新しいエッセンスシリーズの飲み比べは、このボトルから始めると良いのでは
The ESSENCE of SUNTORY WHISKY YAMAZAKI 2009-2019, 56% SPANISH OAK
評価:★★☆
CP:☆☆☆
価格:★
テイスティングノート
香り:
穏やかな香り立ち。徐々に甘さが開いてくる。ややスパイシーで、穏やかなレーズンの甘さ。ウッディネスは乾いた印象で、削った鉛筆を思わせる。奥から麦芽の甘さ。非常に微かだがフローラル。
味わい:
口当たりはスパイシーでドライな印象が強い。やや雑多な印象のある麦芽の甘さ、レーズン、キャンディ。ウッディネスに少し湿った印象(生木の印象)が加わる。僅かにオイリー。ボディは然程厚くなく、程なく余韻へと移行する。
余韻:
スパイシーでドライ。麦芽の甘さと収斂をじんわりと引き継ぐ。
ボトル紹介
エッセンス・シリーズ第二弾から、リフィルシェリー樽熟成
2019年2月末、サントリーからエッセンスシリーズ第二弾が発売されました。
第二弾の三本は全てシングルモルト山崎です。
この記事では、リフィルシェリーカスクについて書いています。
他の二つはこちらです。
山崎 2009 – 2019, 55% エッセンス・オブ・サントリーウイスキー モンティージャワインカスク
山崎 2009 – 2019, 56% ザ・エッセンス・オブ・サントリーウイスキー スパニッシュオーク
エッセンス・シリーズ第二弾の特徴
同一蒸溜所、ぼぼ同一ヴィンテージ、ぼぼ同一の熟成年数、ぼぼ同一度数の原酒を、三種類の異なる樽(スパニッシュオークの新樽、モンティージャワイン樽、リフィルシェリー樽)で熟成させるという、非常に興味深いリリースです。
また、樽種こそ違えど樽材は全て「スパニッシュオーク」であるという共通項があることも、これまた興味深い特徴です。
アメリカンオークよりも多孔質でタンニンの多いスパニッシュオーク(ヨーロピアンオークとも呼ばれる)は、ウイスキーにスパイシーな個性をもたらすことで知られています。
各ボトルの抽象画を思わせるラベルは、どれも「情」の文字をイメージしたものとなっています。意味深ですが、3本リリースされていることに因んで、飲んだ人の「感情」「情緒」への働きかけ、樽種やヴィンテージなどの「情報」の明示、スパニッシュオークとシェリーを産出する「情熱」の国スペインという、トリプルミーニングになっているのではないかと個人的には考えたりしました。
リフィル樽について
ウイスキーの熟成にはバーボンやシェリーなど、他の酒類の熟成に使われた樽を再使用することが殆どです。それらの樽に初めてウイスキーを詰めることを「ファーストフィル」、そこで熟成を終えたウイスキーを一度払い出した後、あらためてウイスキーを詰めることを「リフィル」または「セカンドフィル」と言います。
ファーストフィルでの熟成期間や樽の熟成環境にもよりますが、何はともあれリフィル樽は一度ウイスキーの熟成に使われた樽であるため、ウイスキーを熟成させる前に詰められていた酒類由来の香味成分や、樽材由来の香味成分はある程度抜けていることになります。
そのため、リフィル樽で熟成されたウイスキーは、樽材由来のウッディさやタンニンの収斂、ウイスキーの熟成に使われる前に詰められていた酒類の個性(今回の場合はシェリー)の影響が、ファーストフィルに比べて穏やかになる傾向があります。
程よいシェリー感。味わいから余韻にかけてはドライでスパイシー
穏やかなシェリーの影響は、リフィルシェリーカスク熟成であることを納得させるものです。
加えて、味わいから余韻にかけてのスパイシーさとドライさは、樽材がスパニッシュオークであることを、これまた納得させるものだと思います。
麦芽感がシンプルで、甘みにやや雑多な印象があるところも、熟成年数相当だと納得できます。
そんなわけで、スペックから考えるとどれも納得できるなと素直に思えるもので、味わいのバランスも割と取れています。
飲み比べはこのボトルから始めるといいんじゃないでしょうか。
2本目の、モンティージャワインカスクに続きます。
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