ベンロマック2010-2022, 11年 46% コントラスト: カラゴールドモルト

目次

ビアカスクフィニッシュでもなくビール酵母でもなく、ビール用麦芽で仕込んだシングルモルト。

BENROMACH 2010-2022, 46%

CONTRASTS: CARA GOLD MALT


評価:★★☆

CP:☆☆☆

価格:★


ボトル紹介

2022年発売オフィシャルリミテッドリリース。クリスプ社のエール用麦芽を一部使用したベンロマック。

今回テイスティングするのは、ベンロマック2010-2022, 11Y. 46% CONTRASTS: CARA GOLD MALT。

2022年から名前が付いた年間限定リリース「コントラスト」シリーズからの1本です。

ファーストフィルバーボンバレルで熟成された原酒のみを使用した11年熟成ものですが、このボトルの特徴は、原料である麦芽の一部に大手精麦メーカーであるクリスプ社のビール用クリスタルモルト「CARA GOLD MALT」を使用していることです。

この麦芽を使ってビールを作るとフルーティーかつトフィーを思わせる甘い香味が生まれるそうです。

『もう令和だし、ビアカスクフィニッシュとかビール酵母使用とかじゃなくて、特別なビール用麦芽で仕込んだウイスキーを発売するぜ?』

という、カッコいいシングルモルトってことですね。さすがベンロマックです。

ただ、同じくビール用クリスタルモルトである「チョコレートモルト」を原料の一部に使用した「シグネット」というシングルモルトをだいぶ前から作っている「ビル・ラムズデン博士」という人が「グレンモーレンジ蒸留所」というところで長年に渡り所長をやってたりするのですが、これはベンロマックとは関係なく、そしてたぶん細かいことなので、この際気にしないことにします。

ここで簡単にビール(エール)の製造における麦芽の役割と種類を説明します。

ビール製造で原料となる麦芽は、役割において大きく2種類に分けられます。
一つは80℃前後の低温で焙燥され、酵素源の役割を持つ「ベースモルト」、もう一つは100℃以上の高温で焙燥することで糖をカラメル化しビールに特徴的な色味や風味を付ける目的で使われる「クリスタルモルト(またはカラメルモルト)」です。ベースモルトは糖の分解に必要な酵素活性を保っていますが、クリスタルモルトは高温で焙燥されているため酵素活性がなく、また焙燥具合によって色味や風味が様々に分けられるという特徴があります。

クリスプ社のCARA GOLD MALTは同社のクリスタルモルトの中ではもっとも色味が薄いものです。

ベンロマックで通常使用されているライトリーピーテッド麦芽との比率は公開されていないようです。ただ役割的に考えて、多くても20%程度までだと予想しています。


テイスティングノート

香り:

穏やかな香り立ち。ローストした麦芽の香りが先行、そこからバニラと弱いオレンジ、ローストナッツとピート、焦がしバター、ほんのりザラメ。

味わい:

度数より僅かに優しい口当たり。飲むと焦げ感のある麦芽の香ばしさが強くなり、そこにピート、キャラメル、ナッツ、オレンジマーマレード、ボディはやや軽いが、喉越しが非常に良い。

余韻:

余韻は比較的短め。ローストした麦芽の香味とナッツとピートを引き継ぐ。


総評

香ばしい麦芽の風味が面白い。香味は全体的に軽く仕上げられている。

ホップは入っていませんが、クラフトビールを飲んだ時のような香ばしい麦芽感が特徴的です。

度数は46%と高めに加水調整されていますが予想よりも口当たりは優しく、口に含んでから余韻に至るまでの喉越しが良いです。余韻は短めで、言い換えればキレの良い余韻ということになります。

香り、喉越し、キレ…なんだかビールの売り文句のような言葉が並びますが、香味全体のプロポーションはそんな感じです。その意味で原料のカラゴールドモルトが香りと味わいにしっかり効いていることになるだろうと思います。

香ばしい麦芽感を主体として杯を重ねるのに向く軽やかな仕上がりですが、フルーティーさやピーティーさなどの香味はオフィシャルスタンダードのベンロマック10年と比べて穏やかです。香味の多彩さや厚さよりも飲み心地を重視した香味構成と言えるかも知れません。

ベンロマックはオフィシャルスタンダードの香味バランスが非常に優秀なため、ライト寄りなこのボトルの香味も決して悪くはないのですが、どちらかというと限定ボトルらしい実験的で変化球なモルトかなと思いました。

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