熟成年数相当の複合的で複雑な香味に、独特の紙っぽい個性。この個性は第二蒸溜所へと受け継がれることになる。
LITTLEMILL 1977-2018, 40Y. 46.8% OB
celestial edition
(photo: master of malt)
評価:★★★☆
CP:NR
価格:VE
香り:
複雑な香り立ちだが意外にも軽やか。熟成感があり複合的だが、バランスが取れている。やや酸味のあるオレンジ、酸化した林檎、アマレットリキュール、杏子ジャム、ビタミンC、レモンキャンディ、仄かなオイリーさ、バニラ、土と枯れ草、汗、インク、熟した無花果(いちじく)、バナナチップス。古紙を思わせる独特な印象もきちんとある。
味わい:
度数相当に優しい口当たりで滑らか。香り同様に複雑で、樽由来の収斂は少し強くなり、複雑な果実香と凝縮感、優しい蜂蜜の甘さも。乾いた木材と共に金柑の皮を思わせる甘み。ボディは比較的ライト。
余韻:
熟成感のある複雑なフルーツ香と樽由来の収斂、穏やかなドライさ、ビタミン剤、紙を食んだような収斂を残す。
序章:突然届いた一通のメール
第1章:サンプルという概念の破壊
待つこと2週間と少し。何かが届いた。
おかしい。
何かが、というか、全てがおかしい。
これはサンプル小瓶なのか?
第二章:着、即、開。
着!
即!
開!
やっぱりおかしいだろこれ(歓喜)
(サンプルの他、ロックグラス、小冊子、ロゴ入りUSBメモリが入っていました)
第三章:テイスティング
これは気合を入れてテイスティングしなくてはなりません。
このボトルのスペックですが、1977年10月11日蒸留、アメリカンオーク樽原酒とファーストフィルバーボン原酒を3か月間オロロソシェリー樽でフィニッシュした40年物です。
このリトルミルは、マスターブレンダーであるマイケル・ヘンリー氏のヴァッティング技術とセンスが光る、言うなれば業物シングルモルトだと感じました。
おそらく使用した原酒には過熟なものもあったのではないかと推測するのですが、それを踏まえてかなり注意深くヴァッティングとフィニッシュが行われた印象です。原酒の個性を消すことなく、伸ばすべきところは伸ばされ、足りないところは補われた、構築的で静謐なシングルモルトです。
40年という熟成期間を経ているにも関わらず、香りが濃密になり過ぎず、軽やかな酸味を持ち合わせています。これが熟成感由来の複雑な甘さと折り重なって独特で複合的な甘酸っぱさを形作っています。同じ長熟でもスペイサイドモルトでは見られない味わいのバランスだと思いました。
樽感は分かりやすいですが激しく主張せず、心地良い収斂の他、バニラの甘さが全体にアクセントを加える程度で保たれていると思います。味わいと熟成年数を比較して考えると、ファーストフィルの比率は高くないだろうと感じました。
リトルミルを象徴する独特の香味表現に「濡れた段ボール」というものがありますが、それを明確に思わせるような香味はないか、あっても僅かです。ただし紙を食んだような収斂や、古紙を思わせる独特の香りは存在し、まさにリトルミル特有の個性がきちんと残っていると言って良いと思います。
その意味で飲んで紙っぽい感じる飲み手は確実にいるでしょう。
第四章:リトルミルの魂はロッホローモンドへ…
このボトルの総本数は250本、今年の2月に英国では6000ポンド(!!)で発売された非常に希少なシングルモルトでした。既に完売し国内への入荷がないのは述べた通りです。
さて、今回のボトルをブログで紹介するにあたり、元々リトルミルの歴史を振り返りながらテイスティングしていたのですが、その中でリトルミルの第二蒸留所として現在も稼働している「ロッホローモンド蒸留所」との関係は切っても切れないものであることが分かりました。
その部分は、ロッホローモンド12年の記事で詳しく述べさせていただきたいと思います。
2014年からマスターブレンダーに就任しているマイケル・ヘンリー氏(今回のリトルミルも彼の作品です)、リトルミルに変革をもたらしたウイスキー業界のパイオニアの一人である元蒸留所マネージャーのダンカン・トーマス氏などについても説明しています。
今回のテイスティングでは、「そもそも濃厚な香味要素は少ない印象のローランドモルトを長期熟成するとこういう香りになるのか…」ということに加え、マスターブレンダーの手腕の一角を垣間見せられたことなど、非常に考えさせられ、実りあるテイスティングになったと感じました。
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