価格帯(price range)

価格帯はフルボトル1本の価格をざっくりと示す指標です。

どの辺りで区分けするかはかなり悩み、正直なところ今もまだ悩んでいるのですが、とりあえずは以下のように分けています。


★で10000円、☆で5000円を意味します。


  1. ☆    (〜 5000JPY)
  2. ★    (〜10000JPY)
  3. ★★   (〜20000JPY)
  4. ★★★  (〜30000JPY)
  5. ★★★★ (〜40000JPY)
  6. ★★★★★(〜50000JPY)
  7. E    (高い)
  8. VE   (超高い)
  9. NR   (評価なし)

ウイスキーの価格推移

ウイスキーの小売価格は、私が本格的にボトルを集め始めた2010年頃から見ても年々増加しています。

理由はいくつか考えられますが、大きいものでは一つが需要の増大、二つ目がそれに基づく原酒不足を背景にした生産者による高価格なプレミアムボトルの増加、三つ目が投資を目的とした資本の流入であると考えています。

ウイスキー全体の流通量から考えると、当ブログで示した基準の☆から★★までで、酒販店で普通に売られているウイスキーのほとんどを網羅するだろうと思います。

しかし、このブログではバーで飲むプレミアムボトルや入手困難なオールドボトルの他、流通量が少なかったり入手方法がややマニアックなボトルも紹介していくため、価格帯の指標は高価格帯をかなり大きく取っています。


ウイスキーとボトル価格にはどんな関係があるのか、ざっくりと説明します

• ☆(〜5000円)

普及品のブレンデッドウイスキーから、大規模蒸溜所のシングルモルトのエントリーボトルまでが含まれる価格帯を想定しています。

この価格帯でウイスキーの製造販売ができるのは、ある程度の資本力を持つ大手企業や生産量の豊富な大規模蒸溜所に限られます。そのため、ボトルの種類も比較的限られます。

中には味わいを犠牲にして安さだけを追求したようなボトルも見受けられないわけではありませんが、高い資本力を背景にした大量生産と技術力の蓄積により、低価格と安定した品質とを両立した「洗練された普及品」と呼ぶに相応しいボトルもきちんと存在します。

つまり各社の商品開発に力の注がれる価格帯であり、各社とも厳しい予算制約の中で試行錯誤しながら様々な個性を打ち出そうとしています。

また、どのボトルも流通量が非常に多く、入手が容易であることも特徴です。


(〜10000円)

メジャーどころからマイナーどころまで、シングルモルトを生産するほとんどの蒸溜所のオフィシャルスタンダードのエントリーボトル、大手ボトラーズブランドのエントリーシリーズや熟成年数の短い一部のシングルカスクが含まれる価格帯を想定しています。

この価格帯から、選べるボトルの種類がかなり増えます。流通量も比較的豊富で、入手も難しくないボトルがほとんどです。熟成年数の短いシングルカスクの中には、今後のトレンドを先取ったボトルが掘り出し物として見つかったりすることもあります。

飲み始めたばかりの人でウイスキーの深みを知るきっかけがほしいなら、最初の一本は少し頑張ってこの価格帯から選んでみることをオススメします。様々なボトルを飲んだ後に再び帰ってくるような、いわゆる「自分の基準となるボトル」が見つかるかも知れません。


  • ★☆(〜15000円)
  • ★★(〜20000円)

オフィシャルスタンダード品の中でも熟成年数が長く年間生産量の限られたボトルや、ボトラーズブランドのシングルカスクのコアレンジを想定した価格帯です。

ウイスキーの面白さを知った人にとっても、多くのウイスキーマニアにとっても、もっともお世話になる価格帯でしょう。

ボトラーズブランドのコアレンジが入ることで、選べるボトルの種類が驚異的に増えます。ほとんど無限大です。

また、蒸留所や地域の個性、樽の個性、蒸留年(ヴィンテージ)毎の個性の違いにフォーカスしたボトルが多く、そうした個性の違いを楽しみたいなら、このあたりの価格帯のボトルを色々飲んでみることをオススメします。ウイスキーの香味の多彩さを存分に楽しむことができて、ボトル選びも楽しい価格帯だと言えます。

ただし数が多いだけあって各ボトル間の味わいの差も大きく、どこよりも玉石混淆というか混沌としているのもこの価格帯の特徴です。そこも含めて楽しめるようになると、以前より深みにハマったなと自覚してもらって結構です。自分の好みに合わせて、トレジャーハントしてみてください。

シングルモルトの品揃えが充実しているバーに足を運ぶと、この価格帯のウイスキーに数多く出会えると思います。バーや専門店でも主力となるボトルが多いからです。


• ★★★(〜30000円)

★★★★(〜40000円)

オフィシャルスタンダードの長期熟成品や限定生産のプレミアム品の他、ボトラーズブランドの気合の入ったリリースなどが該当します。主に国内外の専門店などで入手します。

流通量の限られた特別なお酒ばかりなので、飲み手としての経験値を高める意味でも、一度はウイスキー専門のバーなどでじっくりと味わってほしいボトルが揃います。

ただ、個人で購入する場合はコストパフォーマンスについて真剣に考える必要が出てくる価格帯です。とはいえ、様々なボトルとの出会いを経て、「これこそ自分の求める味わいのボトルである」と確信した場合には「出会った時が買い時」であることが多いのも、この価格帯のボトルの非常に悩ましい特徴でもあります。

ただ、このあたりのボトルを求めるようになった人は気がついているはずです。

「これこそ自分の求める味わいだ」という確信は新しい始まりに過ぎないということに。

ここはただの中間地点なのです。


★★★★★(〜50000円)

オフィシャルボトルの中でもシングルカスクリリースのような特別な限定品や、ボトラーズブランドの上級品に、この価格帯のボトルが散見されます。

価格が価格だけにバーで売るにしても一杯の価格が高額で、売り切ることが難しくなるため、シングルモルトを専門で取り扱うようなバーでもボトルを置いてあるところとないところが出てくるようになります。

この価格帯のウイスキーを積極的に飲んでみたいと思っている人は、もはや完全にウイスキーマニアです。そして、ここまできてしまった人は自分の好みや求める味わいをかなり正確に理解しているため、そういう人が「好みにドンピシャ!」というボトルに出会える可能性が高まるのが、まさにこの価格帯でもあります。

そして言うまでもないことですが、美味しくなかったり好みでなかったりすることは最早許されない価格帯です。そのため、もし入手したいと思った場合は、冷静と情熱の狭間で心が振り回されるような選択と決断を幾度となく迫られることになる価格帯であると言えます。自分の経験や信頼できそうな情報を信じて購入に踏み切ったマニアの様相は悲喜交々(ひきこもごも)で、ものすごく面白いです。

出来ることなら飲んで味わいを確かめてから手元に置きたい…。しかしどのバーでも飲めるようなボトルではない…。こうしてウイスキーマニアはバーを巡り、マニア同士のつながりと情報網をますます強固にしていきます。

この価格帯のボトルは、バーよりもそういう個人が所蔵している場合のほうが多いかも知れません。


• E

Expensive(高い)のEです。次のVE(超高い)と合わせて、ここからは「いくらならE(高い)、いくらならVE(超高い)」という定量的な概念がなくなります。

とりあえず、オフィシャル、ボトラーズを問わず生産本数や入荷本数僅少の超限定記念ボトルの他、人気の高い閉鎖蒸溜所のボトル、味わいの評価が確定しているオールドボトルの優良品などが該当します。

こうしたボトルを実際に飲んでみたい、または手に入れたいと思った場合、価格にプレミアムが上乗せされていることなどは瑣末な問題で、どこでなら飲めるか、どうすれば入手できるかが最大の関心事になってきます。価格から定量の概念が消失しているため、コストパフォーマンスという概念も存在しないか、各自の心が決めます。

金銭面以外の受難も多く、ニューリリースのボトルでは同じものを抜栓している個人などまず見つからないばかりか、高額過ぎて取り扱っているバーもほとんどないため、味わいを確かめられないまま購入せざるを得ないケースが頻発します。オールドボトルともなると、保管状態の良し悪しでボトル毎の味わいが変化するリスクの他、偽物を掴まされるリスクも常に付きまといます。

このように、目に見えるものから見えないものまで大小様々な何らかの犠牲を、お金と一緒に支払わなくてはならない…それがこの価格帯のボトルの特徴です。

しかし、ハッキリ言ってしまうと、この価格帯のボトルはどれを飲んでも物凄く美味しいです。もっと正確に言うと、美味しくないという可能性については誰も考えないようにしています。

僕は見たこともありませんし覚えてもいないのですが、語り継がれている話を伝え聞いたところによると、美味しくないボトルに当たってしまった人は、何故かみんな同じくらい高額の別のボトルを即座に購入してチャラにしようとするそうです。面白い話だなと思いました。

なお、チャラにはならないそうです。


• VE

Very Expensive(超高い)なのでVEです。

上記までの諸々を、あらゆる面で乗り越えた方々がお買い上げになります。

とはいえ、以前は少なかったこの価格帯のボトルも、ウイスキーブームの高まりによって目にする機会が増えてきました。そして実際よく売れているようです。

今でも限られた飲み手やコレクターのためのボトルであることに変わりはありませんが、この価格帯のボトルを1本くらい持っているマニアやコレクターは、昔より増えている印象があります。


• NR(Not Rated)

バーで飲むことが出来たオールドボトルなどで、現時点での購入があまりにも現実的でなかったり、価格評価が不能なほど稀少なボトル、または購入時と記事掲載時での価格の乖離が余りにも激しいボトルなどについては、価格の評価を行いません。


※2018年4月1日改定:Common(〜5000JPY)の表記を撤廃し、代わりにStandardを〜10000JPYから〜5000JPYへ表記変更しました。それに伴い、¥以降を下限表記から上限表記に変更しました。(10000JPY〜となっていたものを、〜10000JPYのように変えました)
※2018年4月6日改定:★を〜10000円として☆をその半分の5000円を表す表記にしました。