クレイゲラキ2006-2020, 13Y. 57.4% BBR for The Whisky Crew

麦芽の旨味を今で味わい、未来で楽しむコスパの高い良ボトル。

目次

CRAIGELLACHIE 2006-2020, 13Y. 57.4% Berry Brothers & Rudd Exclusively for THE WHISKY CREW

CASK TYPE: BARREL, No. 8101264


評価:★★★☆ Recommend!

CP:☆☆☆☆☆

価格:★


ボトル紹介

老舗ボトラーBBRのThe Whisky Crew向け。2006年蒸留のクレイゲラキ。

どうも。ブログ記事としてはかなり間隔が空いてしまったドリンカーズラウンジですよ。

最近は活動の場としてTwitterが主軸になってしまっていて、簡易テイスティングノートは頻繁に挙げてはいるものの、色々あってまとまった記事を全然書いていませんでした。

そんなTwitter IDはこちらです。:https://twitter.com/DrinkersLounge

久しぶりのボトル紹介なわけですが、今回紹介するのはウィスクイーが展開する会員制のECサイト「The Whisky Crew」向けに老舗ボトラーのBerry Brothers & Ruddからリリースされた2006年蒸留のクレイゲラキ、バーボンバレル熟成の13年シングルカスクです。

このボトルがリリースされたのは実は数ヶ月前なので、既に知っている人は知っているボトルかも知れませんが、よく行くバーからのオススメと信頼できる飲み手のブログ記事(モルト道:https://www.google.co.jp/amp/s/gamp.ameblo.jp/zgmf-x10a19730730/entry-12668309793.html)の内容から購入に至り、直近で抜栓したボトルです。


TASTING

麦芽の旨味が主体、見どころ満載なクレイゲラキ

端的に言って、このボトルは高コスパの超優良ボトルです。

色々と見所が多いボトルなので、一つ一つ解説します。

まず第一に、このボトルは香味バランスの完成度が高く、明確に麦芽の旨味を香味の主体としていること。

最近リリースされるシングルモルトは全体としてフルーティーなものが増え、それ自体は素晴らしいことだと思うのですが、個人的には麦芽の旨味がやや弱くボディが軽いと感じられるものが多い印象です。そんな中、このボトルは太い麦芽感をしっかりと感じることができボディも厚めです。こうした太い麦芽香を求めていた飲み手は多かったのではないでしょうか。

香りから味わい、余韻にかけてまでしっかりと麦芽の旨味が感じられるところは、「シングルモルトの原料は麦芽である」という最も基本的なことをシンプルに思い出させてくれます。

更に言うと、熟成が足りないと感じてしまうような未熟な要素やネガティヴさもなく、しっかりとしたフルーツ香も備わっていて樽香も強過ぎず、熟成年数以上に香味が複雑です。

熟成感が熟成年数の長さによって達成される香味の複雑さだとすれば、このボトルの持つ複雑さは熟成によって各要素が相互に溶け込む前の力強さを残しており、それらがせめぎ合いながらもうまくバランスしていることによる複雑さだと思います。この部分が完成度が高く、秀逸なポイントだと感じています。

第二に、このボトルはクレイゲラキという蒸留所のハウススタイルを上手く表現しているということ。

第一に挙げた見所と少し重なる部分がありますが、個人的に思うクレイゲラキのハウススタイルは、一言で言えば「スペイサイド地域の麦芽の酒」です。

冒頭に記載したブログから一部言葉を借りて表現しますが、クレイゲラキはスペイサイド地域のシングルモルトらしいフルーティーな個性を備えつつも、濃密で時にオイリーな印象すらある麦芽の旨味がしっかりと感じられる強い酒質を持ち、熟成を経ることでそれらがミルキーでクリーミーな香りと舌触りを纏うようになるというのがハウススタイルだと思います。

こうしたクレイゲラキのハウススタイルにとっては、シェリーカスクでの熟成よりもバーボンカスクでの熟成のほうが適しているのかも知れません。その点でもこのTWCのカスク選びは成功していると思います。

第三に、価格がリーズナブルなこと。

このボトルの熟成年数は13年と、クレイゲラキのオフィシャルボトルのスタンダードラインと同じ熟成年数であり、多くの蒸留所のオフィシャルボトルのスタンダードライン(だいたい12±2年)とも変わりません。たしかにクレイゲラキOBスタンダード13年と比較するとシングルカスクである以上やや高額にはなりますが、10000円を切る価格でこの味わいが楽しめるのは純粋に素晴らしいことだと思います。

第四に、このボトルが2000年代以降の原酒であること。

日本国内はもちろん世界的なウイスキーブームにあって、90年代蒸留の原酒はそろそろ本格的に枯渇しているのか希少性が高まっており、どの蒸留所に限らず新規リリースのシングルカスクはだいたい数万円が相場となっています。ちなみにアイラモルトに限ると相場は更に倍以上。そうした状況の中にあって、2000年代蒸留の原酒にしてこれだけ完成度の高いボトルがこの価格でリリースされるのは、ウイスキー愛好家にとっては朗報だと私は思っています。

価格も含めてトータルでの完成度が高いこのボトル、文句なくRecommendをつけることができます。

今後もこうした見所のあるシングルモルトがリリースされ続けるのであれば、飲み手としてはとても嬉しいです。

今の味わいを楽しみながらも未来に期待が持てる、非常に優れたリリースだと思いました。

なお、以降に記載しているテイスティングノートで、私個人は時間をかけて飲んだ際の香味として味わいの後半から余韻にかけて微量の石鹸やパフュームのニュアンスを拾っていますが、全体の香味バランスを崩すものでは微塵もなく、味わいの評価にすら影響していませんので、この部分をことさらに取り上げて期待して飲むと肩透かしをくらうと思います。おそらく今の時期の高い気温とグラスの中での時間経過、酒質の持つオイリーさに起因するものだろうと考えています。私自身は結果的に複数本購入したため、念のため保管状態には気をつけたいと思っています。

とりあえず、まだ未飲の方であれば、まずは一回、飲んでみてください。


TASTING NOTE

香り:

しっかりとして濃密な香り立ち。強い麦芽の旨味が香味の主軸を形成し、そこに穏やかに柑橘主体のフルーツが香る。シトラス、柑橘の皮、香ばしく溌剌とした麦芽香、バター、ビスケット、青林檎。キャラメルのようなクリーミーな印象、ほんのりとバニラ、蜂蜜。

味わい:

度数相当にしっかりとした口当たり。口に含んでも麦芽の甘味が濃く、香りの印象通りのクリーミーな舌触り。バターブレッド、ビスケット、オレンジ、林檎、強過ぎないウッディネス。ボディは厚い。

余韻:

味わいの要素をそのまま引き継ぎ、バターと麦芽、度数相当のアルコールのアタックと共に生姜や白胡椒のスパイス感。余韻は長め。酒質の持つオイリーさに起因するのか微量の石鹸やパフュームのニュアンスを感じるが最後まで全く残らず、全体の香味バランスを崩すものではない。

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