アンノック 12年 40% オフィシャルボトル(ノックデュー)

バッティングピッチャーの投げる129kmのストレート。調子を取り戻したいときにうってつけな「薄味モルトの帝王」

ANCNOC (KNOCKDHU) 12Y. 40% OB


評価:★★☆ Recommend!

CP:☆☆☆☆☆

価格:☆


目次

テイスティングノート

香り:

非常に穏やかな香り立ち。弱いが主体は麦芽の甘さ、しかし隣にフルーツは添えられている。若干若いが溌剌とした麦芽の甘さ、林檎、洋梨、微かにベリー、微かにクッキーの香ばしさ。樽感も主張せず、バニラと蜂蜜を僅かに添える程度。

味わい:

口当たりは度数相当に優しく、麦芽の甘さが少しだけ強くなる。穏やかに樽由来のバニラ、蜂蜜。ボディは軽く、程なく余韻へと移行する。

余韻:

余韻の長さは中程度からやや短い。穏やかな甘さを引き継ぎながら、弱いスパイス感とドライさがじんわりと残る。ほんの僅かにオイリー。


ボトル紹介

黒い丘、ノックデュー蒸留所のオフィシャルスタンダード

ハイランド地方で最も小さいと言われているノックデュー蒸留所(黒い丘という意味)は、地理的には東ハイランド地方に分類される蒸留所で、ブレンデッドウイスキー「ヘイグ」の構成原酒としても知られています。現在はタイに本拠地を置くインターナショナル・ビバレッジ社(旧インバーハウス社)が所有しています。

ノッカンデューやカーデュといった似た名前の蒸留所と混同されやすかったらしく、差別化を図るため1993年からアンノックというブランド名を使用するようになりました。ノックデュー蒸留所はノックヒル(knock Hill)という丘の麓にあるのですが、この丘をゲール語ではアンノック(小さな丘)と呼ぶそうです。


目立たないシングルモルトだが、出来は良い。

アンノックのブランドサイト:https://ancnoc.com

名前も地味、カートンボックスも地味(デザインは好き)、ラベルも地味(これも好き)、国内では特に宣伝もされず知名度もかなり地味と、そもそも知らないか、知っていても飲んだことのない人の多いシングルモルト、それがアンノックです。少なくとも「シングルモルトはアンノック(ノックデュー)から始めました!」って人には会ったことがないです。ボトラーズリリースも多くない蒸留所なので、それも地味さに拍車をかけています。

しかしブランドサイトを見れば分かるように、最近のオフィシャルラインナップは充実していて、熟成年数表記のあるボトルは12年から35年までと幅広く、他に限定ボトル(シングルヴィンテージ含む)も多数リリースされています。

加えて、スタンダードボトルの12年は「洗練された普及品」と呼べる仕上がりです。この言葉は私が同価格帯のボトルに使うほとんど最高の褒め言葉です。


薄味を味方につけた「薄味モルトの帝王」。ハイランドモルトらしい麦芽の甘さと穏やかなフルーツエステルが乗る。

このボトルですが、私個人としてはRecommendです。香味は「穏やか」の一言に尽きますがバランスに優れ、その上、とにかくコスパが良いです。こういうボトルがあることを愛好家以外が知られないのは勿体ない気がしますので、強く推します。

香味自体は一貫して非常に穏やかです。エステリーな華やかさもあるにはありますが、主体はあくまで麦芽の甘さです。それも穏やかな麦芽香です。

穏やかですが、この「麦芽の甘さを主体としつつ、エステリーな華やかさもある」という香味構成はハイランドモルトらしいものであり、グレンリベットやグレンフィデックなどのスペイサイドモルトとは基本的に力点の異なる香味バランスです。

加水40%のためボディも軽いですが、麦芽の味わいは比較的保たれているのも個人的に推しポイントです。

香味構成は熟成年数相当にシンプルですし、熟成感や複雑さもありません。ただ、5000円以下の価格帯で考えるのであれば家飲み用ボトルの選択肢の一つとして考慮していい出来栄えだと思います。

ある飲み手はこのボトルを好意的な意味を込めて「バッティングピッチャーの投げる129kmのストレートみたいなウイスキー」と評しました。このボトルの味わいの例えとして非常に的確だと思います。

自分の調子を取り戻したり、一度リセットしたりするのに最適なウイスキーでしょう。

穏やかな薄味を味方につけた「薄味モルトの帝王」だと思います。


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