アラン オークニーベア 2004 – 2012, 8年 46% ファーストボトル

旨味も雑味も凝縮された力強い麦芽の香味が身上の、実験的なボトル。

ARRAN ORKNEY BERE 2004-2012, 8Y. 46% OB

5800 bottles.


評価:★ ★ ☆

CP:☆ ☆ ☆

価格:★(当時)


ボトル紹介

目次

古代麦芽を使用したアランの意欲作

2012年と2014年の2回だけリリースされたアランの限定ボトル、オークニーベア。今回はそのうち2012年にリリースされたボトルで、2004年蒸留の8年熟成、加水ボトルです。

原料に通常の二条大麦ではなく、スコットランドのオークニー諸島で古くから栽培されていたベア種(六条大麦の一種)を使っていることが特徴です。ベア種を使った仕込みと蒸留は2004年に2週間だけ試験的に行われ、オークニーベアはどちらのボトルもこの時に蒸留された原酒を使っています。

このボトルに関する2012年当時の記事としては、情報が早いことで知られるブログ「あるじの小言」の記事がおそらく一番端的で分かりやすいです。

ちなみに2014年にリリースされたアランのオークニーベアは熟成が10年に伸び、加水ではなくカスクストレングスでリリースされました。

こちらのテイスティングノートとしては「くりりんのウイスキー置き場」の記事が非常にまとまっていて、歴史や製法についても言及していて、一読の価値があると思います。

なお、ベア種を使用したシングルモルト自体はアランが初めてというわけではなく、以前にはフランスのボトラーであるミシェルクーヴレーから「シングル・シングル・ベアバーレイ」というボトルがリリースされています(1986年蒸留の14年熟成、蒸留所は不明)。また、ブルックラディ蒸留所も2006年頃からベア種を使った仕込みと蒸留を行なっていて、ブルックラディ・ベアバーレイとしてヴィンテージ付きのボトルを数種類リリースしたほか、2017年にリリースされたスプリングバンク・ローカルバーレイ11年も仕込みにベア種の大麦が使われています。


テイスティング

良し悪し含め、ガツンとした麦芽の香味が前面に出る

このボトルの味わいの基軸は力強い麦芽の香味です。荒々しくもクリーミーかつ濃厚で、強い主張があります。

この麦芽の厚みがおそらくベア種という麦芽品種の味わいなのでしょう。加水ボトルですが、それをはねのけるような旨味と雑味が凝縮した味わいがあります。

樽由来の香味は「バーボンバレルで8年熟成させた」と裏ラベルに書いてある通り、バニラ、オレンジ、シトラスといったものです。

それ以外に香味には発酵した干し藁や畳の材料である井草を思わせるようなグラッシーさがあり、この部分は荒々しさに繋がるネガティブな要素だと感じます。しかし同時に太い麦芽感の要素の一つであり、熟成期間の短さによる原酒の若さであるとも思われるので、このまま熟成を長くして雑味が取れたなら…とも思わせてくれます。

このような奥深い麦芽香が、このボトルの身上でしょう。

味わい全体として見れば、香味が多彩なわけではなく、熟成感も年数相当で粗さが残ります。「美味しすぎちゃって全力でオススメ!」とかいう感じではないです。しかし雑味の部分を無視して麦芽の甘みと奥深さにフォーカスすれば、意味のある楽しみ方ができるボトルだというのが、個人的な印象です。

「アラン蒸留所のシングルモルトが気になるけど、まだ飲んだことがない」ということであれば、ここ数年で現行オフィシャルのスタンダードであるアラン10の品質が非常に安定しているので、まずそちらから飲むほうがいいでしょう。


テイスティングノート

香り:

ややしっかりとした香り立ち。バーボンカスクを思わせるバニラ。うっすらとオレンジ、シトラス。ややすえたような井草の香りと、やや汗の香り。スワリングすると洋梨、クリーミーな麦芽香が現れる。仄かに潮のニュアンス。

味わい:

口当たりは度数よりも僅かに強い印象。麦芽の甘みがしっかりと感じられる。ややドライで、極僅かにオイリー。穏やかで乾いた印象のあるウッディネス。ボディはしっかりとしている。

余韻:

余韻は比較的長く、樽由来の収斂と、心地良いドライさとスパイシーさが持続する。スパイスは生姜、少し唐辛子。仄かな潮のニュアンスが再度現れる。

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