ブレンデッドウイスキーを支える要素としてのシングルモルト。バーボン由来の盛大な香味。
FUJI-GOTEMBA DISTILLERY DISTILLER’S SELECT CASK STRENGTH 2014-2019, 50%
評価:★★☆
CP:NR
価格:NR
ボトル紹介
富士御殿場蒸溜所限定ボトルの2019年度版
2014年に蒸留し、同じ日に樽詰めした235樽の原酒から、8樽を厳選してヴァッティングしたものだそうです。ウイスキー仲間からテイスティングさせていただく機会に恵まれました。
シングルグレーン2019年度版も合わせてテイスティングしたので、後日記事にしたいと思います。
富士御殿場蒸溜所のシングルモルトで一般流通していたものは「富士山麓シングルモルト18年」でしたが、これは既に終売となっています。ブレンデッドウイスキーとしてはコスパの良さで知られた「富士山麓50°」が有名でしたが、こちらも今年に入って終売。現在一般に流通しているのは「富士山麓シグネチャーブレンド」のみとなってしまいました。
ただ、キリンの公式オンラインショップである「DRINX」では、シングルモルトやシングルグレーン、ブレンダーズキットなどが限定で販売されている他、今回ご紹介するような蒸留所に直接足を運べば入手可能な限定ボトルはまだまだあったりします。
富士御殿場蒸溜所の原酒は、フォアローゼズの空き樽で熟成されている
富士御殿場蒸溜所で原酒の熟成に使用されている樽のほとんどがバーボン樽であることと、そのバーボン樽のほとんどがフォアローゼズのものであることは有名ですが、それは親会社のキリンビールがフォアローゼズ蒸溜所を所有しているからでもあります。
フォアローゼズ自体はアメリカをはじめ日本や諸外国で販売されていますが、実はアメリカでは蒸溜所のあるケンタッキー州以外では流通しておらず、日本や欧州諸国に流通しているものとはマッシュビル(バーボンウイスキーのレシピのようなものです)が異なるそうです。
テイスティング
バーボンカスク由来の香味をストレートに味わえる
比較対象として適切かは分かりませんが、シングルモルトであるぶん、そして加水を行っていないぶん、終売となった富士山麓50°と比べて香りも味わいもかなり力強いです。これを飲むと、富士山麓50°がグレーンによって飲みやすく均されていたことが逆に分かります。
やや飲み疲れする印象はあるものの、バーボンカスク由来の香味をストレートに味わえるシングルモルトだと思います。限定品かつ蒸溜所に足を運ばないと入手できないボトルですが、バーボンに精通している人であれば、より楽しめるボトルだろうと思いました。麦芽由来の甘さは遅れて出てきますが、加水すると分かりやすくなります。
この味わいはこれまで富士山麓50°を支え、今は富士山麓シグネチャーブレンドを支えてきたモルト原酒の系譜そのものなのだろうと思いました。
貴重なボトルをテイスティングさせていただき、ありがとうございます。
テイスティングノート
香り:
濃密な香り立ちで、バーボンバレル由来の香味が盛大。バニラ、オレンジ、樽由来のウッディネス。
味わい:
しっかりとした口当たり。バーボンの樽感、バニラ、オレンジ、バターキャンディ。樽由来の香味が強い。加水すると麦芽の甘みが前に出てくる。
余韻:
味わいを引き継ぎ、ややオイリーでドライ。