香味変化の幅が大きく、開くまで時間がかかる。ハイボールは特に素晴らしい。
評価:★★☆(ハイボールで★★★☆R!)
CP:☆☆☆
価格:★☆
ROYAL BRACKLA 2001-2018, 17Y. 61.6%
CoC for MALTOYAMA
cask# 21
sherry hogshead
141 bottles.
ボトル紹介
モリソン&マッカイのコアレンジからリリースされた、モルトヤマ6周年記念シングルカスク
「モルトヤマ」店主であり、Youtuberとしても酒販業界で先陣を切ってアグレッシブな活動を展開する下野孔明氏が、酒屋稼業6周年を迎えてボトリングしたプライベートボトル。ボトラーのモリソン&マッカイの旗艦シリーズ「セレブレーション・オブ・ザ・カスク」シリーズのロイヤルブラックラです。
モルトヤマのPBも結構な本数が着実に揃ってきた印象がありますね。
このボトルは2001年蒸留の17年もので、シェリーホグスヘッドながら141本とボトリング本数は少なめ(171本という表記は誤りだそうです)。度数は60%オーバーとハイプルーフな1本です。
以下の動画は本人によるこのボトルの紹介動画です。
テイスティングノート
香り:
香味変化の幅は大きい。ハイトーンで、度数の高さを感じさせる香り立ち。総じて繊細で、薬草系リキュールのようなハーブから、モルティー、フルーツの順番。その後に溌剌とした麦芽香、奥から少しバターを思わせるオイリーさを伴いながらアカシア蜂蜜、レーズン。樽材由来の穏やかなスパイシーさも。開くまで少し時間がかかるが、最終的にフルーツを添えられた透き通った麦芽の甘みに落ち着く。
味わい:
口当たりは度数相当。麦芽の甘さと少しの若さ、樽の甘さが穏やかに強調される。そこへバニラ、白ワイン、仄かなレーズン、程良いウッディネス。ドライさとスパイシーさが現れ、余韻へと移行する。
余韻:
モルティーな甘さと若干のハーバルさを引き継ぎ、度数相当にドライでスパイシー。
繊細な麦芽感と押し付けがましさのない樽の味付け。ストレートでは少し時間が必要。
このボトルは香味変化の幅が大きく、開くまでに時間のかかるタイプで、早飲みには向きません。そういう意味で初心者向きではないと言えますが、待つ価値のあるボトルだと思います。
下野氏本人がYouTube動画で述べているような様々な香味を感じるには、グラスに注いでしばらく置いてからのほうが分かりやすいだろうと思います。
後半に現れてくる透明感のある樽香と麦芽の甘さのバランスが見所で、近年リリースの多くが樽感に頼った濃いめの味付けを狙う中にあって、一線を画した繊細な味わいだと言えると思います。シェリーホグスヘッドの樽感は強くなく、麦芽の甘みにレーズンやスパイスを添えるような綺麗で穏やかなものです。
注ぎたてではどうしてもハーバルでグラッシーな印象が強いです。ただしこれは「待て」の合図なので、しばらく待つべきでしょう。時間をかければ消えていきます。
香味が開いてくると淡麗さの中に様々な香味が見え隠れする味わいであり、その点では同じくモルトヤマ下野氏が池袋のジェイズバーと共同でボトリングした「モルトヤマ5周年記念のダフタウン」と共通点が見られると思います。
自分の好みとしては、最初のハーバルなグラッシーさ、少しハイプルーフ過ぎる点など、現時点では何一つ文句がないわけではありません。そのためRecommendは付けませんでしたが、香味が開くと真価を発揮するボトルだと感じました。それに合わせて今後評価は上がるだろうと思っています。
「ハイボールが美味しい」という言葉を、前向きに使いたいので敢えてお伝えします。
ウイスキー飲みの間では「ハイボールが美味しい」と言うと何故かそのボトルの格を下げるかのように取られてしまう風潮があるのですが、私はその風潮に真正面から異議を唱えたいとともに、積極的かつ敬意を持って、このボトルのハイボールをオススメしたいです。
原酒の持っている全ての要素が完全に活かされる形となり、甘さの中に清涼感と飲み応えを伴う非常に美味しいハイボールに仕上がります。
ハイボールが好きという方はもちろん、ストレートで香味が開くまで待てない!というせっかちな方にも、このボトルが本来持っている繊細な香味を一足早く味わえるという点でも優れていると思いますが、そういう細かいところはどうでも良くなるくらい美味しいです。
ボトルの価格的にやや贅沢なハイボールとなってしまうため、バーで頼むのは少し勇気が要りますが(そして勇気を出して注文したところ自宅で作るよりも倍以上美味しかったですが)、自宅で楽しむ分にはその点を気にする必要がないのが良いところです。
夏を迎えるこれからの季節にもうってつけです。