BOWMORE 2002-2020, 17Y. 54.7% Bottled Exclusively for THE WHISKY CREW. Refill Barrel, Cask No. 140
評価:★★★☆ Recommend!
CP:☆☆☆
価格:★★★☆
ボトル紹介
2021年最初のTWC会員向けボトル。
The Whisky Crew向けにリリースされた2002年蒸留のボウモア、リフィルバーボンバレルで17年熟成、シングルカスクです。
The Whisky Crew(TWC)は、日本の輸入販売元兼ボトラーズであるWhisk-Eが展開する招待制のECサイト(https://thewhiskycrew.jp)で、同社が輸入元として取り扱うボトルの他、年に数回の頻度で会員向けの限定ボトルが販売されています。
今回紹介するボウモアは2021年に入って最初のTWC会員向けリリースですが、おそらくなかなか手の出しづらいボトルだったのではないでしょうか。
理由は色々と考えられます。「ドライマンゴー」という胸踊る言葉と「ラベンダーオイル」という不穏な言葉が一緒に記載されている公式説明文。加えてなかなかのお値段。
南国難民が小さなざわつきといつもの諦観を示すだけで終わるのか、違った意味であらゆるウイスキー愛好家が大なり小なりざわついてしまうのか…我々は一体どうすれば…。
こういう時に必要とされる人材こそ、皆さんご存知、人柱。
つまり、僕の出番なわけですよ。
更に更に、
と、写真の人(Whisk-Eの市川副社長)から本当に言われました。もしかして招待制のECサイトに入れるチャンス!
というわけで、この記事を読んでくれた方をThe Whisky Crewに招待させていただきマッスル。
※ かなりたくさんの方が入ってくださったようで、2021年2月26日をもってこのブログを経由した募集は終了しました。
テイスティング
騙されたと思って飲んでほしい…2000年代ボウモアからトロピコーの狼煙が今上がるッッ!
南国難民の皆様…落ち着いて聞いてください。このボトルは、トロピカルでフルーティーなボウモアでよろしいかと存じます…。
上記で伝わってしまったかも知れませんが、この2002年ボウモアは、価格だけのことはある優れてフルーティーな個性を備えており、フルーティーなシングルモルトが好きな飲み手に大いに歓迎されるだろう他、一部の南国難民を救済する可能性を秘めています。
パイナップルやパッションフルーツ、黄桃を思わせる甘酸っぱいフルーツ香をしっかりと纏っているだけでなく、奥のほうに弱いながらドライマンゴーのような特徴的な香味が出ていたことは少なからず驚きです。
ここまでしっかり黄色や白のフルーツ感が出ているなら、ボトルの持つ香味イメージを簡単に説明するために「トロピカル/南国」という言葉を使っても、たぶん詐欺にはならない気がしたので使ってみました(でもテイスティングノートでは極力使わない)。
熟成に使われている樽はリフィルのバーボンバレルなので、オレンジやパイナップルといったフルーティーさは樽から期待される要素として理解できるものの、黄桃やパッションフルーツ、弱いながらもマンゴーといった香味は樽だけでなく酒質からの影響と組み合わさって現れたのではないかと考えずにはいられません。
アイリッシュトロピカル、更に誤解を恐れずに言えば1993年ヴィンテージのボウモアにも通ずるものがあるフルーティーさで、これまで1990年代と2000年代のボウモアを比較しながら飲んできた多くの飲み手が抱く2000年代ボウモアの印象を覆す1本になるのではないかと思います。
また、2000年代ボウモアを飲む際に1990年代ボウモアと比較される紙っぽいニュアンスについてですが、取ろうと思えば取れると思いますが、ここまでしっかりとフルーティーだと「樽由来の乾いた収斂+α」で片付けられるレベルだと思います。
むしろフルーティーさが圧倒的に強いこのボトル、ひいては今後出てくるかも知れない2002年ヴィンテージのボウモアで見るべきポイントは、もう紙っぽさが云々とかそういうことではない段階にシフトしつつあるのではないかと思っています。
そんなわけでこれは是非とも多くの飲み手から感想を伺いたいボトルです。個人的にはかなり衝撃を受けたのと、純粋に味わい自体が優れているので高評価、かつRecommendとしています。
もちろん異論は認めます。ただし是非飲んでみてから何卒お願いしマッスル。
逆にCPをどう評価するかに関してはかなり悩みました。
このTWC2002年ボウモアはたしかに美味しいです。美味しいのですが、間違ってもお買い得とは言い難い価格です。
ただ、同価格帯のボトル同士を比較しても、このボトルを選ぶ意味が他と同等かそれ以上にある点を評価して、基準評価である☆☆☆としました。
こちらも異論は認めます。というか、飲み始めた時期の早い方々はもっと低く評価するだろうと思います。
「2000年代蒸留原酒のこれから」はまだ誰も体験していないという事実と、今後は再評価のタイミングが出てくるだろうこと。
これまで多くの先達の方々が各蒸留所のシングルモルトにおける1990年代原酒と2000年代原酒を飲み比べできたと思いますが、2000年代蒸留原酒の熟成期間が20年に迫ろうとしている現在において、評価内容を当時のままで止めず、あらためて再評価するタイミングが訪れつつあるのではないかと思っています。
ボウモアに限っても、このボトルと同じ2002年ヴィンテージを含めた2000年代蒸留のボウモアは、だいたい8年くらい前からリリース自体は散発的に行われていました。時期としては90年代のリリースが顕著に減少する1, 2年前あたりから少しずつ入れ替わるようにリリースされていたことになります。
当時もそれなりに良いヴィンテージだとは言われていたものの、90年代原酒よりも軽いボディ、紙を喰んだような個性などが取り沙汰され、そのままの流れで今でもボウモアの2000年代原酒は1990年代原酒のダウングレード版のような見方が優勢だと思います。
かく言う私も例外ではなく、つい先日も同様の視点でBBRの1996年蒸留ボウモアの記事を書いています。
しかしここ最近、各蒸留所の2000年代蒸留原酒が熟成における最初のピークを迎えつつあるのではないかと何となくは感じていて、今回のボウモアでその考えがかなり確信に近いものに変わりました。
80年代のパフューミーボウモアからの脱却を果たした90年代は、ボウモアにとって非常に重要な時期だったという考えに変わりはありません。ただ、現在進行形であるが故に2000年代原酒の味わいの今後については誰もが等しく未体験だという事実を踏まえると、2000年代原酒に対して現在通説となっている評価のうちのいくつかは、今まさにウイスキーを飲むことを心から楽しんでいる、もしくは今後現れる新しい飲み手によって新しく解釈され、再評価される最初のタイミングに差し掛かっているのかも知れないと感じています。
そしてこれはボウモアだけに限らず、他のあらゆる蒸留所の原酒についても言えることかも知れないと考えています。
ただ、美味しいボトルにはそれなりの価格がついてしまうという流れは、今後は今まで以上に明確になっていくのかも知れないと思うと、心境は少し複雑です。
テイスティングノート
香り:
穏やかに始まり、徐々に強くなる。黄色い果実を思わせる強いフルーティーさが先行し、パイナップル、ライチ、桜桃、パッションフルーツ、弱くドライマンゴー、穏やかなウッディネス、グレープフルーツ、弱くオレンジマーマレード。少し遅れてミディアムアイラピート。僅かにインク。
味わい:
度数相当にしっかりとした口当たり。パイナップルとパッションフルーツの甘酸っぱいフルーツ香が鮮烈に開く。続いて乾いたウッディネスの収斂、ほんのりとゼラニウムを思わせる甘いフローラルノート。ボディは中程度もしくはやや軽く、そのまま余韻へと移行する。
余韻:
柑橘やパッションフルーツを思わせる甘酸っぱさの後に、僅かに紙を喰んだときのような、口の中から水分を奪われるような印象の収斂を残す。余韻の長さは中程度からやや長い。