく日本国内のみだと思います。

言ってしまえばマルチヴィンテージのヴァッテッドモルトなのですが、特筆すべきはその中身。表ラベルに書かれている構成原酒を列挙してみましょう。

  • モートラック1957
  • スプリングバンク1959
  • スプリングバンク1962
  • ブルックラディ1964(シェリー)
  • スプリングバンク1965
  • グレンリベット1968(シェリー)

以上6種が各5%ずつ。

  • ラフロイグ1970
  • グレンリベット1971(シェリー)
  • グレンギリー1971(シェリー)
  • ロングロウ 1973
  • ロングロウ1974(シェリー)
  • アードベッグ1974
  • グレンギリー1975
  • アードベッグ1976
  • アードモア1977
  • カリラ1977
  • タリスカー 1978(シェリー)
  • スプリングバンク1979(シェリー)
  • グラングラント1979(シェリー)
  • ハイランドパーク1980
  • マッカラン1980
  • ポートエレン1981
  • モートラック1984
  • スプリングバンク1985(シェリー)
  • グラングラント1985
  • ボウモア1985
  • ロングロウ 1987
  • タリスカー1987
  • ラガヴーリン1988
  • リンクウッド1989(シェリー)
  • グレンバーギ1989
  • ハイランドパーク1990
  • ミルトンダフ1994
  • アベラワー1994
  • ジュラ1997
  • リンクウッド1997

以上30種が各3.5%ずつブレンドされています。

うん、計算が合わないな。

原酒全てが2013年まできっちり熟成されていたわけではないとは思いますが、23蒸溜所の今では考えられないようなヴィンテージの36原酒、そのうち10種がシェリーモルトという贅沢仕様。計算は合いませんが表記通りに単純計算するとシェリー原酒の比率は38%となります。


テイスティング

船頭多くして船山に登る。しかし古酒感に彩られた一つ一つの要素にフォーカスできると面白い。オールドボトル好きには刺さるかも。

このボトルの味わいを一言で言うなら「船頭多くして船山に登る」です。

香味に主軸が定められておらず、たしかに複雑で多彩ではあるものの、全体的にチグハグでまとまりに欠け、様々な要素が溶け合うことなくそこかしこでせめぎ合っている印象です。香味のプロポーションをまるごと味わおうとすると一体何を飲んでいるのかよく分からなくなります。

しかし見方を変えて、そこに存在する一つ一つの香味要素にフォーカスしながら飲むと、面白いボトルになると思います。

特にオールドボトル愛好家の飲み手であれば、このボトルの様々な香味を探すのは楽しいでしょう。ほとんど全ての香味が古酒感を伴う、または古酒感に由来たと思われる印象を備えていると思います。

比較的わかりやすいのはシェリーの古酒感で、現行のシーズニングシェリー樽では出ようがないアモンティリャード古酒すら思わせるオールドシェリー感です。すえた印象をまとった滋味深い内陸ピートはオールドグレンギリーやロングロウやハイランドパーク、あとはオールドボトルのタリスカーを感じずにはいられません。飲んだ後に感じられる滋味深いヨードピートからはオールドアイラ、香りや味わいに弱いながら感じられるベリー感はスプリングバンクかも知れません。やや若さの残る麦芽感や余韻のドライさは90年代蒸留のリンクウッドなどでしょうか。80年代ボウモアのパフューム感は個人的にはわかりませんでした。

自分で書いたテイスティングノートを見ても、とても美味しそうであり、実際のところ同系統のボトルの中では美味しい部類だと思います。

ただ、これだけ素晴らしい原酒を使用しているにも関わらず、全体の香味バランスの中には、何とも言いようがない満足感の欠如というか物足りなさが残ってしまいます。この点は非常に残念だと言わざるを得ません。

「元の酒が超良いんだから混ぜても美味いに決まってるだろ」みたいな、なんていうか、製品としての素人感が出ちゃってるというか…。正しい意味で、ブレンダーという仕事がいかに大変で神経を使う仕事なのかを逆説的に理解できます。

また、「このボトルの楽しみ方は古酒感を伴う多彩な要素一つ一つにフォーカスすること」とは言ったものの、この楽しみ方にはシングルモルトの古酒に対する相応の経験値が必要で、簡単に言うとマニアック過ぎて誰にでもお勧めできるものではないです。それに古酒に対する造詣が深い方々でも「混ぜる前の原酒の個性が探せたから全体のバランスがいまいちでも良し!」とはならないのではないかと思います。

以上のような理由から、別に美味しくないわけではありませんが、残念ながらRecommendはできないです。


テイスティングノート

香り:

全体的に穏やかだが古酒感を伴う複雑な香り。ただ香味の輪郭はぼんやりとして特徴やまとまりに欠ける。黒糖とカラメル、オールドアイラのヨードピート、シェリー古酒、みたらし、アマレットリキュール、ベリージャム、発酵した干し草など。時間経過での変化も大きく、楽しめる。

味わい:

香味の輪郭はぼんやりしている点は変わりないが、古酒感を伴った様々な香味を探すことができる。オロロソやアモンティリャードシェリー樽の収斂、やや若い麦芽のフェインティは飲むことで若干強調される。やや苦味を伴うウッディネス、すえた印象の古酒の内陸ピート、苺やベリー。ボディは中程度。

余韻:

シェリー古酒、穏やかなドライさと弱い収斂。カラメル。余韻はじんわりと長い。

クライヌリッシュ 1998-2021, 22年 51.8% The Whisky Hoop:必飲ボトル。現行ボトルで味対価格比を考えるとこのあたりがギリギリか。高い香味バランスは古酒感にも通ずる。

CLYNELISH 1998-2021, 22Y. 51.8% SIGNATORY VINTAGE for The Whisky Hoop

Matured in Refill Butt

Cask number 11699


評価:★★★★ Recommend!

CP:☆☆☆

価格:★★★★☆


ボトル紹介

TWH和紙ラベル最新。クライヌリッシュとしては2本目。

日本の会員制ボトラーまたはウイスキー愛好家団体であるThe Whisky Hoop(以下TWH)の2021年8月のボトルであるクライヌリッシュ22年。1998年蒸留リフィルシェリーバット熟成のシングルカスクです。

TWHからリリースされるボトルの中でも特別なものに採用される和紙ラベルがあしらわれており、それだけでも味わいへの期待が高まります。

クライヌリッシュが和紙ラベルとして採用されるのは今回が2本目です。1本目は2019年にリリースされた1995年蒸留、リフィルシェリーホグスヘッド熟成の23年もので、当時飲んで味わいに感動した私はとても高いテンションでブログ記事を書いています。

このボトルは昨今の情勢を鑑みる形で、会員全員が購入する頒布ボトルではなく、購入は希望者のみとして販売されました。

価格は第一弾と比べて約2倍と高額でしたが会員人気は非常に高く、急遽購入制限がかけられたほどです。会員のみで完売となったため、一般販売はおそらくないだろうと思われます。


TASTING

美味しいウイスキーとは?意味あるウイスキーとは?への模範解答。全てがハイレベル。

和紙ラベル1本目のクライヌリッシュに続き、こちらも傑作と言っていいでしょう。必飲です。文句ありません。価格を考慮しても間違いなくRecommendできるボトルだと思います。

渾然一体とした複雑な香味、古酒感を思わせる熟成年数以上にこなれた麦芽感、嫌味なく乗っている綺麗な樽感、クライヌリッシュらしい蜂蜜や蜜蝋のニュアンス。

麦芽、熟成、樽、原酒の個性と、シングルモルトに備わるべき要素が全て揃っている上に、まるで当たり前であるかのように香味のバランスが取れています。

美味しいウイスキーとは?意味あるウイスキーとは?への模範解答と言えるような味わいのボトルだと思います。

樽に由来するシェリー感はリフィルシェリーバットによる穏やかなものであり、以前の和紙ラベルのクライヌリッシュがリフィルシェリーホグスヘッド熟成でしっかりとしたシェリー感だったことと比較すると、樽のサイズによる樽由来の香味の出方の違いがよく分かるでしょう。

決して安くない価格に関しては賛否あると思いますが、ここ最近のボトル高騰を考えると、現行ボトルとして味わいとの釣り合いを考えた場合、個人的にはこのくらいの価格がギリギリかなと思っています。


TASTING NOTE

香り:

香り立ちは穏やかに始まり、徐々にしっかりと濃厚に。甘く、非常に複雑かつ渾然一体としていて、蜂蜜、麦芽の熟成感、やや渇いた印象の樽感。プラム、パイナップル、アプリコット、ブラウンシュガー、ローストアーモンド、キャラメル、バナナ、フレンチトースト、ゆっくりと蜜蝋を思わせるワクシーさ、マッシュした麦芽の甘さ、非常に弱くスミレや芳香剤のようなフローラル香(全体の香味バランスを一切崩さないExtremely Light Perfume)。

味わい:

度数よりも優しい口当たり。飲むと、ミックスフルーツを思わせる複雑なフルーツ香と麦芽の熟成感の渾然一体とした印象が、香り以上に鮮烈に広がる。滋味深いにも関わらず華やか。心地良いウッディネスと収斂、蜂蜜、バニラ、ナッツ、キャラメルとバナナ、葡萄畑、弱く腐葉土。ボディは非常に厚く、引っ掛かりなく余韻へと移行する。

余韻:

渾然一体とした果実感と麦芽の熟成感が長く続く。ジンジャー、クローヴを思わせる穏やかなスパイス感を伴う。

クレイゲラキ2006-2020, 13Y. 57.4% BBR for The Whisky Crew

麦芽の旨味を今で味わい、未来で楽しむコスパの高い良ボトル。

CRAIGELLACHIE 2006-2020, 13Y. 57.4% Berry Brothers & Rudd Exclusively for THE WHISKY CREW

CASK TYPE: BARREL, No. 8101264


評価:★★★☆ Recommend!

CP:☆☆☆☆☆

価格:★


ボトル紹介

老舗ボトラーBBRのThe Whisky Crew向け。2006年蒸留のクレイゲラキ。

どうも。ブログ記事としてはかなり間隔が空いてしまったドリンカーズラウンジですよ。

最近は活動の場としてTwitterが主軸になってしまっていて、簡易テイスティングノートは頻繁に挙げてはいるものの、色々あってまとまった記事を全然書いていませんでした。

そんなTwitter IDはこちらです。:https://twitter.com/DrinkersLounge

久しぶりのボトル紹介なわけですが、今回紹介するのはウィスクイーが展開する会員制のECサイト「The Whisky Crew」向けに老舗ボトラーのBerry Brothers & Ruddからリリースされた2006年蒸留のクレイゲラキ、バーボンバレル熟成の13年シングルカスクです。

このボトルがリリースされたのは実は数ヶ月前なので、既に知っている人は知っているボトルかも知れませんが、よく行くバーからのオススメと信頼できる飲み手のブログ記事(モルト道:https://www.google.co.jp/amp/s/gamp.ameblo.jp/zgmf-x10a19730730/entry-12668309793.html)の内容から購入に至り、直近で抜栓したボトルです。


TASTING

麦芽の旨味が主体、見どころ満載なクレイゲラキ

端的に言って、このボトルは高コスパの超優良ボトルです。

色々と見所が多いボトルなので、一つ一つ解説します。

まず第一に、このボトルは香味バランスの完成度が高く、明確に麦芽の旨味を香味の主体としていること。

最近リリースされるシングルモルトは全体としてフルーティーなものが増え、それ自体は素晴らしいことだと思うのですが、個人的には麦芽の旨味がやや弱くボディが軽いと感じられるものが多い印象です。そんな中、このボトルは太い麦芽感をしっかりと感じることができボディも厚めです。こうした太い麦芽香を求めていた飲み手は多かったのではないでしょうか。

香りから味わい、余韻にかけてまでしっかりと麦芽の旨味が感じられるところは、「シングルモルトの原料は麦芽である」という最も基本的なことをシンプルに思い出させてくれます。

更に言うと、熟成が足りないと感じてしまうような未熟な要素やネガティヴさもなく、しっかりとしたフルーツ香も備わっていて樽香も強過ぎず、熟成年数以上に香味が複雑です。

熟成感が熟成年数の長さによって達成される香味の複雑さだとすれば、このボトルの持つ複雑さは熟成によって各要素が相互に溶け込む前の力強さを残しており、それらがせめぎ合いながらもうまくバランスしていることによる複雑さだと思います。この部分が完成度が高く、秀逸なポイントだと感じています。

第二に、このボトルはクレイゲラキという蒸留所のハウススタイルを上手く表現しているということ。

第一に挙げた見所と少し重なる部分がありますが、個人的に思うクレイゲラキのハウススタイルは、一言で言えば「スペイサイド地域の麦芽の酒」です。

冒頭に記載したブログから一部言葉を借りて表現しますが、クレイゲラキはスペイサイド地域のシングルモルトらしいフルーティーな個性を備えつつも、濃密で時にオイリーな印象すらある麦芽の旨味がしっかりと感じられる強い酒質を持ち、熟成を経ることでそれらがミルキーでクリーミーな香りと舌触りを纏うようになるというのがハウススタイルだと思います。

こうしたクレイゲラキのハウススタイルにとっては、シェリーカスクでの熟成よりもバーボンカスクでの熟成のほうが適しているのかも知れません。その点でもこのTWCのカスク選びは成功していると思います。

第三に、価格がリーズナブルなこと。

このボトルの熟成年数は13年と、クレイゲラキのオフィシャルボトルのスタンダードラインと同じ熟成年数であり、多くの蒸留所のオフィシャルボトルのスタンダードライン(だいたい12±2年)とも変わりません。たしかにクレイゲラキOBスタンダード13年と比較するとシングルカスクである以上やや高額にはなりますが、10000円を切る価格でこの味わいが楽しめるのは純粋に素晴らしいことだと思います。

第四に、このボトルが2000年代以降の原酒であること。

日本国内はもちろん世界的なウイスキーブームにあって、90年代蒸留の原酒はそろそろ本格的に枯渇しているのか希少性が高まっており、どの蒸留所に限らず新規リリースのシングルカスクはだいたい数万円が相場となっています。ちなみにアイラモルトに限ると相場は更に倍以上。そうした状況の中にあって、2000年代蒸留の原酒にしてこれだけ完成度の高いボトルがこの価格でリリースされるのは、ウイスキー愛好家にとっては朗報だと私は思っています。

価格も含めてトータルでの完成度が高いこのボトル、文句なくRecommendをつけることができます。

今後もこうした見所のあるシングルモルトがリリースされ続けるのであれば、飲み手としてはとても嬉しいです。

今の味わいを楽しみながらも未来に期待が持てる、非常に優れたリリースだと思いました。

なお、以降に記載しているテイスティングノートで、私個人は時間をかけて飲んだ際の香味として味わいの後半から余韻にかけて微量の石鹸やパフュームのニュアンスを拾っていますが、全体の香味バランスを崩すものでは微塵もなく、味わいの評価にすら影響していませんので、この部分をことさらに取り上げて期待して飲むと肩透かしをくらうと思います。おそらく今の時期の高い気温とグラスの中での時間経過、酒質の持つオイリーさに起因するものだろうと考えています。私自身は結果的に複数本購入したため、念のため保管状態には気をつけたいと思っています。

とりあえず、まだ未飲の方であれば、まずは一回、飲んでみてください。


TASTING NOTE

香り:

しっかりとして濃密な香り立ち。強い麦芽の旨味が香味の主軸を形成し、そこに穏やかに柑橘主体のフルーツが香る。シトラス、柑橘の皮、香ばしく溌剌とした麦芽香、バター、ビスケット、青林檎。キャラメルのようなクリーミーな印象、ほんのりとバニラ、蜂蜜。

味わい:

度数相当にしっかりとした口当たり。口に含んでも麦芽の甘味が濃く、香りの印象通りのクリーミーな舌触り。バターブレッド、ビスケット、オレンジ、林檎、強過ぎないウッディネス。ボディは厚い。

余韻:

味わいの要素をそのまま引き継ぎ、バターと麦芽、度数相当のアルコールのアタックと共に生姜や白胡椒のスパイス感。余韻は長め。酒質の持つオイリーさに起因するのか微量の石鹸やパフュームのニュアンスを感じるが最後まで全く残らず、全体の香味バランスを崩すものではない。

なんかブラインドでサンプルが届いたんだが?

0

何か届いた。

えー、経緯を話しますと、今度コニャック/アルマニャックのオンラインテイスティング会をやらせていただけることになったわけなんです。

この投稿の一つ前に投稿してるやつですね。

https://drinkers-lounge.com/2021/07/31/kyoto-fine-wine-and-spirits-shinanoya-brandy-event/?amp

内容としましては、Kyoto Fine Wine & Sprits(KFW&S)さんと信濃屋さんとのコラボ企画で、素晴らしいコニャックやアルマニャックをテイスティングキットを購入してくださった皆さんと一緒に楽しもうというものです。

8/12の20:00からWhisky FeelsのYouTubeで配信されます。テイスティングキットを買わなくても誰でも視聴できちゃいます。

前回も写真のメンバーでテイスティング会をやったんですが、それを見たKFW&Sさんがありがたいことに面白いと思ってくれたようで、あらためてテイスティング会を開くことができることになったというわけです。

前回のテイスティング会はTwitterとFacebookだけの告知になってしまい、ブログ媒体を持っているにも関わらずブログ記事として残していなかったのは痛恨の極みですよね。

そんな前回は、信濃屋の担当ふまるくんから

「ドリラジさんにはビックリしてもらいたいんで、一切の先入観のない状態でテイスティングしてほしいんです!」

と、意味がわかるようで全くわからない説得を受けまして、何故か僕だけ紹介する製品のテイスティングができないという状態(直前でなんとか先行販売予定のボトルだけテイスティングできた)だったので、今回は事前にきちんと味わいを確かめたいし、それを踏まえて打ち合わせもしたほうがいいからと、サンプルをお願いしたんですよ。

で、届いたのが冒頭の写真のあれ。

何でブラインドなのかな?

事前テイスティングとか、それを踏まえた打ち合わせの意味を、知っているのかな?

しかも量が少なく見えるのは実際に量が少ないからで、「ブラインドで満足してほしくなくて10mlにしました!」とのこと。

どうやらあいつはやる気満々のようです。


というわけで、超久々にブラインドテイスティング

僕としましても「いつ何時、誰の挑戦でも受ける」をモットーに、怪我をしない体作りを目指して日々テイスティングを繰り返してるといっても過言ではないので、こういう挑戦は正面からしっかりと受けたいと思いますね。

キレてないですよ?俺をキレさせたら大したもんですよ。

というわけで今回はコニャック/アルマニャックというブランデー領域にはなりますが、超久々にブラインドテイスティングです。

とはいっても、中身自体は長熟のコニャックかアルマニャックであることは公開されていて、ボトルスペックもある程度は分かっています。

ただ、送られてきたサンプルが本当に今回のオンラインテイスティング会のものかは最早わからないため、何もないものとしてテイスティングをしたいと思います(笑)

そんなわけで全てのテイスティングしたわけですが、今回のサンプル、どれもめっちゃ美味いです。

ただ書きながら思いましたが、ウイスキーよりも経験値の少ないブランデーというジャンルでは言葉による香味表現にどうしても幅が出ず、かなり苦戦しました。

実際にテイスティングノートを読んでいただければ分かるのですが、飲みながら自分が感じた細かい香味の弁別を第三者に伝えるということを目的にするにはかなり厳しいテイスティングノートになってしまいました。

私のテイスティングノートのスタイルは「まずは香味全体のアウトライン、それから香味を分解し、隙間を埋めていくように出来るだけ適切な言葉を選びながら細部を埋めていく」というものなのですが、ある程度の量を経験として積まないとアウトラインはともかく様々な香味を言語に置き換えていくのに結構苦労するというのは大きな気付きだったと、個人的に感じています。

そんなわけで、以下、4種類のテイスティングノートです。


「ふまるん」の「ふ」

香り:

しっかりとした香り立ち。フレッシュな果汁の印象が先行する。奥から熟成感が感じられる複雑な葡萄の甘さとふくよかさ、心地良いオーク。時間経過でクリーミーな印象が現れる。

味わい:

飲むと濃厚な香り同様に葡萄果汁を思わせる力強い甘さが先行し、少し遅れて弱いオークの収斂、時間経過でじわじわと古酒を思わせる複雑さが立ち現れてくる。

余韻:

余韻の長さは中程度で、果実感から徐々に古酒の熟成感へと移行していく。


「ふまるん」の「ま」

香り:

重い果実香と微かなランシオ。凝縮した干し葡萄、葡萄畑の土っぽさ、ややしっかりとしたウッディネス、僅かにキノコのニュアンス。時間経過で果実香に少しずつフレッシュな印象と甘酸っぱさ、花のようなフローラルさが加わる。

味わい:

口当たりは比較的優しい。香りの印象を損なわない、複雑で重い果実香。レーズンの甘味と旨味の凝縮。時間経過で香り同様にフローラルな印象が加わる。ボディは中程度からやや軽め。

余韻:

長い余韻。干し葡萄の凝縮感が少しずつ解け、香りの終わりに感じられたフレッシュな葡萄の果汁感が少しずつ現れてくる。時間経過で少し甘酸っぱい印象。


「ふまるん」の「る」

香り:

穏やかな香りたちだが複雑。凝縮された葡萄の果実香が主体だが、比較的解きやすい。果汁、黒土、溌剌とした熟成感、プラムを思わせる甘味と酸味。時間経過で甘酸っぱい印象が少しずつ丸みを帯び、果実香にフレッシュな印象が増してくる。

味わい:

口当たりは力強く、しっかりとした収斂を伴う。甘味と酸味。干し葡萄、プラム、リコリス、程良いウッディネス、スパイス。ボディは中程度で、そのまま余韻へと移行する。

余韻:

甘味の中に味わいから酸味とスパイシーさを引き継ぐ。余韻は長め。時間経過で酸味が甘味に徐々に溶け合い、葡萄の果実香にふくよかな印象が増す。オーク由来のスパイシーさと収斂は持続する。


「ふまるん」の「ん」

香り:

非常にふくよかで丸みがあり、かつ複雑な果実香。瑞々しさを保つ干し葡萄、陽の光に当たった葡萄畑、掘り返した土、葡萄の皮と茎、遅れて重たいウッディネス、時間経過でやや汗に似た香りも。

味わい:

口当たりにも飲んだ後にも干し葡萄の凝縮した甘味と旨味が非常に強く、複雑な印象は香りから変わらない。飲むとややスパイス感。ボディは厚い。

余韻:

長い余韻。味わいの要素を引き継ぎ甘味とスパイス更に弱いミントのニュアンスも。

【先行案内】Kyoto Fine Wine and Spirits×信濃屋コラボイベント

0

前回、Cocktail Bar Raven ✖ 信濃屋コラボレーションボトルのテイスティングセミナーへご参加いただきました皆様、誠にありがとうございました。お陰様でセミナーチケットは完売、イベント自体も盛況となりまして、無事コラボレーションボトルも完売致しました。

本日は、前回テイスティングキットをご購入いただきました皆様へ、表題の件、Kyoto Fine Wine and Spirits×信濃屋コラボイベントについてご案内申し上げます。

・Kyoto Fine Wine and SpiritsのTwitterはこちら!
https://twitter.com/KyotoFine

アンノック18年46%オフィシャルボトル:並行品を安く見つけられたらかなりお買い得。ハイランドモルトらしい麦芽感を楽しめる、普段使いに最適な一本。

ANCNOC 18Yo. 46% Official Bottle

評価: ★★★ Recommend!

CP: ☆☆☆ – ☆☆☆☆

価格: ★ – ★☆

ボトル紹介

上級品の入り口にあたる18年。12年とはスペックが何もかも違います。

ノックデュー蒸留所のシングルモルト、アンノック18年です。

アンノックはオフィシャルボトルのラインナップが非常に豊富ですが、12年を入門編とするなら、上級品の入り口にあたるボトルがこの18年です。

12年と比べて熟成年数が伸びているのは勿論ですがそれだけでなく、度数構成原酒(樽種)というシングルモルトの味わいに直結する基本的な要素が何もかも異なります。

アンノック12年は40%加水調整ですが、アンノック18年は46%加水調整と飲み応えのある仕上がり。

原酒構成も12年がバーボンカスク熟成原酒のみで仕上げられているのに対して、18年はスパニッシュオークのシェリーカスクアメリカンオークのバーボンカスクで熟成された原酒が使われています。

こうやってスペックだけ見ても「美味そうだな」と思っちゃいますね。

ちなみにアンノック18年より更に上級品の22年や24年も、特にウイスキーを飲み慣れたモルト愛好家からの人気は根強いです。

アンノックの国内正規輸入元は三陽物産株式会社ですが、同社を介さない並行輸入品も一定量出回っています。並行輸入品は価格面にばらつきはあるものの正規輸入品の3割引から5割引程度で売られていることが多く、米国回りで輸入されるものは容量が750ml(欧州向けや国内正規は700ml)であったりと、正規輸入品と比べてお得な点が多いのが実情だったりします。

テイスティング

家で飲むならこういうのがちょうどいい。麦芽感好きに一推しなシングルモルト。

穏やか過ぎるほどの穏やかさが持ち味だったアンノック12年と比べると、18年はまさにスペック通りに味わい全ての面で上位互換となっています。

加水調整ながら46%という高めの度数と18年という熟成年数は、この蒸留所の原酒の持つハイランドモルトらしい麦芽の旨味を十分に引き立たせていて、香味構成の中核となっています。

そこにバーボン樽由来のバニラやオレンジを思わせるウイスキー好きにはお馴染みの香味、更にはうっすらとプラムやレーズンを思わせるシェリー樽由来の甘さ、ミントのニュアンスなども折り重なり、きっちりと複雑です。ピートは基本的に感じられません。

フルーツ香よりは麦芽の旨味を楽しむ香味構成となっている点も、シングルモルトを飲み慣れた愛好家の琴線に触れているのでしょう。

更に付け加えるなら、暑くなるこれからの時期に向けてハイボールで飲んでも最高なボトルです、やや贅沢な使い方かも知れませんが。飲み方を選ばないところも素晴らしいです。

こういうボトルを安く買えたらラッキーですね。問題なくRecommendです。

飲み比べで面白いボトルとしては、同じ度数と同じ熟成年数ながら味わいの系統が全く異なる「アラン18年」はどうでしょうか。

「10000円以下で良質なシェリー感が楽しめる自宅向きのシングルモルト」部門で覇権を握ったアラン18年ですが、今回のアンノック18年も、並行輸入品で安いボトルを見つけた場合という条件付きにはなりますが「1万円以下で良質な麦芽感を楽しめる自宅向きのシングルモルト」部門での覇権候補の一本だと思います。

アラン 18年 46% オフィシャルボトル(新ラベル)

また、以前投稿した「アンノック12年」の記事にはノックデュー蒸留所の簡単な沿革や、なぜ蒸留所名をボトルの名前にしなかったか、などについて書いています。

12年と18年は味わいの雰囲気には共通項もあれば違いもありますので、良かったら参考にテイスティングノートを見比べてみてください。(今見返してみると12年のテイスティングノートは若干香味を取りすぎているきらいがあります)

アンノック 12年 40% オフィシャルボトル(ノックデュー)

テイスティングノート

香り:

穏やかに始まり、ゆっくりと強くなる。熟成感を伴う麦芽の旨味とバーボンバレルの樽感が主体で、そこにシェリー樽由来と思われる甘さや微かなミントの印象も加わり、一定以上に複雑。ザラメ砂糖、べっこう飴、バニラ、蜂蜜、オレンジ。続いて弱いプラム、レーズン。ウッディネスは比較的しっかりしているが嫌味ではない。弱いミントのニュアンスとグラッシーさも。

味わい:

口当たりは度数相当で、ある程度の飲み応えを保っている。樽材由来のウッディネスはやや強くなり、スパイス感も。ローストした麦芽の熟成感、蜂蜜、弱いレーズン、弱いバニラ、ほんのり樹液の印象、ボディは中程度からやや厚め。

余韻:

味わいから継ぎ目なく移行し、白胡椒を思わせるスパイス感、オレンジマーマレードの苦味と甘さ、程良いウッディネス、麦芽の甘味と、多彩な要素を引き継ぐ。余韻の長さは比較的長い。

アードベッグ20年54.4% Boutique-Y. 亀田興毅ボトル:複数樽ヴァッテッドの利点が活きている。オフィシャルの長熟っぽさがある美味しいボトル。

ARDBEG 20Yo. Batch 21, 54.4% Boutique-Y Whisky Company for RUDDER ltd. SPECIAL BOTTLING FOR KOKI KAMEDA. 329 Bottles.


評価:★★☆ Recommend!

CP:☆☆☆

価格:★★★★★(700ml換算)


ボトル紹介

アードベッグ好きな亀田興毅氏のための特別ボトリング。

ブティックYウイスキーカンパニーから株式会社ラダー向けにリリースされたアードベッグ20年。日本人初プロボクシング世界三階級制覇を達成した浪速乃闘拳こと亀田興毅氏のためにセレクトされたスペシャルボトリングです。

ボトルの詳細はこちら

何年か前、新宿のBAR LIVET、同じく新宿のBAR CARUSOで亀田興毅氏がウイスキーを飲みながら何やら『悪い相談』(バー・酒販業界用語で新規リリースなどの打ち合わせなどを指す言葉)をしていたのを目撃したことを思い出します…

イギリスの酒販店Master of MaltのプライベートブランドであるブティックYは、複数樽をヴァッテッドしたシングルモルトを500mlでリリースするシリーズで、世界的に好評を得ています。

このボトルではありませんが、アイラディスティラリー名義でリリースされたアードベッグ(アイラディスティラリー#2、25年 バッチ1)は、MMA2017(モルトマニアックスアワード)でBest Premium Peated Whisky、IWSC2018(インターナショナルワイン&スピリッツコンペティション)でGold Outstandingを受賞しています。

テイスティング

バランスに優れた美味しいボトル。熟成感の他に古酒感も。

これはなかなかの優良ボトルです。

味わいの傾向としては先程簡単に紹介した同社の受賞ウイスキーであるアイラディスティラリー25年#2、バッチ1と似ていて、フルーティーアイラと言っていい仕上がりです。

ブティックウイスキー アイラ #2, 25年 バッチ1、48.7%(アードベッグ)

塩素や金属を思わせる特有の鋭さを持つアイラピートの後から、麦芽の熟成感に伴うフルーティーさや煮詰めた麦芽のような甘さがしっかりと現れてくるところが好印象です。

違いとしては熟成感が年数通りで、より溌剌としているところと、それによりピートの主張がやや強く、ナッティさが感じられるところでしょうか。しかしピート自体は麦芽の熟成感の中に半ば溶け込んでいて分離感のない印象で、そのために鋭すぎることがなく、これらは飲み応えのほか香味の奥行きに繋がっている部分だと思います。香味のバランスとしても一つの均衡点の上にあると言え、評価すべきポイントだと捉えました。

全体として欠点の少ないボトルであり、多くのシングルモルト好きにお勧めできるボトルだと思います。私はピートの溶け具合に古酒感も感じました。

700mlに換算すると高額になってしまうため、コストパフォーマンスの評価は難しいところですが、似たような味わいは長熟アードベッグにしかないため、現状では飲む機会が非常に限られてしまっています。

そう考えると比較するボトルはこのボトルより更に高額なオフィシャルの長熟ボトルとなってしまうため、味わいの点からコストパフォーマンスは少なくとも低くはないだろうと考えました。このボトルがシングルカスクに拘らないことの利点が活かされていると思います。

長熟アードベッグとしての香味バランスを更に突き詰めた美味しいボトルを入手したいと思った場合、現在のところ金額としては700ml換算価格で3倍以上の支出を覚悟しなくてはなりません。

抜栓直後でピートがやや強いかなと思われた場合は1-2週間程度置いてからあらためてテイスティングしてみるとフルーティーさが出てくると思います。度数も高いため、経年変化を楽しんでも良さそうです。

テイスティングノート

香り:

しっかりとした香り立ちで、ピートが先行するが甘さも感じられ複雑。塩素や金属を思わせる柔らかいアイラピート、塩気と汗、ヨード、ソルトピーナッツ、併せて溌剌とした麦芽の熟成感とアーモンドペーストのような甘味(うっすらとフィナンシェを思わせる)、すりおろした林檎、オレンジピール、そこから微かに革製品、同じく微かにミントも。

味わい:

口当たりは度数よりも滑らかな印象だが、塩素とほんのりと金属感のあるアイラピートの主張が香りよりもやや強くなる。すぐ後から蜂蜜、アーモンドペーストの甘さ、ほんのりと柑橘の皮のオイリーなニュアンス。甘味とピートのバランスが良く、ほんのりと古酒感も。ボディは中程度からやや厚め。

余韻:

味わいの印象を引き継ぎ、ソルトナッツ、アーモンドペーストの甘さ、マッシュした麦芽の甘さが返ってきて、そこから塩素や金属のような鋭いアイラピートが持続する。余韻は長い。

ハイランドパーク 2007-2020、13年 57.1% DECADENT DRINKS向け:近年系シーズニングシェリーモルトの佳作。深みのある甘さにスモーキーピートが良いアクセント。

HIGHLAND PARK 2007-2020, 13Yo 57.1% Single Cask Series Selected by and exclusively bottled for DECADENT DRINKS

First fill Europian Oak Sherry Hogshead. cask No. 4613, 349 bottles.


評価★★★ Recommend!

CP:☆☆

価格:★★★(関税など含む)


ボトル紹介

ここ最近出来の良いボトルが多いハイランドパークのシングルカスクシリーズから、DECADENT DRINKS向け。

ハイランドパークのオフィシャルボトル、DECADENT DRINKS向けのシングルカスクです。ウイスキースポンジというシリーズで良ボトルを連発しているボトラーとして有名なところですね。

ハイランドパーク蒸留所(またはオーナー企業であるエドリントン)から直接樽を買い付けたボトラーズ各社や個人購入者向けの「シングルカスクシリーズ」としてリリースされています。簡単に言うとオフィシャルボトルのPB(プライベートボトル)です。

ボトルのスペックとしてはファーストフィルシェリーホグスヘッド樽で13年熟成、ただし樽材はアメリカンオークではなくヨーロピアンオークを使用しています。

ベリー系の甘さがしっかりと出る代わりにスパイシーで刺すようなドライな個性も出やすいアメリカンオークに比べて、ヨーロピアンオークは甘さ控えめながらカカオのようなビターさや黒蜜を思わせる深みのある甘さが出る傾向があると思っています。

今回、

『樽はウイスキー熟成用のシーズニングシェリー樽だろうけど、ヨーロピアンオークなら樽からのエキスがバリバリに出るアメリカンオークよりも深みのある甘さが主体で、口当たりと余韻のスパイシーさやドライさも少なく、もしかしたら古酒感も出たシェリーモルトになるかも知れない。樽の大きさと熟成期間が上手くハマる必要はあるけど、樽からの影響が強めなファーストフィルシェリーホグスヘッドで13年熟成であれば、本来モルティーで長熟向きなハイランドパーク原酒で上手く仕上がるポイントである可能性がある。それに、ここ数年のハイランドパークのオフィシャルシングルカスクは外さない出来のものばかりだし、オーナー企業がマッカランと同じエドリントンなので、オフィシャルラベルでリリースされるこのシリーズには割と良さげなシェリー樽原酒を回してそう。期待できそうな気がする。』

というような思惑から、スペック買いしてみた1本です。

結果、味わいはだいたい狙い通りで、抜栓直後から美味しいボトルでした。送料や関税込みでなかなかのお値段になってしまった以外はナイスチョイスだったと思います。

そんなわけでテイスティングしていきます。

テイスティング

ほろ苦く深みのある甘さが好印象。近年系シーズニングシェリーモルトの佳作。

近年系シーズニングシェリーモルトの良作で、シェリー由来の香味にはヨーロピアンオークの個性がしっかりと表れているだけでなく、熟成年数と樽種との組み合わせ的にも詰め時を心得たリリースではないかと思います。

先述した通り、シェリー由来の香味はレーズンのような華やかな甘さではなく、カカオや黒蜜を思わせるようなビターさの効いた深みのある甘さです。これはスパイシーさや刺すようなドライさが少ないことと合わせてヨーロピアンオークの個性だと思います。

(ヨーロピアンオークはアメリカンオークに比べて生育が遅く、年輪が稠密なことから樽材からのエキスの抽出が遅いため、香味にこのような違いが生じるという話を伺ったことがあります)

香りの奥からは心地良いタンニンの収斂と土っぽさとともにプルーンやほんのりとレーズンのような甘い印象も感じられ、それらをハイランドパークのスモーキーなピート由来の香味が下支えすることで、香味に更なる深みを与えています。ヨードの効いたアイラピートではこうしたバランスにはならなかっただろうと予想されます。

シェリーバットより小型のシェリーホグスヘッドを使うことで樽由来の香味の影響をしっかりと得つつ、13年という絶妙な熟成期間でボトリングするのは、もしかしたら結構難しいことだったのではないかと思われます。選定者の優れた審美眼の為せる技かも知れません。

何も考えなくても美味しく飲める上にスペックにこだわるウイスキーマニアも納得の仕上がりであり、価格の問題はあったにせよ、味わいとしては十分にRecommendです。

テイスティングノート

香り:

度数相当のしっかりとした香り立ち。カカオ含有量の高いビターチョコレートや黒蜜を思わせる深い甘さのシェリー香が主体。皮付きの葡萄の甘い香りと土っぽさが合わさり、葡萄畑のような印象。それらをスモーキーなピートが下地さえしている。ビターチョコレート、黒蜜、プルーン、クロスグリ、ほんのりブルーベリー、黒土、家具と埃、遠くで燃やした煙。アルコールの刺す印象が少しある。

味わい:

度数相当にしっかりとした口当たり。ビターさを伴った複雑な甘さを香りから引き継ぎ、ほんのりと古酒感、その後じわじわとベリー系の甘さが上がってくる。皮付きの葡萄とその茎、奥から弱くイチゴジャム、程良いタンニンの収斂。ボディは厚め。

余韻:

味わいを引き継ぎ、やや長めの余韻。樽由来の甘さが徐々に薄れていき、スモークと麦芽の甘さが残る。

人気の記事