乳酸とハチミツレモン。香味は若いが整えられている。NAS商品としてはアリ。
SINGLETON OF DUFFTOWN Malt Master’s Selection 40%
評価:★ ★
CP:☆ ☆
価格:☆
香り:
穏やかな香り。甘いが原酒の若さをやや感じる。穏やかな乳酸、乾いた木材、薄めた蜂蜜、レモン、極僅かなドライフルーツ。香りと樽種の結び付けはとても難しい。
味わい:
穏やかな口当たり。加水で穏やかに均されているが原酒の若さは残る。蜂蜜、ややキャラメル。あっさりとしていて軽いボディ。
余韻:
短く、穏やかなドライさと樽の収斂。
リニューアル後の新商品
ディアジオは2018年の5月頃にダフタウンのボトルをリニューアルしましたが、その際に新しくラインナップに加わったのがこのボトルです。熟成年数表記なしの加水40%ボトルで、価格はだいたい30ポンド前後です。
シェリーカスクやバーボンカスクで詰め替えを行いながら(フィニッシュということでいいのでしょうか)既存の12年ものより「ちょっとだけ甘い」味わいに仕上がっているとアナウンスされています。
これはボトル購入ではなく、海外からボトルを購入したらクリスマスプレゼントとして付いてきたものです。
NASボトルとして方向性は分かる
このボトルが既存のシングルトン・オブ・ダフタウン12年より「ちょっとだけ甘い(slightly sweeter)」というのは確かにその通りで、これは主に詰め替えに使われた樽に由来する甘さだと思われます。
「若い原酒に樽感を合わせた後、更にしっかりと加水することで甘さを残しつつも若さを抑えて飲みやすく仕上げました」という感じで、ちょっと強引な印象はありますが、味わいそのものは整えられていると思います。口当たりもサラサラしていて飲みやすいシングルモルトだと思います。
ただ、粗は幾らでも探せる
ただ、粗を探そうと思えば勿論いくらでも探せます。
まず若いです。隠し切れてません。熟成感とかはないです。
香味は全体的にぼんやりとしていて、主役も脇役もない感じです。
記憶に残りやすい味わいではないです。むしろ覚えづらく、かつ忘れやすい味わいだとすら思います。
「未熟な原酒をなんだかんだで飲めるように調整しました」という表現のほうがしっくりくるかも知れないというか。
「馬子にも衣装」だけどその衣装別に大したことないよねというか。
「偏差値40からの大学受験」みたいな、割とどうしようもない状態にかりそめの希望を添えただけの印象があるというか。
少なくとも同価格帯のグレンフィデック12年、グレンモーレンジ10年、タリスカー10年などとのガチンコ勝負はちょっと厳しいかな…とは思っています。
でも、これはこれでアリかなと思っている自分もいる
以下は、言わば物事を様々な角度と側面から捉えるための「ある視点」のひとつみたいなものだと思ってもらえれば結構なのですが、私がこのボトルを飲んであまり悪くいう気にならない(既に結構言ってしまっているかも知れませんが)のは、ひとつは意外と頑張ってる感じがするからです。
例えが相応しいかどうかは別ですが、勉強が出来る奴がこの程度でいいと手を抜いて合格点ギリギリの65点にちょっと色をつけて70点で良しとしたのではなく、出来の悪い奴が物凄く頑張って65点以上をもぎ取ってきた感じはあるんですよね。(TIPS:これとは関係ありませんがテストは何点だろうが受かればいい)
もうひとつは、今年に入ってリリースされた「ダフタウン 1997 20年 54% ホグスヘッド / 富嶽三十六景 Selected by ジェイズバー・池袋&モルトヤマ for モルトヤマ5周年記念」を飲んだ経験が大きいかなと思います。
今回飲んだボトルはまとまりはあるにせよ特別感の全くないボトルですが、やんわりとですがモルトヤマダフタウンと共通したニュアンスはあるかなとは感じました。感じたというか、同じ蒸溜所の原酒なので似た部分があることに驚きはないのですが、あのボトルのおかげで、今まであまり省みていなかったダフタウンというシングルモルトを、もう少しよく見てみようかなという気持ちが芽生えてきたというか。
ダフタウンを他と比べた際の魅力を明確に言葉にすることはまだ出来ませんが、要は、今まであまり考えてきていなかったものを好きか嫌いかはともかく知りたいと思っているということです。
正直に述べるとダフタウン蒸溜所のシングルモルトはもともと非常に主張が弱く、少なくとも個性的とは言い難いと個人的にはまだ思っています。もっと言えば残念ながら僕自身が突き抜けて美味しいと思ったボトルに出会ったことがない蒸溜所でもあります。
そういう意味でダフタウンには「まあこんなもんだろう」という期待値の低さがどうしても付きまとっていましたし、今でもそこは大して変わっていないのですが、また飲む機会が巡ってきたら今までとは少し違った見方をしながら飲んでみたいと思います。