宿命的に地味な味わいながら、完成度は高い。
MANNOCHMORE 1997-2017 20Y. 52.7% Cadenhead’s Single Cask GOLD.
評価:★★★- ★★★☆
CP:☆☆☆
価格:★☆
香り:
しっかりとした香り立ち。麦芽の甘みが先行し、オイリーで蜜蝋を思わせるニュアンスがある。ワックスをかけたライム、レモン味のキャンディ、砂糖漬けの焼き林檎。ややハーバルで、やや湿ったウッディネス。
味わい:
度数相当のしっかりとした口当たり。ねっとりとしていて麦芽感が強く、濃厚。ややオイリーな印象は持続し、そこにバニラ、砂糖菓子のような甘さを感じる。バタートーストのニュアンスがある。じんわりとした樽由来の収斂があり、それがドライさとなって、そのまま程なく余韻へと移行する。ボディは中程度。
余韻:
ドライでジンジャーのスパイス感。甘さの中に僅かに湿ったウッディネスがあり、若干の苦味が残る。
最古のボトラーの175周年。
世界最古のボトラーであるケイデンヘッドは、2017年に創業175周年を迎えました。
その年に発売された全てのボトルには、タータンチェックがあしらわれた特別製の外箱と、175th Anniversaryと書かれた銅製のタグが付属しています。
このボトルは黒いラベルのケイデンヘッド(通称黒ケイデン。ヴァッテッドのスモールバッチが主ですがシングルカスクもあります)の上位版に当たる、金ラベルのケイデンヘッド(通称金ケイデン。ほぼシングルカスクです)からの一本で、1997年蒸溜のマノックモアです。
日本へ入ってくるのは2018年3月なので、先行テイスティングになりますね。私は海外から購入しました。
地味過ぎる蒸溜所、マノックモア
マノックモアはシングルモルトとしては非常にマイナーだと思います。地味すぎるエピソードには事欠きません。
マイナーなグレンロッシー蒸溜所と同じ敷地内にある第二蒸留所がマノックモアです。共にヘイグやディンプルといったブレンデッドウィスキー用の原酒として主に使われており、そもそもシングルモルトとしてのボトリングは稀です。
グレンロッシーとマノックモアは、原料となる大麦麦芽も仕込み水も同じものを使用しているそうですが、再留釜のラインアームに精留器が取り付けられているかいないかの違いがあるそうです。取り付けられているのがグレンロッシー、いないのがマノックモアです。
また、ブレンデッドウイスキーのトップドレッシングとしてブレンダーから一定の評価を得ているのがグレンロッシー、そういう話を特に聞いたことがないのがマノックモアです。
私がマノックモアに抱いている味わいの印象は『穀物の甘さに若干のハーバルを伴う地味な味わい』という身も蓋もないものですが、このボトルは美味しいと思いました。
地味だけど美味しい。美味しいけど地味。
味わいを要約すると、ハイプルーフな度数で飲み応えもありつつ、ウイスキーの基本的な香味(このボトルでは麦芽香、フルーツエステル香、樽香)をそつなく押さえ、雑味のない味わいです。また、公式のテイスティングノートが自分の感覚に近く、非常に分かりやすいものでした。
もともとの酒質的にも樽での味付け的にも派手さはないため、175周年の金ケイデンボトルだあることに過剰に期待してしまうと、ちょっと肩透かしを食らうかも知れません。しかし味わいの完成度は高いと思います。
バーボンホグスヘッドで熟成されているためか樽感が主張し過ぎず、麦芽の甘みに程よくバニラや林檎の甘みが乗ります。マノックモアのあまり主張しない酒質と、それを押さえつけない穏やかな樽感のバランスが絶妙で、このボトルの魅力だと思います。長めの熟成期間も味わい全体の奥行きや複雑さに寄与していると思います。
地味さはもはや宿命ながら、完成度は高いです。価格的に金ケイデンとしてはかなりお値打ちなのも良いところではないでしょうか。香味が地味過ぎてRecommendは付けていませんが、個人的には好きなボトルです。
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