ウイスキーラヴァー、ブラックニッカラヴァーに捧げる小粋なリリース 。ノージングがとにかく楽しい。
Black Nikka 60th Anniversary Blender’s Spirit 43% (2016 Release)
評価:★ ★ – ★ ★ ☆ Recommend!
CP:☆ ☆ ☆ ☆
価格:☆
香り:
華やかな香り立ち。オレンジマーマレード、杏子などやや重いフルーツエステル香とバニラを感じさせる樽香。それに続く樽の内側を焦がしたようなピート香には少し土っぽい要素もある。香ばしい麦芽香。ナッツ、キャラメル、奥から熟れたバナナ。さらに奥からほんのりとレーズン。若い原酒のニューポッティさは感じられるが香り全体に奥行きがあるだけでなくバランスに優れ、香味の探し甲斐があるというか、こちらから積極的に探そうとすれば様々に見つけられる印象がある。
味わい:
口当たりは滑らかで甘いが若い原酒のザラつきをやや感じる。ややグレーニー(グレーンウィスキーのアルコール感)。樽香と弱い収斂が広がる。ライトボディで余韻への移行が早い。
余韻:口当たりからシームレスに繋がり、ノージングにあった多彩な香味がほんのりと返ってくる。その後スモーキーでビター。飲み終わりの舌に痺れるようなアルコール感がやや残る。
2016年11月1日に発売されたブラックニッカの限定品。1956年にニッカウイスキー初代マスターブレンダー竹鶴政孝氏の手によりこの世に初めてブラックニッカが送り出されてから60年の節目を記念してのリリースです。出荷本数は12000ケース(1ケースは12本)。公式サイトのリンクはこちら。
今回のブレンデッドのために特別に使われている原酒は、1956年蒸留の余市原酒(!)、新樽熟成の余市原酒、ヘビーピートの余市原酒、シェリー樽熟成の宮城峡原酒、1999年まで西宮工場で生産されていたカフェグレーン(最長25年熟成との話)など、かなり豪華です。ブラックニッカとそのレパートリーの発展史を踏まえながらこれらの原酒を眺めると、思わずニヤリとしてしまうニッカラヴァーもいるかも知れません。2500円前後という小売価格を考えて、これらの原酒の使用比率が高いとは考えづらいですが、コンセプトにしても話題性にしても60周年を飾るに相応しいと思います。
飲んでみて特に強調したいのは、ノージングにおける香味の多彩さです。使用原酒の若さに由来するニューポッティな要素は当然あるにせよ、エステル香、樽香、ピート香のバランスに優れるだけでなくコンテンツが豊富であり、探せば探すほど様々な香りを見つけられるような印象があります。2000円台という価格帯のウイスキーにして、これは特筆に値すると思います。伊達に「ブレンダーズスピリット」と銘打っている訳ではないと思いました。
口に含んだ後にはグレーンウイスキー特有の口の中で揮発するようなアルコール感がどうしてもありますが、これはもう小売価格から推察される使用原酒の制約を考えれば仕方のない部分だと思います。ただ、そうした要素も想像していたより穏やかで、私感ですが特にグレーンウイスキーには良質なものをそれなりに使っているのではないかと感じました。香りや口当たりで原酒の若さとして感じられた要素がグレーンウイスキー由来というよりはモルトウイスキー由来ではないかと感じたことも理由の一つです。
お酒もお祭も楽しむものですし、欠点探しをしながらこれを飲むだなんて野暮な飲み方、皆さんもなさらないでしょう。それに私、お祭、好きなんですよ。
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