日本向け限定ボトル。90年代蒸留、オフィシャルボウモアの秀作。
BOWMORE 15Y. 54.8% Whisky Shop W. Japan.
2400 bottles.
評価:★★★ Recommend!
CP:☆☆☆☆☆
価格:★
香り:
しっかりとした香り立ち。穏やかに燻製ベーコンを思わせるアイラピート、バニラ、パッションフルーツの甘酸っぱさ、少しのパイナップル、少しのオレンジオイル、奥から麦芽の甘さ。一定以上に複雑。
味わい:
口当たりは度数相当に力強いが、口の中への広がりは滑らか。燻製ベーコンや穏やかなスモークを思わせるアイラピート、少しオイリーな粘性を伴う。麦芽の甘さ、樽由来の穏やかな収斂。
余韻:
生姜を思わせる少しのドライさ、スモークを思わせるアイラピートが持続する。
今はなき、サントリーのウイスキーショップW.向けにリリースされたオフィシャルボトル
現在は無くなってしまいましたが、以前大阪にはサントリー直営のWhisky Shop W.というお店がありました。主にサントリーが取り扱うウイスキーやバーボンなどを販売していました。ビームサントリーが誕生するより以前の話です。
そこの限定ボトルとして発売されていたオフィシャルボトルのボウモア15年です。
発売後もしばらく残っており、当時の経緯は著名なウイスキーブログ「ストイックなドリンカーの日々」にも綴られています。
ストイックなドリンカーの日々:http://www.sakedori.com/spn/s/matsuki/blog/109678.html
オフィシャルボウモアの秀作
おそらくバーボンカスク主体でヴァッティングされたこのボウモア15年ですが、90年代蒸留のボウモア原酒の味わいを楽しむにはコストパフォーマンスとともに非常に良いボトルだと思います。
カスクストレングスであることから飲み応えもしっかりとあり、ボウモア特有のライトなアイラピート、そこに90年代ボウモアに見られるパッションフルーツやパイナップルを思わせるフルーツエステル香、それに熟成年数相当の溌剌とした麦芽の甘みも感じられます。
基本を押さえつつ、蒸留年代の個性もきちんと備わった、「オフィシャルボトルの秀作」と呼ぶに相応しい出来栄えだと思いました。
あらためて飲んでも、文句なくRecommendを付けることが出来ます。
90年代蒸留のボウモアが現れた当時の状況
このボトルは当時あまり顧みられていなかったのか何年も売れ残っていたことが上記に挙げた「ストイックなドリンカーの日々」のブログ記事にも書かれていますが、記事後は見直され、広く買われることになりました。私が手元に置いたのも、周りが買い始めてからです。
ボウモアの90年代蒸留は、80年代蒸留のパフューム期を脱却して美味しくなったと言われている年代です。特にグレープフルーツやパイナップル、時としてパッションフルーツやライチを思わせる香味のボトルが再び現れ始めた年代になります。中でも1993年ヴィンテージは非常に高く評価されていて、一大センセーショナルを巻き起こしました。(93ボウモアが国内で認知されるきっかけとなったいわゆる初出となるボトルについて以前ヒアリングしたところ、ハウスオブマクダフ社「ゴールデンカスク」と答える方が多かったです)
最終的に90年代ボウモア全体が広く飲み手に受け入れられますが、当時は1993年ヴィンテージのインパクトがとても大きかったことと、また93ボウモアをバーや個人宅で飲む機会がそれなりに残されていたため、それ以外の蒸留年(このボトルは2011年リリースで、中身は1995年蒸留だろうと言われています)は、本来の実力よりも低く評価されがちだったのだろうと思っています。
また、このボトルがリリースされた数年後あたりから90年代ボウモアの価格も徐々に上昇し始めました。
そうした中で、自分の感性を磨き続けてきた飲み手が率先する形でこういうボトルを手元に置いていたなと、振り返ってみて思います。私はやや後発でしたが。
多分似たようなことは今後も起こるでしょうし、感性を磨く作業が大切なのも今後も変わらないのでしょう。そんなことを、このボトルを久し振りに飲んでみて感じました。
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