飲み手の眼を開かせ、ボトル選択の幅を広げる、非常に意味あるリリース。
GLENCADAM 1995 – 2017 22Y. 61.2% OB for The Whisky Hoop, Bourbon barrel, 174 bottles.
評価:★ ★ ★ ☆ Recommend!
CP:☆ ☆ ☆
価格:★ ★ ☆
香り:
香り立ちは穏やかに始まり、徐々にしっかりとしてくる。明確に青林檎を思わせる甘いフルーツエステル香が先行し、続いてこってりとして甘い麦芽香、バニラ、ほんのりと酸味。芯の太い印象で、雑味なくクリア。
味わい:
力強いドライさはあるが、度数よりも優しい口当たり。皮ごと齧ったような青林檎の甘酸っぱさがみずみずしく広がり、併せてミルキーでクリーミーな舌触りを伴いながら、溌剌とした麦芽の甘みが綺麗に伸びる。
余韻:
心地よいドライさ、麦芽の甘みと青林檎の甘さを引き継ぐ。
ザ・ウイスキー・フープ(以下TWH)の2018年2月頒布ボトルであるグレンカダムのオフィシャルシングルカスク。1995年蒸留、ボトリングは2017年、バーボンバレルでの22年熟成です。
プライベート向けにグレンカダムのオフィシャルボトルがリリースされたのは、なんと世界初だそうです。
グレンカダムという蒸留所
グレンカダムのオフィシャルボトルが初めて発売されたのは2008年と、比較的最近の出来事です。原酒のほとんどが主にバランタインなどブレンデッドウイスキーの構成原酒として使われていて、シングルモルトとして飲むためにはボトラーリリースを探すしかなかったという過去を持つ、かなりマイナーでマニアックな蒸留所の一つでした。
そんなグレンカダム蒸留所(2000年には閉鎖の憂目にすら遭っています)でしたが、2003年にアンガス・ダンディー社が当時のオーナーであったアライド・ドメック社から買収、大規模な改修工事を行ったことを契機に見事復活を果たし、2008年11月に待望のオフィシャル10年がリリースされます。2010年7月にはラインナップが拡張され、そこに12年ポートウッドフィニッシュ、14年オロロソカスクフィニッシュ、21年が新たに加わります。
その後も細かい変遷を経つつ、現在ではNASボトルのグレンカダム・オリジン1825、10年、13年、15年、17年トリプルカスクポートウッド、18年、19年オロロソカスクフィニッシュ、21年、25年、更にシングルカスクでのリリース(リンク参照)と、こんなに出てるの?と思わず言いたくなるほど豊富なラインナップを展開するまでに至っています。
ただ、非常に残念なことに日本には正規輸入代理店がないため、海外からの個人輸入を除いては並行輸入品として市場に入ってくる限られたラインナップを細々と探すしかないという、何とも切ない状況が現在まで続いています。
そのため日本ではまだまだマイナーでマニアックな蒸留所という認識は拭い去れていないのではないかと思います。
ハウススタイルに忠実で、洗練された味わい
TWHの会員はこのボトルがかなりの自信作だという話を何となく聞いていて、ボトリング本数が少なかったこともあり、全量が会員への頒布と追加注文で早々に完売しました。
一度飲んでみると直ぐに分かると思いますが、このグレンカダムは予想以上に素晴らしい仕上がりです。
グレンカダムのハウススタイルを語るときによく用いられる文句に「麦芽のクリーム」という表現がありますが、そうした味わいはもちろん健在です。それに加えてフレッシュな青リンゴを思わせる芳醇なフルーツ香が全体を刺し貫いていて、60度を超えるハイプルーフにも関わらず引っかかる要素が見当たりません。誰が飲んでも美味しいと思えるボトルだと思います。
価格の高さは発表段階から既に指摘されていましたが、それでも複数本注文した会員が多かったのも頷ける出来栄えです。
飲み手の目を開かせる、意義深いリリース
このボトルは、グレンカダムをボトラーからオフィシャルまで一通り飲んでいるような経験豊富な飲み手にとっても、これまであまりグレンカダムを飲んでいなかったり、初めて飲むという新しい飲み手にとっても、マイナーだが魅力的な原酒を作る蒸留所があるということ、それが現在進行形で行われていることなど、様々な点で目を開かせてくれ、ボトルの選択肢を大きく広げる、非常に意味のあるリリースだと思います。
私もこれを飲んだ後、久々にグレンカダムのオフィシャルスタンダードを飲みたくなりました。
文句なしのRecommendです。気持ちが昂ぶったのと味わいが好みだったのとで、評価は高めです。
最後は余談になりますが、裏ラベルをよく見てください。
どこって、裏ラベル中程に燦然と輝く「輸入業者 株式会社 曽根物産」の文字をですよ?
今後どうなるかなんて知らないので只の憶測ですが、掴んでるっぽくない?少なくとも糸口を。輸入代理店としての。TWHを取りまとめる株式会社曽根物産が。
(正直言って個人的にちょっと感動したので書きました。)
こうしたことをきっかけに、日本の飲み手に向けて良質なボトルがますます紹介されるようになると最高ですよね。
そういう意味でも、意味深いリリースだと思います。
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