ティーリング 1991 – 2015, 23年 60.2% #8592 Whisky Magazine Selection

トロピカルアイリッシュ好きならマストと言って差し支えない出来栄え。

TEELING 1991-2015, 23Y. 60.2%

Whisky Magazine Selection

cask# 8592

bourbon barrel

140 bottles


評価:★★★★

CP:☆☆☆☆☆

価格:★★☆


香り:

しっかりとした香り立ち。芳醇。バーボントロピカルとアイリッシュトロピカルの共演。メロン、桃、パイナップル、金柑、アプリコット、洋梨。そこから少しミント、クローヴの甘いスパイス感、樽由来のバニラ。

味わい:

口当たりは力強いが、実際より幾分度数を低く感じる。トロピカル感を引き継ぎつつ、バニラ、オレンジオイル、ビターなマーマレード、僅かにセメダインといったバーボンバレル由来だと思われる要素が広がる。ボディは中程度。

余韻:

余韻は長く、度数相当にドライ。金柑とアプリコット、バニラ、マーマレードのビターさ、樽由来の収斂。


目次

トロピカル香を求める旅路で見出されたアイリッシュシングルモルト

2013〜2015年頃に大流行したウイスキーと言えば、アイリッシュシングルモルトであるティーリングを外すことは出来ません。

「ティーリング」はTEELING WHISKY Co.のブランド名であり、中身はブッシュミルズです。現在ではアイリッシュシングルモルトにトロピカル香を持つボトルがあるという認識は(少なくともウイスキー愛好家の間では)一般的になってきていますが、そこに至るまでには様々な紆余曲折がありました。


南国果実香(トロピカル香)を求めて

いわゆる「トロピカル」と呼ばれている南国果実香は、ウイスキー愛好家の中では非常に人気のある香味です。

穀物原料であるウイスキーというお酒から出てくるとは思えないような、南国果実を感じさせる盛大で複雑で幸福感のある甘いフルーツ香、それがトロピカル香です。テイスティングノート上ではマンゴー、ライチ、桃、パイナップル、メロンなどと表現されることが多いです。

現在進行形で続いているトロピカル香を求める旅路は、1960年代蒸留のボウモアの香味の再来を求める探索として始まり、多くの愛好家、インポーター、バイヤーを、似た香味を持つボトルを探す旅路へと誘(いざな)いました。

原点かつ至高とされている1960年代蒸留のボウモアの(複雑なだけでなく明確にマンゴーを思わせる)香味を除けば、1976年蒸留トマーティン、1993年蒸留ボウモア、1976年蒸留ベンリアックと、それぞれ少しずつ異なりつつもトロピカルという観点からは共通する香味を持つボトルが続々と発掘されていきました。

そして、スコッチのシングルモルトがそろそろ探し尽くされたと感じられた頃、突如として現れたトロピカル界の新星、それがアイリッシュシングルモルトである1991年蒸留のティーリングでした。

ティーリングの登場は衝撃的で、ティーリング以降「アイリッシュシングルモルト=トロピカル」という図式が完全に認知されるに至っています。また、トロピカル香自体が細分化しつつある現在においても「アイリッシュ系のトロピカル香」のような言葉が意味する香味は、ティーリングの香味です。

その後もトロピカル探求の旅路が継続中なのは前述の通りで、直近では1996年蒸留のベンネヴィスにもトロピカル香があると言われるようになっています。

ただしここまで来てしまうと「共通点はあるかも知れないが、似て非なるにも程がある」という認識が生まれることとなり、こうしてウイスキー愛好家の中に多数の「トロピカル難民」が生まれることになり、現在に至っている…とりあえずそう思っていただければ差し支えないだろうと思います。


トロピカル香への探求がもたらしたもの

私見ですが、トロピカル香への探求がシングルモルト愛好家にもたらしたものは二つあると考えています。

一つは既に説明したようにティーリングのような「アイリッシュシングルモルトの認知度が上昇し、一定の地位を確立した」ということです。アイリッシュトロピカルというような言葉が使われたり、それで話が通じたりするようになりました。これについては上記で説明しました。

そしてもう一つは、「フロアモルティングという製法が再注目されるようになった」ということです。こちらについて以下順を追って説明します。

トロピカルという括りの中で1960年代蒸留のボウモアとは似て非なる味わいのボトルが多数リリースされた結果、60年代ボウモアの香味が何故生まれたのか?を当時の造りにまで遡って考える流れが生まれ、その中で「フロアモルティング」が注目されることになります。

フロアモルティングは大麦を発芽させてウイスキーの原料となる大麦麦芽とするための伝統的な製法ですが、近代的な製法に比べて発芽が不均一であり、アルコール収量などの面では非効率的な手法です。しかしその不均一さが当時のボウモアにある複雑な果実香の要因となっているのではないか?という推測が立てられたからです。

その結果、コアな愛好家の中でウイスキーの味わいに対してフロアモルティングという製法が果たす役割が見直される、もしくは省みられるようになり、フロアモルティング製法で作られたシングルモルトへの注目度が高まることになります(スプリングバンクなど)。


さてこのボトルの味わいですが、一言「トロピカル」でOK!

さて、このボトルの味わいについてです。一言で表現するなら、このボトルには皆が大好きな「トロピカル香」が満載です。

このボトルは一日遅れのセントパトリックデー(ありがち)として自宅で抜栓したボトルです。実のところ当時飲んだきりで、かなり久し振りに飲みました。

そしてかなり久し振りに飲んだ結果、このボトルの味わいは一言「トロピカル」でOKでした。

ここで詳しく言及するつもりはないのですが、このボトルのトロピカル香はアイリッシュトロピカルを基調として、バーボントロピカルがオーバーラップするような香味だと思います。(トロピカルを探す旅路の副産物として、トロピカル香も細分化されつつあります。)

とにかくフルーツ香が盛大かつ複雑です。桃にとどまらずメロンも明確に感じられ、少しケミカル、後はアイリッシュに感じられがちなマーマレードを思わせる苦味のある甘さに加え、バーボンバレル由来のバニラ、オレンジ、少しオイリーな要素と複合したオレンジオイルなど、近年言われがちなトロピカル要素がこれでもか!とばかりに詰め込まれています。

アイリッシュトロピカルが好きな飲み手には、まず間違いなく確実に刺さるでしょう。

度数は高いですがトロピカルなフルーツ香が盛大なため、飲んでいる間は度数の高さをあまり感じさせません。この部分も秀逸だと思います。何杯か飲んで酔いが回ってきた段階で、度数の高さを思い知るとはいえですが(笑)


CPは最高評価の☆☆☆☆☆としていますが、これはこのボトルの当時の流通価格と現在同一ヴィンテージとして発売されているボトルの流通価格とを比較した結果であり、このボトルが既に買えない状況にあっては少しフェアではないかも知れないとは思っています。

しかし、当時購入して所持している個人やバーは多いと思うので、今後も飲むチャンスは比較的多いボトルではないかと思っています。


もし気になるのであれば、持ち寄り会などに私を呼んでください。持っていきます。

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