スコッチでは決して作り得ない香味とそのバランス。確かなセンスと、静かな野心を感じさせる。
Ichiro’s Malt & Grain Japanese Blended Whisky Limited Edition 48%
評価:★ ★ ★ ★ Recommend!
CP:NR
価格:VE
香り:
しっかりとした香り立ちで、甘く複雑。そこにスコッチにはない独特の香りが重なる。例えるなら仁丹。ジャパニーズウイスキーだけが持つ、しっかりとした香木系のウッディネス。独特の甘さがあり、干し柿、熟れたバナナ。少し遅れて土っぽいシェリー香。そこからドライフルーツミックス、その中のレーズン。かなり多彩で絶妙なバランス。
味わい:
滑らかな口当たりで度数を感じさせない。清涼感があり、僅かにミントのニュアンス、しっかりとしているが不思議と嫌味のないウッディネス由来の甘さ、黒蜜とバニラ、シリアル。ボディは中程度で、程なく余韻へと移行する。
余韻:
熟れたバナナ、ミントの清涼感、仁丹、干し柿、やや粘性のある口残り。
世界的なウイスキーコンペティションであるワールドウイスキーアワード2018(World Whiskies Awards 2018、以下WWA2018)のブレンデッド・リミテッド・リリース部門において、最高賞(ワールドベスト)を見事獲得した、イチローズモルトのブレンデッドウイスキーです。
高額ボトルであり、かつ限定商品であったため、買うことはおろか飲むことすら出来ないだろうと思っていたところ、馴染みのバーで開いていたのは僥倖としか言いようがありません。
このボトルは先日、池袋にあるジェイズバーさんでいただいたものです。
味わいは、間違いなくジャパニーズウイスキーと言わしめるに足る香味をしています。というより、スコッチのブレンデッドでは絶対に出ない香味でしょう。
川崎グレーン、もしくは羽生原酒を思わせる独特の木香。そこに熟成感のあるシェリー感が合わさり、非常に奥行きのある香味を纏っています。
WWA2018は先入観を取り除くために銘柄を伏せたブラインドで評価を決めるコンペティションですが、審査員全員がおそらくイチローズモルト、特に羽生、川崎だと確信しながらテイスティングしたのではないかとすら思えます。
しかし、最高賞に選ばれるに足る類稀なバランス、そして主張のある香味をしていると思います。
なにより、このボトルは美味しく、個人的にはWWA2018の受賞を抜きにしても、ウイスキーとしての完成度が非常に高いと思います。
ジャパニーズウイスキーといっても、このボトルの香味は山崎のそれではなく、余市のそれでも宮城峡のそれでもありません。しかし、仮にジャパニーズでしか体現できない香味があるとすれば、もしかしたらこういうことなのかも知れません。
原酒構成やブレンド比率は分かりませんが、センスの良いブレンデッドという言葉では収まらない、肥土伊知郎氏自身の、使用した原酒の個性への造詣の深さと、ウイスキー作りに対する静かな野心を感じさせる、興味深く、味わい深いブレンデッドウイスキーだと思いました。
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