BLADNOCH 1990-2016, 25Y. 54.1% SMWS 50.75 “Comfort and emotional warmth”
評価:★★★ Recommend!
CP:☆☆☆☆
価格:★★
ボトル紹介
SMWSの2016年6月ボトルから。ブラドノックはSMWSの中でもリリースが少なく、ちょっと珍しい。
スコットランドのローランド地域にある本土最南端の蒸留所であるブラドノックのシングルカスク。1990年蒸留、リフィルバーボンバレル熟成の25年ものです。SMWS(Scotch Malt Whisky Society)から2016年6月ボトルとしてリリースされたものです。
1817年の創業から幾多の閉鎖と売却、再稼働を繰り返しているブラドノック蒸留所ですが、年間10万リットルと極少量しか生産されなかった時期を経てから売却された2017年からは現オーナーの元でひとまず安定稼働しており、オフィシャルボトルもある程度精力的にリリースされるようになりました。蒸留所の歴史的な経緯はブログサイトWhiskynewsの記事に簡潔かつ必要十分にまとめられています。
このボトルの蒸留年である1990年当時のブラドノックはUD(United Distillers、現Diageo)傘下時代にあたり、ローランドモルトらしいクリーンな酒質とややグラッシーな個性はブレンデッドウイスキーを作るために使われたと推察されますが、1993年には再び蒸留所閉鎖の憂き目にあっています。一時は年間10万Lの縛りの中でしか生産できない時期もありましたが、現在はオーナーも変わり生産量も年間150万Lとなっています。海外輸出もそれなりに安定しており、国内正規輸入代理店は東亜商事(https://wine.toashoji.com/news/2019/08/post_78.html)です。ただしまだまだ日本国内での知名度は低く、言ってみればマイナーな蒸溜所のシングルモルトです。
テイスティング
完成度が高く、香味の全てが程良い。長めの熟成、クリーンな酒質、上手く乗った樽感。
このブラドノックは美味しいです。香味に抜きん出た個性はないものの、シングルモルトの味わいを規定する基本的な要因である熟成、樽、酒質が高いレベルでまとまった優良ボトルだと思います。
クリーンで特徴に乏しい印象のブラドノック原酒ですが、25年という長い熟成期間を経ることで麦芽の熟成感に由来する香味の複雑さを程良くまといつつ、その熟成がリフィルバーボンバレルという比較的中長期熟成向きの樽種で行われたことで樽の個性も程良く残した、良いとこ取りな香味構成となっています。
バーボン樽熟成らしく蜂蜜やバニラを思わせる個性の他、それらをまぶしたバナナチップスのような甘い香りが好印象です。樽感は比較的しっかりとしていると言えますが、決して出過ぎていません。
口に含んでも雑味は少なく、軽くなりがちなボディは度数の高さと熟成と樽由来の複雑さとで程良く補われています。
味わいの後半から余韻にかけてほんのりとウリ科の植物を思わせるようなグラッシーな要素が見られる部分は、ブラドノックの酒質的な特徴の一つでしょう。そしてそれも長めの熟成によりほんのりとメロンの皮ような甘さを伴う印象に仕上がっていて、しかもそれが前に出過ぎておらず、嫌味がありません。ウリ科の植物を思わせるようなグラッシーさはゆっくりと飲む間の時間経過の中で感じやすいと思います。余韻は味わいからの甘さを引き継ぎつつスパイシー&ドライに切れ上がる印象で、これは酒質というよりはSMWSのボトルで比較的良く見られる個性だと思われます。
言ってみれば「全ての香味がとても程良い」という感じでしょうか。こういうボトルは個人的に大好きですし、欠点らしい欠点が見当たらないためRecommendとなります。
テイスティングノート
香り:
しっかりとした香り立ちで、甘く複雑。フルーツとスパイスの煮込み。蜂蜜、バニラ、バナナチップス、樽由来の程良いウッディネス、シロップ、麦芽の熟成感。少し遅れてほんのりとウリ、スイカ、メロンの皮、生姜、クローブ。
味わい:
度数相当にしっかりとした口当たり。暖かく濡れた印象で、蜂蜜、クローブ、バニラ、メロン、少し湿った印象のウッディネス。雑味はないが度数の高さと程良い樽感のおかげでボディは中程度に保たれている。そのまま余韻へと移行する。
余韻:
味わいから継ぎ目なく移行し、スイート&スパイシー。クローブ、生姜、ほんのりとウリ科植物のグラッシーさと甘さ、樽材由来の穏やかな収斂、白胡椒。これらがじんわりと持続した後、ドライに終わる。