近年系スイートラフの系譜。十分美味しいが、今はまだ多くを語れないのでは。今後の経年変化も含めて期待したいところ。
LAPHROAIG 30Y. 46.7%
Book One: The Ian Hunter Story
評価:★★★☆
CP:☆☆
価格:E
ボトル紹介
全部で15種類?コレクター向けの新リリース第一弾。
2019年に新しく誕生したラフロイグのコレクター向けラインナップの第一弾リリースであるラフロイグ30年ブック1:イアン・ハンター・ストーリー。
豪華な装丁の本を模したケースには今回のボトルの名前にもなっているイアン・ハンター氏の物語も書かれています。氏は蒸留所の創業一家出身の最後の人物であり、20世紀初頭には蒸留所の支配人、後にオーナーとして蒸留所の生産能力を倍増させ、苦難の時代を超えて蒸留所を守り抜いた同蒸留所最大の功労者であり、ラフロイグ蒸留所史にその名を刻むパイオニア、そしてイノベーターでした。
このボトルに使用されている樽は全てファーストフィルバーボンバレル、アルコール度数はカスクストレングスで46.7%、もちろんノンチルフィルタード・ノンカラーリング(冷却濾過せず着色しない)です。生産本数は4800本とのことです。
このシリーズは現在第二弾(ラフロイグ25年46% book2: ベッシー・ウィリアムソン・ストーリー。こちらは免税史上向け)までが発売されていますが、今後は全部で15種類がリリースされるそうです。
テイスティング
近年系スイートラフロイグの系譜を受け継ぐ。十分以上に美味しいのだが、更なる飛躍を期待してもう少し待ちたい。
今回は新宿のBar Carusoさんで約1ヶ月前に飲んだもので、テイスティングも評価も暫定にしておきたいのですが、それでも抜栓時点で既に美味しいラフロイグだと言って差し支えないでしょう。そして、今後の経年次第で更なる味わいの飛躍があるかも知れないと思っています。
香りの段階ではピートよりもフルーティーな甘さに振れていて、フルーツ香だけでも熟成年数に裏打ちされた複雑で渾然一体とした印象があります。このフルーティーさは近年のラフロイグのオフィシャルボトルの系譜に連なるものだと思います。しばらくすると透明感のある(雑味のない)麦芽の熟成感も現れ、非常に洗練されたフルーティーラフロイグという印象です。
そして口に含むと一転して古酒感のあるヨードピートが強く主張します。今はまだピートとフルーツ香が少し分離した印象がありますが、このピート感がおそらく今後にかけてフルーツ香と馴染んでくるのではないかと考えられるところが、個人的には今後の味わいの飛躍を予感させる根拠になっています。
グラスに注いでからしばらく静置しておくと、その片鱗が見えてくるのではと思います。
ただ、46.7%というカスクストレングスとしては低めな度数が今後にかけて吉と出るか凶と出るかは現時点では不明で、その点は予断を許しません。今後にかけて香味は開いてくるとは思いますが、もしかしたらピークが比較的早い時期に来てしまったり、もしくはかなり先の時期になるかも知れません。
美味しいからというのも勿論ですが、そうした意味も含めて、本当は自宅で1本抜栓して年単位で経年を踏まえながらじっくりと向き合いたいところです。高額なボトルであるということだけはネックです。
テイスティングノート
香り:
穏やかな香り立ちから始まり、徐々にしっかりとしてくる。華やかで甘いフルーツ香が先行。アプリコット、洋梨、黄色いフルーツと、渾然一体としている。そこに熟成感のある麦芽香も。ピートはヨードと弱い金属感、しかしどんどん展開するフルーツ香によって後ろへと押しやられ、フルーツ香の下支えになっている印象。香りの段階では甘さに振れているラフロイグ。
味わい:
優しい口当たりだが、ボディは厚い。香りとは打って変わって古酒感のあるヨードピートがしっかりと主張し、熟成感のある麦芽の甘味と絡み合って非常に複雑。穏やかなスパイス(胡椒、生姜、唐辛子)を感じさせつつ余韻へ。
余韻:
味わいからそのまま続く余韻は長く、穏やかなジンジャー、唐辛子を思わせ、ほんのりとホットでスパイシー。そこから更に香りと味わいで感じられたフルーツと麦芽の甘さと少しの苦みも伴うようなピートが絡み合いながら返ってくる。
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