圧倒的にデザートモルト。チョコレートと合わせないことには始まらない。
BENRIACH 15Y. 46% Pedro Ximenez Sherry Wood Finish
評価:★★☆
CP:☆☆☆
価格:★(現在は終売)
香り:
ウッディで甘い。レーズン、少し腐葉土とサルファリー。そこからバニラ、蜂蜜。遅れてうっすらと桃、奥から若干のクレヨン。
味わい:
度数から想像されるより穏やかな口当たり。シェリーカスクのウッディネスがやや強くなる。フィニッシュ前のバーボンカスク由来と思われる蜂蜜の甘さ、クローブ、ナツメグを思わせるスパイス感が優しく現れる。
余韻:
甘みを引き継ぎ、穏やかなドライさ。
ウッドフィニッシュシリーズの最後発ボトル
ベンリアックのウッドフィニッシュシリーズは、現在グレンアラヒー蒸溜所のマスターディスティラーを勤めているビリー・ウォーカー氏がベンリアック蒸溜所に在籍していた時期に発売されたシリーズです。
基本的にバーボンカスクで熟成させたベンリアック原酒を様々な樽種で後熟させたシリーズで、数年に渡って何種類かリリースされました。以前紹介したベンリアック15年マディラウッドフィニッシュもその一つです。
このボトルはその中でもシリーズ最後発に近いボトルです。
ちなみに、2014年のインターナショナルワイン&スピリッツコンペティション(IWSC)でシルバーメダルを獲得しているそうです。
しっかりめな甘さと滑らかな飲み心地
樽由来のしっかりとした強めの甘さと、そこから一転した滑らかな飲み心地はこのボトルの特徴であり、飲み手を惹きつける優れた部分でもある思います。
ノンチルフィルター(冷却濾過をしていないこと。香味成分を除去していない)なので、明確な方向性で樽や原酒を選定し、それを上手く加水して仕上げたのだろうと感じられるボトルです。
また、サルファリーさはあるものの弱く、甘みより前に出てこないところも評価できると思います。
好みとして甘過ぎると感じない限り、十分楽しめるボトルではないかと思います。
…しかし、様々なシングルモルトを飲んできた経験豊富な飲み手によるこのボトルの評価は、高くもなければ低くもないという場合が多いです。
何故なんでしょうか…?
このボトルが飲み慣れた人に刺さらない理由
では、面白くないことを承知で、また、きちんとフォローを入れることを約束した上で、何故かという部分を記していこうと思います。
まず味わいの全体的な仕上がりとしては、バーボンカスクで熟成した原酒をシェリーカスクで後熟したというボトルの来歴そのままです。
こうしたタイプのボトルは実のところ多いため、飲み慣れた人の中で、特に目新しさや見所を感じないという方は多いでしょう。
また、特徴でもある強めの甘さは後熟に使用したPXシェリーに由来するものですが、樽感がややベタつき、少し浮わついた印象を受けます。つまり後熟前のバーボンカスク由来の香味との一体感に乏しく、分離したように感じられるということです。出来ればもう少し馴染んでほしいのです。
また、原酒由来の香味、特に麦芽感は分かりづらいです。これは本来の酒質や熟成期間で得られていたはずの香味を樽由来の香味で押し潰しているからで、残念ですがベンリアックの原酒の個性のようなものをこのボトルから感じ取ることは難しいです。
こういった部分があるため、ウイスキーを飲むとついつい色々言いたくなってしまう悲しいサガを背負った多くのシングルモルト飲みにとって、このボトルは特に刺さる部分がなく、悪くはないけど良くもない、というような、面白みのないボトルに映ってしまうのでしょう。
チョコレートと合わせることで真価を発揮
はい、ではここからきっちりフォローします。
ぶっちゃけ、単独で飲むからいけないんですよ。
このボトルの真価は、チョコレートと合わせた時に最大限発揮されます。
しかも、高いチョコレートである必要はないのです。
写真のチョコレートブラウニー的な、庶民派スーパーとかで普通に買える詰め合わせ系チョコレートとの合わせでもガッチリとハマるんですよ。
そうです、こいつは完全なデザートモルトであり、スイーツモルトなんですね。
これしかないと言い切れるほど、食後に、甘いチョコレートと一緒に楽しむためのボトルです。
もしこのボトルを所持していながらチョコレートと合わせたことがないのであれば、今すぐやるべきです。
今はちょうどバレンタインシーズン。一年で最もチョコレートが市場に充実する時期なので、ちょうどいいのではないでしょうか。