キルホーマン 2011 – 2020、8年 56.4% 100%アイラ アンピーテッド Royal Mile Whiskies向け

アンピートなのにピーティー?荒々しくも濃密な麦の香味が鮮烈で激推し。

KILCHOMAN 2011-2020, 8Y. 56.4% OB

100% Islay Unpeated Barley Bourbon Cask for RMW

Cask No.490/2011, 246 bottles.


評価:★★★☆ Recommend!

CP:☆☆☆☆

価格:★☆


ボトル紹介

言ってみればイレギュラー。ノンピート表記だが…

英国の酒販店であるRoyal Mile Whiskies向け(以下RMW)にボトリングされたオフィシャルボトルのキルホーマン8年です。

2011年蒸留でバーボンカスク熟成のシングルカスクですが、そんなことよりもこのボトルの見所は、仕込みの段階でピートを炊いていない麦芽を使用していること、しかも100%アイラ(キルホーマンのローカルバーレイ)であることですよね!

しかし、このボトルはウイスキーの通常の造りそのものを体現しているというか、蒸留所側がいつも通り作ってしまった結果というか、

「一つ前の仕込みで通常のピーテッド原酒を仕込んでおり、そのヘッドとテールを今回のアンピーテッド麦芽の蒸留に混ぜ込んでいるため、アンピーテッド麦芽を使ってはいるもののの、うっすらとピートを感じる仕上がりになった」

という、ある意味で非常に微笑ましい、ちょっとしたイレギュラーボトルとなっています。

はい、もう少し詳しい解説がほしい!という要望があるかも知れないのでざっくりとですが説明します。

まず前提としてスコッチウイスキー、特にシングルモルトの製造では単式蒸留機を2つ繋いで最低でも初留と再留の2回蒸留を行なって樽詰めする原酒を作ります。

その工程の中で実際に樽詰めするのは蒸留されて出てきた原酒の最初と最後を除いた「ハート」という中心部分のみで、蒸留された初めのほうの原酒を「ヘッド」、最後のほうの原酒を「テール」と呼び、これらを分ける作業を「ミドルカット」と呼びます。

どのあたりまでをハートとしてミドルカットするかは蒸留所ごとの腕の見せ所であり、蒸留所の個性に合った原酒を切り出すための専門の職人がいたりするほど重要な工程だったりします。

とりあえずざっくりとでいいので、実際に樽詰めされて熟成に回される原酒は一回の作業で蒸留された原酒のうち「ミドルカットされたハートの部分のみ」なんだな、と思ってもらえればOKです。

ではそのミドルカットで切り捨てられたヘッドとテールはどうなるかというと、これはそのまま次の蒸留に初留の段階から混ぜられます。そしてこの工程はその後も同じように継続されることになりますし、これ自体がシングルモルトの製造としてどこの蒸留所でも見られる非常にありふれたもので、何一つ特別なことはありません。

その上で今回のボトルは、「アンピーテッド麦芽を使って仕込んだ!」ものの、蒸留所はいつも通りに作ったので一つ前に蒸留した際に出たピーテッド原酒のヘッドとテールが混ざり、熟成を経て出来上がったウイスキーはうっすらピーティーでした…という、嘘みたいな本当の話的に出来上がったボトルだったりするわけです。

販売側のRMWのサイトでも「まあそんなわけだけど、とりあえずノンピートってことで!」的なボトル紹介であり、ボトルのピート濃度(フェノール濃度)表記はn/aだけど、同時に「ほんのりピートあるよね」と書いたりすることになりました。正直でよろしい!って感じですね。

そしてそのあたりを良く読まずに「アンピーテッドのキルホーマン100%アイラ!はいキタ!こんなのもう美味い確定!」みたいなノリで我先に注文した僕みたいな人は、詳細を知った後は笑うしかなかったわけです。

しかし、実際に届いたボトルをノリで抜栓してみた結果、これが非常に良いものだったことだけは、この場を通してお知らせしたいと思います。

そして後日さらにしっかりとした情報もゲットです。今は違うけど当時は原酒の作り分けとか出来なかったからこうならざるを得なかったんだって。うっかりじゃなかったんだって。感謝しかねぇです…。


テイスティング

超濃厚な麦芽の旨味に穏やかなピートが絡んで、めっちゃ美味いんだが?

こういうなんちゃってボトルはさくっと飲むか!的なノリで抜栓したのですが…すごく美味しいです。もっと高く評価する人もいるのではないでしょうか。

キルホーマンから毎年リリースされている100%アイラは、言ってみれば複数樽をヴァッテッドしたものなわけですが、このボトルはシングルカスクであることの荒削り感以上に濃密過ぎる麦芽の旨味が凝縮されていて、熟成感とは異なる複雑さを実現しています。そこに優しいピートと潮気が絡み合う仕上がり…

これだよ、俺たちは今のキルホーマン100%アイラに、この味わいを求めていたんだよ、とか思っちゃうやつです。

麦芽と潮気というワードだけを聞いていると「それってつまりスプリングバンクのローカルバーレイなの?」と思う人もいるかも知れませんが、香味バランスが全然違います。

シングルカスクであることも関係していると思いますが、このキルホーマンのほうが麦芽由来の旨味が濃く、そこに由来する香味コンテンツが非常に豊富な印象を受けました。香りの濃密さは飲んでからも持続し、まさにクリーム+バーレイ。もちろんバーボンカスク(おそらくホグスヘッド)由来のオレンジやバニラといった香味も綺麗に感じることができます。

経年させてスプリングバンクのローカルバーレイと飲み比べたりしたら…

はぁー!!夢しか膨らまねぇー!!

そんなわけで超Recommendなので、コレクターの皆さんは手に入れたほうがいいのではないかと思います。


テイスティングノート

香り:

非常に濃密でしっかりとした香り立ち。濃密な麦芽香に潮気が絡み、短熟の荒々しさにも嫌味がなくむしろ非常に複雑。バーレイクリーム、オレンジピール、シトラス、柑橘や完熟前のアプリコット、それらの甘酸っぱさ。そこにブリニーとも言えるような浜辺を思わせる潮気、海鮮BBQ、魚介の塩焼き、穏やかなアイラピート。

味わい:

しっかりとした口当たりでクリーミー。麦芽由来の甘味は潮気とともに旨味を帯びて、より複雑かつ濃厚に。海産物の塩焼きや牡蠣小屋、ビーチパーティー、日差しの強い海岸で泳いだ後の肌の上で蒸発した海水と汗、それらに伴う形で穏やかなウッディネスとバニラ、甘酸っぱい柑橘。ボディは厚い。

余韻:

潮気と甘味と旨味の共演は続き、奥からはほんのりと樽由来のバニラの甘味とオレンジピールの苦味が再び現れる。長い余韻。