山崎パンチョンよりも豊潤でしっとりとした樽香が秀逸。日本の個人向け樽売りのさきがけ。
YAMAZAKI OC 1991-2005, 53% The Whisky World first publish Anniv.
cask type: bourbon barrel
cask No. 1V70373
評価:★★★ Thank you!
CP:NR
価格:NR
ボトル紹介
ウイスキー不況だった時代が生んだ、山崎のオーナーズカスク制度
こんにちは、ドリンカーズラウンジです。
今回紹介するボトルは、山崎蒸留所のオーナーズカスク、1991年蒸留、2005年ボトリング、バーボンバレルで13-14年熟成のシングルカスクです。
「オーナーズカスク」とは、サントリーが2005年から2010年まで実施していた制度で、同社の山崎蒸溜所と白州蒸溜所に貯蔵されているモルト原酒からブレンダーが吟味したものを、個人や企業に樽で丸ごと販売していたものです。
事前に用意されたリストから購入者が選ぶ方式で、購入前に味わいを確認するための専用テイスティングルームも設けられていたそうです。
気になる当時のお値段ですが、安いものではバーボンバレル熟成原酒が1樽50万円くらい、高いものだと1000万円を超えるものもあったそうです。
このボトルは、僕がウイスキー好きなのを知った高校時代の友人から譲ってもらったものです。感謝です!
譲るよ、と連絡が来たのはたしか3年くらい前になるのですが、お父様に少しずつ飲まれ、気付いた時にはほとんど量が残っていなかったそうで、なかなか言い出せずにいたそうです。全然構わなかったのにー。
テイスティング
バーボン樽らしい甘やかさにも、日本の気候が反映されているよう。
スコットランドよりも温度変化に富む日本の気候風土で熟成されたシングルモルトらしいというか、樽由来の香味に暖かくウェットな印象があります。
バーボンバレル熟成ですが、先行するのはオレンジ、バニラ、蜂蜜といった香りではなく、バナナチップスやキャラメルのような甘い香りです。
こうした香味には山崎原酒の個性や、経年変化も加味されているのかも知れませんが、スコッチシングルモルトでは比較的珍しく(ないわけではない)、ジャパニーズシングルモルトらしいと感じました。
テイスティングノート
香り:
豊潤な香り立ちで甘く、バナナチップス、キャラメルが先行する。ウッディネスは穏やか。その後にバニラ、ヘーゼルナッツシロップ、バタースコッチ、穏やかな麦芽の甘さ。
味わい:
度数相当のしっかりとした口当たり。味わいでもバナナ、キャラメル、ヘーゼルナッツシロップを思わせる甘さが主体だが、香りよりもモルティな麦芽の甘味がやや強く感じられる。ボディは中程度。
余韻:
味わいからそのまま引き継がれ、甘い樽香とモルティさ。暖かく、じんわりと長い余韻。
Tips
個人向けの「樽売り」は特別なことで、今はチャンスの時期。
2000年代当時、既に国内ウイスキーメーカーの最大手だったサントリーがオーナーズカスク制度を始めたのは、バブル経済の終焉とともにウイスキーブームが下火になった時期と重なったという時代背景があるようです。
「樽売り・樽買い」は、言ってみれば蒸留所とボトラー各社との間で行なわれているビジネス形態そのものなので、手法としてそれ自体が目新しいものではありませんが、これはあくまでビジネスとしてであり、「個人に向けた樽売り」は、今も昔も一般的ではありません。
ぶっちゃけると今も行われているようですが、これは一部の限られたロイヤルカスタマー向けで、かなりの特別枠です。
しかし現在はウイスキーブーム。新興蒸留所の建設ラッシュが相次ぐ中、僕たちのような一般消費者が樽を所有することができるチャンスが巡ってきています。
スコットランドでは法律により、蒸留した原酒を「ウイスキー」として販売するためには、最低3年の熟成期間を経なければなりません。
つまり新興蒸留所では、設備投資をして創業し、原料を仕入れて原酒を蒸留しても、最低3年間は作ったものが売れないことになります。
そのため、新興蒸留所では創業初期の限られた時期に、設備投資などの資金回収や、蒸留所創業の記念として、ボトラー各社や大手企業だけでなく、一般消費者向けに、広く樽売りが実施されることがあります。
最近では、ラッグ蒸留所、ドーノッホ蒸留所、静岡蒸留所などが樽売りを行なっています。少し古いところだと、アラン蒸留所や秩父蒸留所も創業から数年間だけ、一般個人向けに広く樽売りを募集していたことがありました。
ウイスキー愛好家としては、自分自身の樽を蒸留所に所有し、それをボトリングすることは夢の一つでしょう。
その意味で、今は夢を叶えるチャンスの時期です。
少し背伸びをして、自分の樽を購入してみると、もしかしたら10年後、樽を所有した蒸留所が輝かしい名声を獲得しているかも知れません。
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