贅沢過ぎる香味バランス。近年ボトリングのグレンゴインとしては間違いなく最高傑作の一つ。
GLENGOYNE 40Y. 56.8%
Single Malts of Scotland Director’s Special
418 bottles.
評価:★★★★☆
CP:☆☆
価格:VE
ボトル紹介
エリクサーディスティラーズの最高級フラッグシップ、ディレクターズ・スペシャル
The Whisky Exchange(TWE)の姉妹会社でありボトラー部門だったSpeciality Drinksは2017年にElixir Distillersに社名変更しています。
「Single Malts of Scotland」シリーズはスペシャルティドリンクス時代から同社のフラッグシップですが、社名変更後にその中から「ディレクターズ・スペシャル」と銘打たれた最高級ラインがリリースされるようになりました。
現在まで、ラフロイグ20年、グレンゴイン40年、ブナハーブン43年、ベンリアック42年、タムナヴーリン43年、グレンアラヒー43年、ダルユーイン35年がリリースされているようです(順不同)。
テイスティング
贅沢過ぎる香味バランス。古酒感を帯びた妖艶なシェリー香が溢れてくる。
味わいの出来栄えはまさに素晴らしいの一言です。妖艶なシェリー香がウイスキー全体から溢れています。素晴らしく美味しいだけでなく、なかなか出会うことのできない特別なウイスキーだと思います。
煮詰めたベリージャムや高級な葉巻の印象すらある複雑なシェリー香自体が既に素晴らしいのですが、特に感動的なのはシェリーカスク熟成のシングルモルトにありがちなスパイシーさやドライさやタンニンの収斂が強く出てこないため、甘く複雑なシェリーの香味を全く邪魔しないだけでなく、むしろ引き立てるように働いているところです。これだけしっかりとした度数と飲み応えを残しているにも関わらず、です。
更に言うと、ゆっくり時間をかけて飲むことにより、渾然一体としたシェリー香全体を熟成のピークに達したような複雑な麦芽香が非常にさりげなく、土台のように支えていることに気が付く瞬間があるのではないでしょうか。熟成感の極まった麦芽香を敢えて目立たせず香味構成の基礎として使っているような、贅沢過ぎる香味バランスです。
ファーストフィルシェリーバット熟成ですが、熟成に使われているシェリー樽はおそらくウイスキー用に作られた所謂「シーズニング・シェリー樽」ではなく、本来のシェリー酒の熟成に用いられるソレラシステムからこぼれ出た「ソレラ・シェリー樽」なのでしょう。
近年ボトリングのグレンゴインとしては間違いなく最高傑作の一つだと思いますし、伝説的なオールドボトル達と比較しても引けを取らないボトルだと思います。
おまけ情報
ボトルの価格を知ってしまうと「もはや美味しくて当たり前」というレベルで、僕個人としてはとても購入には踏み切れないのですが、2019年10月現在、池袋にある「ジェイズバー」さんでほとんど原価みたいな価格で飲むことができます。
冷静に考えても、よく抜栓する気になったなと思います(笑)もはや感謝以外の何物でもないため、飲んでみたい人は早めの来訪をオススメします。
テイスティングノート
香り:
穏やかに始まり、徐々に豊潤な甘さが開き、渾然一体としてくる。甘く、ペドロヒメネスシェリーやモンティージャワインの古酒のように奥深い。枝付きレーズン、ブラックベリー、それを煮詰めたジャム、奥から少し苺も。少しの焦げ感、深煎りのコーヒー。高級な葉巻、ウッディネスとスパイスは穏やか。ほんのりとミント。熟成の極まった麦芽香はかなり控えめに、しかし間違いなく全体の土台を支えるように存在する。非常に贅沢。
味わい:
度数を感じさせない優しい口当たりで、とろりとしている。口に含むと僅かなミントの清涼感を伴う弱いドライさ。その後に香り同様に古酒感のある複雑なシェリー香が盛大に広がる。優しい収斂。レーズンやブラックベリーの甘さ。焦げた木材、焚き火。ボディは非常に厚く、飲み応えは抜群である。
余韻:
味わいを引き継ぎつつ、穏やかなミントの清涼感を伴うドライさが再び返ってきて、甘さの中に穏やかで複雑なスパイス(クミン、生姜、唐辛子、少しブラックペッパー)
コメント