デュワーズ27年 46% Double Double Aged for Ultimate Smoothness

目次

全方位に角の取れた丸くふくよかな甘味。古典的な高級ブレンデッドウイスキーの味わいで、覚えて損はない。ただしこのボトルのコスパは悪い。

DEWAR’S Blended Scotch Whisky 27Y. 46% DOUBLE DOUBLE AGED FOR ULTIMATE SMOOTHNESS, 500ML


評価:★★★-★★★☆

CP:☆

価格:★★★(700ml換算★★★★)


ボトル紹介

手間暇惜しまないこだわりの作り。受賞歴もあるデュワーズの高級品。

箱裏

今回紹介するボトルは、International Whisky Competitionにおいて2019年、2020年と2年連続で「最優秀マスターブレンダーオブザイヤー」を受賞しているデュワーズの7代目マスターブレンダー、ステファニー・マクラウド氏が手掛けたデュワーズ「Double Double」シリーズから、デュワーズ27年です。

「デュワーズ史上最高峰のなめらかな味わい」を謳うこのシリーズは、熟成の長い原酒を贅沢に使用したデュワーズのハイエンド品で、熟成方法も非常に手の込んだものになっています。

箱裏に図解されていますが、まず個別に熟成された数十種類のグレーンウイスキーとモルトウイスキーを一旦別々に混ぜ合わせてから更に熟成させ、その後に両者をブレンドしてから再度別の樽に詰め直して熟成、最終的にそれをパロ・コルタドのシェリーカスクで追熟を行うという、手間と時間を惜しまないプロセスを踏んでいます。

この「Double Double」シリーズは今回紹介する27年の他、21年と32年が国内にも本数限定で正規リリースされています。27年は2020 International Whisky Competition ブレンデッドスコッチウイスキー部門で2位を受賞、32年は同じ年に全部門総合での最高賞にあたる「Whisky of the Year」に選ばれています。

紹介HP(アサヒビール株式会社):
https://www.sapporobeer.jp/news_release/0000012308/

テイスティングノート

香り:

往年の高級ブレンデッドスコッチウイスキーを思わせる、穏やかだが複雑な香味。生木を食んだようなニュアンスや樹液の印象を僅かに伴いつつ、穏やかにレーズン、プラム、ザラメ、バナナ、弱いカカオ、カラメルシロップ、コーヒーキャンディ、更に奥からオレンジゼスト、微かにシトラス

味わい:

優しい口当たり。穏やかな中に膨らみがあり、バナナ、カカオ、キャラメル、焦がしたザラメやカラメル、弱く香ばしい穀物感。ボディは中程度で、余韻への移行はスムース。

余韻:

味わいの要素を引き継ぎ、やや樽のニュアンスが強くなる。生木、弱い渋味と収斂、炒った穀物、焦がしカラメル。余韻は中程度からやや長め。


コメント

複雑で高い香味バランスは、ブレンデッドウイスキーのハイエンド品として伝統に忠実で古典的。

このボトルは十分にスムースで、十分に複雑、香味バランスも高く、味わいには受賞も納得の説得力があります。

ただ、だからこそ言いたいこともたくさん出てきてしまい、飲み手が味わいをどう捉えるかで評価は変わるでしょう。

それには後で触れるとして、まずは良い点を書いていきます。言いたいことはたくさんあると書きはしましたが、良い点もたくさんあります。

第一に、ちゃんと美味しいです。香り、口当たり、余韻の全てが、まさに古典的で伝統的な高級ブレンデッドウイスキーのそれです。

この「古典的で伝統的な高級ブレンデッドウイスキーのそれ」と言える味わいについては、その対局にあるシングルモルトのシングルカスク(単一の樽からボトリングされたもの)と比較すると分かりやすいと思いますので、以下で簡単に説明します。

熟成環境をいくら整えても自然と影響と時間の流れにより、どうしても個体差が出てしまうのがシングルモルトのシングルカスクです。個性的ですが、その個性は場合によっては良くも悪くも作用します。

対してブレンデッドウイスキーは、求めるべき香味に向かって人の手によって作られた、ある種の作品であり、指揮者の役割を担うブレンダーの手によって適切に配置された様々な原酒の個性が響き合うオーケストラのようなものです。

そして、このボトルの味わいは作品として成立しています。これはとても大切なことです。ラベルや箱にも大きく書かれているように、香りも口当たりもスムースで引っかかりなく、どこまでもストレスなく楽しむことのできる、非常に上質なウイスキーです。

樽を4回変えていることは香味に大きく影響している印象で、加水46%という度数でありながら樽感はしっかりとしており、樽由来の香味も重厚で複雑です。しかし香味全体で樽が勝ち過ぎることはなく、馥郁とした丸さとまとまりを帯びています。

これはおそらく使用されているグレーンウイスキーがかなり上質だからでしょう。グレーン由来のバナナ感や穏やかながらも香ばしい穀物感は、決して強くは主張ないものの、このボトルのスムースで丸さのある香味を保つのに、なくてはならない要素だと思います。

こうした香味の組み合わせと全体像は、どこを切っても単一蒸留所の原酒だけでは体現できないブレンデッドウイスキー特有の複雑さです。特に初めて体験するのであれば、覚えておいて損のない味わいだと思います。


このボトルは美味しいし、味わいも覚えて損はないけど、予想は超えてこない。あと高額。今は他にも色々あるし、ちゃんと探せばもう少し安いものの中から似た味わいはたぶん見つけられそう。

はい、サブタイトルにまとめてしまいましたが、良い部分はひとしきり褒めましたので、ここからは違った角度から言いたいことを一つずつ言っていこうと思います。

まず、このボトルの香味はオールドブレンデッドウイスキーが昔から持っていた香味バランスの焼き直しです。デュワーズという歴史あるブレンデッドウイスキーの味わいとして伝統を踏襲するのは正しい方向性と言えるかも知れませんが、ニューリリースである以上、欲を言えば「Old To The New」であってほしく、その意味でこのボトルにそうした新しさはありません。

また、このボトルは500mlとやや少ない容量で30000円未満(700ml換算すると40000円未満)と、ブレンデッドウイスキーとしてはかなりの高額ボトルです(ちなみに、32年に至っては500mlボトルが50000円以上で販売されていて、700ml換算すると70000円以上になります)。

このボトルのような高額な受賞ウイスキーを実際に飲もうと思うのは、ウイスキー愛好家の中でも特に感度や熱量の高い人たちが中心だと思われます。そうした人たちは既に様々なウイスキーを飲んでいることが多いため、スムースさを全面に押し出した古典的なブレンデッドウイスキーの味わいにはある程度慣れています。

そのため、このボトルは「美味しいけれど想定内で、他の高級ブレンデッドウイスキーと比べてもなんだか没個性的(樽が効いてるのはわかるけど…)」と捉えられてしまうことが多いのではないかと思います。

美味しいけれど想定内…こうなってしまうと、味わいと価格の釣り合いをとることは難しくなります。

はっきり言ってしまうと、私自身このボトルの味わいは全然嫌いではないのですが、コスパは悪いと思っています。

そしてコスパの悪さは市場においては競合の多さに直結します。

例えば、オークションに目を向けるだけで「ホワイト&マッカイ21年」のようなシェリーカスク熟成に重きを置いたオールドブレンデッドウイスキーを、現時点でもかなり安い価格で入手できてしまいます。

現行リリースのブレンデッドウイスキーに目を向けても、香味バランスの取り方はやや異なりますが半額近くで買える「ロイヤルサルート21年」はかなり手強い相手です。重厚さや複雑さはこちらが優っていますが、ロイヤルサルート21年は麦芽の熟成感をうまく活かした香味バランスのブレンデッドウイスキーで、価格込みでの総合的な満足度では引けを取る可能性があります。

更に、現在のウイスキーシーンはシングルモルトのオフィシャルラインナップも非常に充実していて、特に18年クラスの上級品では原酒の個性を出しつつ香味の複雑さと熟成感において高級ブレンデッドウイスキーに引けを取らないリリースも多くあります。

例えば私が「30000円近いこのボトルの香味に対抗できそうなボトル」と聞かれたら、ほぼ同額かそれ以下で購入できる「ダルモアのオフィシャルボトル18年」を強くオススメします。ホワイト&マッカイからの続きでダルモア18年を紹介すると「お前はリチャード・パターソンの回し者か」とか思われそうですが。(リチャード・パターソンはホワイト&マッカイやダルモアのマスターブレンダーです。)

現行のダルモア18年については、飲んだことがない方は是非飲んでみてほしいです。他の蒸留所のOB18年と比べるとやや高額ですが、価格だけのことはある素晴らしい出来栄えであるだけでなく、味わいの点でもなかなかに換えの効かないボトルです。シングルモルトなのでデュワーズ27年よりも熟成年数は短いにも関わらず飲み応えがあり、麦芽の熟成感は強く、シェリー感は同等以上に秀逸です。


上記のように、複数の代替えボトルをあっさりと思いついてしまう時点で、私自身はこのボトルにRecommend!を付けることができませんでした。嫌いな味わいではないんですが。むしろ好きなほうなんですけども。

もう一度まとめると、

「このボトルは美味しいし、味わいも覚えて損はないけど、予想は超えてこない。あと高額。今は他にも色々あるし、ちゃんと探せばもう少し安いものの中から似た味わいはたぶん見つけられそう」

というのが、個人的な感想の要約です。

でも、嫌いとかでは全然ないんですよ?想定内ではありましたが、美味しいですよ?

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次