サマローリ エボリューション2013、49%:伝説的な古酒から近年ボトルまで全部盛り。要素の多彩さを紐解きながら飲むのが楽しい。シェリーの古酒感。

目次

SAMAROLI EVOLUTION 2013, 49%


評価:★★★-★★★☆

CP:☆

価格:★★★★-★★★★☆


ボトル紹介

伝説的な古酒から近年ボトルまで全部盛りな原酒構成は唯一無二。

サマローリ社が定期的にリリースしていたエボリューションシリーズの一つ。2013年Verはリリースとしては初期のボトルにあたります。度数は49%、カスクストレングス、Whisk-e限定なのでリリースはおそらく日本国内のみだと思います。

言ってしまえばマルチヴィンテージのヴァッテッドモルトなのですが、特筆すべきはその中身。表ラベルに書かれている構成原酒を列挙してみましょう。

  • モートラック1957
  • スプリングバンク1959
  • スプリングバンク1962
  • ブルックラディ1964(シェリー)
  • スプリングバンク1965
  • グレンリベット1968(シェリー)

以上6種が各5%ずつ。

  • ラフロイグ1970
  • グレンリベット1971(シェリー)
  • グレンギリー1971(シェリー)
  • ロングロウ 1973
  • ロングロウ1974(シェリー)
  • アードベッグ1974
  • グレンギリー1975
  • アードベッグ1976
  • アードモア1977
  • カリラ1977
  • タリスカー 1978(シェリー)
  • スプリングバンク1979(シェリー)
  • グラングラント1979(シェリー)
  • ハイランドパーク1980
  • マッカラン1980
  • ポートエレン1981
  • モートラック1984
  • スプリングバンク1985(シェリー)
  • グラングラント1985
  • ボウモア1985
  • ロングロウ 1987
  • タリスカー1987
  • ラガヴーリン1988
  • リンクウッド1989(シェリー)
  • グレンバーギ1989
  • ハイランドパーク1990
  • ミルトンダフ1994
  • アベラワー1994
  • ジュラ1997
  • リンクウッド1997

以上30種が各3.5%ずつブレンドされています。

うん、計算が合わないな。

原酒全てが2013年まできっちり熟成されていたわけではないとは思いますが、23蒸溜所の今では考えられないようなヴィンテージの36原酒、そのうち10種がシェリーモルトという贅沢仕様。計算は合いませんが表記通りに単純計算するとシェリー原酒の比率は38%となります。


テイスティング

船頭多くして船山に登る。しかし古酒感に彩られた一つ一つの要素にフォーカスできると面白い。オールドボトル好きには刺さるかも。

このボトルの味わいを一言で言うなら「船頭多くして船山に登る」です。

香味に主軸が定められておらず、たしかに複雑で多彩ではあるものの、全体的にチグハグでまとまりに欠け、様々な要素が溶け合うことなくそこかしこでせめぎ合っている印象です。香味のプロポーションをまるごと味わおうとすると一体何を飲んでいるのかよく分からなくなります。

しかし見方を変えて、そこに存在する一つ一つの香味要素にフォーカスしながら飲むと、面白いボトルになると思います。

特にオールドボトル愛好家の飲み手であれば、このボトルの様々な香味を探すのは楽しいでしょう。ほとんど全ての香味が古酒感を伴う、または古酒感に由来たと思われる印象を備えていると思います。

比較的わかりやすいのはシェリーの古酒感で、現行のシーズニングシェリー樽では出ようがないアモンティリャード古酒すら思わせるオールドシェリー感です。すえた印象をまとった滋味深い内陸ピートはオールドグレンギリーやロングロウやハイランドパーク、あとはオールドボトルのタリスカーを感じずにはいられません。飲んだ後に感じられる滋味深いヨードピートからはオールドアイラ、香りや味わいに弱いながら感じられるベリー感はスプリングバンクかも知れません。やや若さの残る麦芽感や余韻のドライさは90年代蒸留のリンクウッドなどでしょうか。80年代ボウモアのパフューム感は個人的にはわかりませんでした。

自分で書いたテイスティングノートを見ても、とても美味しそうであり、実際のところ同系統のボトルの中では美味しい部類だと思います。

ただ、これだけ素晴らしい原酒を使用しているにも関わらず、全体の香味バランスの中には、何とも言いようがない満足感の欠如というか物足りなさが残ってしまいます。この点は非常に残念だと言わざるを得ません。

「元の酒が超良いんだから混ぜても美味いに決まってるだろ」みたいな、なんていうか、製品としての素人感が出ちゃってるというか…。正しい意味で、ブレンダーという仕事がいかに大変で神経を使う仕事なのかを逆説的に理解できます。

また、「このボトルの楽しみ方は古酒感を伴う多彩な要素一つ一つにフォーカスすること」とは言ったものの、この楽しみ方にはシングルモルトの古酒に対する相応の経験値が必要で、簡単に言うとマニアック過ぎて誰にでもお勧めできるものではないです。それに古酒に対する造詣が深い方々でも「混ぜる前の原酒の個性が探せたから全体のバランスがいまいちでも良し!」とはならないのではないかと思います。


テイスティングノート

香り:

全体的に穏やかだが古酒感を伴う複雑な香り。ただ香味の輪郭はぼんやりとして特徴やまとまりに欠ける。黒糖とカラメル、オールドアイラのヨードピート、シェリー古酒、みたらし、アマレットリキュール、ベリージャム、発酵した干し草など。時間経過での変化も大きく、楽しめる。

味わい:

香味の輪郭はぼんやりしている点は変わりないが、古酒感を伴った様々な香味を探すことができる。オロロソやアモンティリャードシェリー樽の収斂、やや若い麦芽のフェインティは飲むことで若干強調される。やや苦味を伴うウッディネス、すえた印象の古酒の内陸ピート、苺やベリー。ボディは中程度。

余韻:

シェリー古酒、穏やかなドライさと弱い収斂。カラメル。余韻はじんわりと長い。

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