(前編)この感動を伝えたい。ウイスキートーク福岡2019「鹿児島ウイスキー維新」の内容が、新時代の幕開けを感じさせるくらい素晴らし過ぎた。

先日開催された「ウイスキートーク福岡2019」、今年は遂に初参加が叶いました!

そこで行われた有料セミナー「鹿児島ウイスキー維新」の内容が熱量溢れる素晴らしすぎるものだったので、今回は覚えている全ての内容をお伝えしたいと思います。

かなりのボリュームなので前後編に分かれています。

後編:(後編)この感動を伝えたい。ウイスキートーク福岡2019「鹿児島ウイスキー維新」の内容が、新時代の幕開けを感じさせるくらい素晴らし過ぎた。


鹿児島ウイスキー維新

鹿児島にある二つのウイスキー蒸留所、津貫と嘉之助。

津貫蒸留所からは草野辰朗氏(左)、嘉之助蒸留所からは小正芳嗣氏(中央)が、それぞれの蒸留所のニューポット(出来たての原酒)とニューボーン(熟成3年未満の原酒)を持参し、試飲と解説を交えながら今後の展望を語り合うという内容で進んでいきました。

進行役は日本語版「WHISKY RISING」の訳者の一人であり、中央区薬院にある「バー・ライカード」のオーナーバーテンダーである住吉祐一郎氏(右)が務めました。


挨拶

小正氏:鹿児島自身、焼酎造りで蒸留酒造りの歴史とアイデンティティがあり、蒸留酒を飲む文化は根付いていると言える。小正酒造は日本で初めての樽熟成焼酎「メローコヅル」を作って60年、焼酎造りの技術と伝統をジャパニーズウイスキーの新しい幕開けへと繋げていきたい。

草野氏:鹿児島でウイスキーを作ることの意味ということなんですけど僕は大分出身でお酒にはまって…最初は信州でウイスキー、津貫は本坊酒造発祥の地。津貫蒸留所の話が出た時はどんなのが出来るのかわからない、でも絶対にやりたいという思いで手を挙げて、一からやらせてもらっている。「暖かい地域で美味しいウイスキーが出来るのか」ということはたくさんの人に言われる。シングルモルトの本場であるスコットランドは冷涼で肌寒いですから。対して鹿児島で何が出来るのかはまだ模索中。でも結構美味しいものができて来ていると感じる。ふわっとした思いが確信に変わりつつあり、色々な実験も行なっている。今回も少し変わったニューポットを持ってきた。


ニューポットの紹介

どちらの蒸留所からもニューポット(作り立ての原酒)が2種類ずつ、ニューボーン(熟成3年未満の原酒)が2種類ずつの、計8つの原酒が用意されました。

上段が津貫、下段が嘉之助のもので、それぞれ左からニューポット1、2、ニューボーン1、2となっています。

前編では、最初の挨拶から両蒸留所のニューポット4種までについて、セミナーでの紹介順でお伝えしたいと思います。


津貫:ニューポット1

原料にチョコレートモルトを約10%使用、ノンピート

画像はイメージです。

トップバッターは津貫蒸留所の「ニューポット1」から。

原料の一部にチョコレートモルトを使用したニューポットです。

チョコレートモルトは、熱で焦げ茶や黒になるまでローストした麦芽のことです。味ではなく色がチョコレートで、味は強焙煎なので甘いどころかむしろ苦いです。主に黒ビールの醸造(ギネスなど)に原料の一部として使われます。

シングルモルトの原料は麦芽のみなので、バーボンでいうマッシュビル(原料穀物の比率を示したレシピ)のようなものは基本的にありません。そこで今回ノンピートのスコットランド産麦芽に約10%分だけチョコレートモルトを混ぜて蒸留してみて、出来たものを持ってきてくれました。

チョコレートモルトを原料の一部に使用しているシングルモルトとしては既にグレンモーレンジの高級品「シグネット」があります。草野さん曰く「どうなるか知りたくてちょっと真似してやってみました(笑)」とのこと。(麦芽の品種は聞き忘れました。)

チョコレートモルトを使っているとはいっても、蒸留してできたニューポットはビールのように黒くはならず、もちろん無色透明です。

すぐに分かるのは酸味が香りでも味わいでも強いこと。しっかりとした乳酸発酵を感じさせるものになっています。

これは使用したチョコレートモルトにより発酵時の乳酸菌が増えた結果だそうです。続けて、「この成分は熟成でフルーティーな成分になる。すごい良い酸味だなと。」と草野氏。

酒質も雑味が少なく綺麗に作られていました。

このニューポットには草野氏自身かなりの手応えを感じているそうで、「楽しみにしていてください」とも話されていました。

セミナーの掴みとしてもバッチリです。


嘉之助:ニューポット1

アーム下向きの再留釜、ノンピート

2つ目は嘉之助蒸留所の「ニューポット1」。

「嘉之助ニューポット2と交互に香りと味わいを楽しんでください」ということで、1と2は続けて紹介されました。まずはニューポット1を紹介します。

嘉之助蒸留所にはポットスチルが3基あります(初留1基、再留2基)。これにより「蒸留器を使い分けて、酒質や味わいの異なる豊富な原酒を柔軟に作り分けられること」は、嘉之助蒸留所の特徴であると共に、大きな強みでもあります。

この嘉之助ニューポット1は、2回目の蒸留時にストレードヘッド、ラインアーム下向きのポットスチル(写真中央)を使用したものです。

蒸留されたウイスキーの酒質に影響を与える要素は沢山ありますが、ポットスチルの形状もその一つです。ストレートヘッド、ラインアーム下向きのポットスチルで蒸留した原酒は香味成分の還流が少なく、酒質が重く、どっしりとした原酒になる傾向があります。

まさしく麦芽由来の穀物感、やや重い酒質、もしかしたらやや硫黄成分が残っているのでは…と感じるくらい、ニューポットの段階でも酒質の重さは明らかでした。

次のニューポット2がランタンヘッド、ラインアーム上向きのポットスチルを使用して再留した非常に軽やかな酒質の原酒だったため、ここまで違いが出ることに正直驚きました。

正直に告白すると、この段階では雑味が多いとも感じられたため、個人的にあまり好みのタイプではないと思ってしまったのですが、この原酒には続きがありました。

詳しくは後編で述べたいと思っていますが、原酒作りの奥深さ、熟成の神秘を垣間見た感じがして非常に印象に残っている原酒です。


嘉之助:ニューポット2

ランタンヘッド、アーム上向き100°のスチルで再留。ノンピート

うってかわってこちらはランタンヘッド、ラインアーム上向きのポットスチル(右)で再留したニューポットです。ラインアームの角度は100°だそうです。

写真では少し見づらいですが、ポットスチルの首にあたる部分の根元がくびれていて、こうした形状をランタンヘッドと呼びます。ラインアームが上向きなこともランタンヘッドであることも、原酒の酒質を軽くする傾向があります。

これらの構造は蒸留中にポットスチルの中で還流を盛んにする作用があります。スチルの中で還流が盛んになると、重い香味成分はなかなかスチルの上部に辿り着けず、結果的に蒸留されづらくなるので、酒質は軽いものになります。

香りは嘉之助ニューポット1と比べて明らかに軽く、味わいも非常にスッキリとしています。優しく華やかなニューポットです。

小正氏:「焼酎の話になりますが、明治16年(1883年)から焼酎をつくりつづけてきた小正酒造は、全てが異なるといってもいいくらい様々な蒸留器を持っています。今は使っていないものも含めると、横向きのものや、完全木製のものなど、ウイスキーにはないものもあります。それと同じようなノウハウを用い、原料特性を様々に引き出すためにポットスチルの種類を増やしているのが嘉之助蒸留所です。この2つを飲み比べていただくことで、そこを感じていただければと。」

草野氏:「僕これ好きです。美味しいですね。僕ならこれは絶対リフィルホグスヘッドで熟成します(笑)」


津貫:ニューポット2

三番麦汁で仕込んだ50ppmヘビーピート原酒

ニューポットの最後を飾るのは津貫蒸留所のニューポット2、50ppmのヘビーピーッテッド原酒です。

前日の三番麦汁で翌日の1回目を仕込む方法で仕上げられたもので、なぜならピーッテッド麦芽を仕込んだ際に出る三番麦汁はそれ自体が非常にピーティーだからだそうです。

当日に化学の話なんて出ませんでしたが、もしかしたら気になる人もいるかも知れないのでちょっとだけ解説すると、フェノール化合物の多くは基本的に水に溶けない疎水性化合物ですが混合液中では水と相互溶解を起こしていて、混合液の温度を上げるとそれが更に強く起こるので、温度の高い三番麦汁にもピート由来のフェノール化合物が残ります。こういうのは「フェノール 相互溶解」とかでググって各自お勉強で。

このピーテッド原酒を語る際に草野氏が使っていた言葉は「綺麗目」と「汚(きたな)目」。この原酒は短期熟成でも仕上がるようにピシッと雑味なく作ったものだそうです。つまり「綺麗目」。

しっかりピーティーですが、酸もしっかりと立ち、少し粘土っぽい香りもある原酒でした。

ここまで飲み進めてくると、セミナー参加者のほうも草野氏の言葉の意味が自ずと分かるようになってしまっていて、この原酒には必要なだけの僅かな重さはあるものの、余計な雑味を極力省くことを念頭に置きながら蒸留された印象でした。

ちなみに草野氏の言う「汚目」なピーテッド原酒についてですが、50ppmの超ヘビーな汚目原酒は一年の締めくくりとして冬場に作るのだそうです。そしてものすごく重く、そのまま飲んでも全然美味しくないのだそうです(笑)

そしてそういう原酒は、長熟向きとして作っているとのことでした。


前半は以上です!

後編は3年未満熟成のニューボーンの紹介をしたいと思います。

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