ライオンズバット 44.3%

カオス。この心地良い衝撃。生涯2度と出会わないタイプのウイスキー

LION’S VAT 44.3%


評価:★★★★ Recommend!

CP:NR

価格:NR


ボトル紹介

高級イタリアンボトラーがリリースした超ド級チャリティーボトル

イタリアのウイスキーボトラー兼リテイラーであるライオンズウイスキー(http://www.lionswhisky.com)から2018年にリリースされたブレンデッドウイスキーです。糖尿病の子供達の支援団体に寄付するために販売されたチャリティーボトルとなっています。

しかし驚くべきはその中身。

サマロリーブーケや1967年ラフロイグなど、1937年〜1989年ヴィンテージまでの超絶レア&高級なウイスキーサンプルが、2006年から2013年まで注がれ続けた樽(サイズ、種別不明)を、さらに2018年まで5年間熟成させ、そこから40本だけハンドボトリングされたウイスキーが、これなんだそうです。

ラベルには使用されている原酒の来歴が全て書かれていますが、60年代やそれ以前のマッカランも贅沢に入ってますし、軽井沢も入ってますね。そしてイタリアだけにサマローリやセスタンテ(ともに一時代を築いたイタリアの有名ボトラー)も多いですね!イタリアがウイスキー界隈で最強だった時代全部盛りといった風情です。

というわけで、スペック的にはシングルカスクのブレンデッドウイスキーと言っていいのかも知れませんが、なんていうか、そんなことがどうでも良くなるくらい、何もかもがもうよく分からないですよね。完全に神々の道楽となっています。

今回、あろうことかウイスキー愛好家の方からサンプルをいただいてしまったので、しっかりとテイスティングさせていただきたいと思います。


テイスティング

荒れ狂う香味の嵐の中に、その未知の中に、身を預ける

これは非常に特別な、というか例外的なウイスキーで、おそらく二度と出会うことはないと思えた、数少ないウイスキーのうちのひとつです。

ブレンデッドウイスキーだということを抜きにしても、樽種や樽構成、熟成年数、ヴィンテージといったものと香味を結び付ける、いわゆる既存のテイスティングの完全に外にあるウイスキーだと思います。

僕がこのウイスキーを飲んで直感したのは、「あ、これは香味分解しながら飲んじゃいけないやつだ。考えるのやめなきゃ。」でした。

自分自身がウイスキーを理解してやろうとか、香味を分析してやろうとかすると、きっとただ混乱するだけで、そのまま飲み干して終わることになるのではないかと思ったということです。

頭を使おうとすると「え、何だこれ?知らない。美味いかもだけど、何これ?え?待て、美味いでいいのか?」とか、絶対そうなるので、ここはブルース・リーが映画で言った有名なあの言葉を思い出してください。そう…

Don’t think, feel.

正しい意味で、まさにこれ。

理性や分析を突き抜けた先にあるウイスキーなので、考えない。左脳は使わない。使うならせめて右脳。

僕の今までの体験をベースに語れるのはここまでで、後は未知の嵐の中を突き進むことになります。

香味のインプロヴァイゼーションです。香味構成に一定の方向性はなく、各々の香味が好き勝手に暴れ回るように見えるので考えれば考えるほどに混乱してしまいます。なので吹き荒れる香味の嵐の中に、よく分からない複雑さと渾然一体感に、その身を委ねてしまいましょう。

その香味は調和とは対極にあるにも関わらず、しかしなお調和に辿り着くのです。ブレンドされているという物理的な事実がそうさせるのか、5年寝かせた樽でのマリーイングがつなぎとめたのかは分かりません。いずれにせよ、これは唯一無二のウイスキーだと思います。

ただしボンヤリしていると、注ぎたてから開いている香味は、徐々に落ち着いてきてしまいます。

下手すると「美味しいかも知れないけど、なんかよくわからない…」となってしまうかも知れません。二度目がないウイスキーなので、それだと非常に勿体ないです。

とにかく、もし飲む機会があれば飲んでみてください。よく分からなかったけど、とにかく凄かったっていうタイプの感動を、体験してほしいです。飲む機会なんてほとんどなさそうなこのボトルにRecommendを付けた理由は、この一点に尽きます。

そして評価が高い理由も、まさにこの一点に尽きます。考えて飲んでしまったら、もう少し評価が低くなっちゃうかも知れません。だって考えてしまったらよくわかりませんもの。悪く言えば香味、はちゃめちゃですから。場合によってはボンヤリと雑まであります。そして香味の好き嫌いも出てくるでしょうし。

しかしこのタイプのウイスキーでこのレベルにまで到達しているボトルは僕の知る限りなく、その意味で完全に唯一無二で、だからこそ「正当に贔屓」してこの評価となりました。

混ぜる前のサンプルを個別に飲んだほうが…というような、ありきたりで理性的な考えの先にはない真っ当な狂気を本当に実現させたこと、それがこのウイスキー最大の魅力かも知れません。


テイスティングノート

香り:

立ち昇るように開き、徐々に繊細に。甘く複雑で渾然一体としており、一言で言い表すことができない。少し遠くから感じていくと、ザラメ、カラメル、完熟アプリコット、カラメリゼしたアーモンド。チョコレート、ココア、革製品、ぐっと近づくと奥からアーシーな内陸ピート。他にもある。

味わい:

古酒感と熟成感と香りで感じられた様々な原酒の個性がないまぜとなったまま炸裂する。香味に一定の方向性はなく、互いに別々の方向に飛び出そうとしているのだが、「原酒が混ぜられている」という物理的な真実だけがこのウイスキーの持つ香味の全てを分け難く結び付けている。カオス。カオスだが、非常に心地よい。香味と香味との間を飛び交いながら、香味に頭を何度も殴られながらも、身を委ねるべき。ボディは厚い。

余韻:

カラメル、古酒感、焦げ、アーシー、ザラメ、ミルク、チョコレート、スパイス、レーズン、ドライフルーツ、その他たくさん。余韻の長さは中程度。混乱した頭を落ち着かせたいなら、水を飲むなり、煙草を吸うなりしてはどうだろうか。