THE SAGA CONTINUES. STILL SHININ’.
FETTERCAIRN 1988-2016, 27Y. 51.9% “The Infamous…” 2nd Release
評価:★ ★ ★ ☆ Recommend!
CP:☆ ☆ ☆
価格:★ ★ ★
香り:
しっかりとした香り立ち。麦芽香、フルーツ香、控えめな樽香が複雑に折り重なる。熟成感があり、雑味がない。まずクリーミーな麦芽感。そこから甘いオレンジクリームとオレンジピール。発酵バター。他にも林檎、洋梨、少しアプリコットと桃、穏やかにグレープフルーツのワタ。ほんのり乳酸と汗臭。
味わい:
口当たりは度数相当。口に含むと濃密でクリーミー。オイリーさもあるが強くない。麦芽の香味が濃密さを増し、バターを塗ったトーストの香ばしさと甘さ。心地良い樽由来の収斂。どっしりとした太い麦芽の香味が口腔内に残り、ボディは厚い。
余韻:
味わいの濃密さを引き継ぎ、フルーツエステルの凝縮感と樽由来の穏やかなバニラを伴うややドライな収斂がじんわりと長く続く。
築かれてきた伝説、続いていく伝説
押しも押されぬ新宿の名店「Bar Caruso」の鈴木健太氏。
自由が丘のモルト窟「Speyside way」の千根稔氏。
日本のウイスキー市場を牽引する「信濃屋」が誇る世界的ウイスキーバイヤーである北梶剛氏。
同世代の三者によるインプロヴァイゼーションによって産み落とされたボトル、それが「Infamous…」です。
第1弾のグレンタレットに引き続き、同一ラベルでリリースされたまさかの第2弾ボトルが、今回のフェッターケアンです。
1988年蒸留のフェッターケアンには同年(2018年)に信濃屋からリリースされた「NAGOMI」ボトルの記憶が新しい方もいるかも知れません。違いとしては、NAGOMIフェッターケアンが1988-2017の28年熟成、Infamousフェッターケアンが1988-2016の27年熟成です。ボトリングしてからNAGOMIは1年近く、Infamousは2年近く寝かせてから発売されたことになります。
推測ですが、どちらも元々は信濃屋のバイヤーである北梶氏がプライベートシリーズでリリースするために残しておいた、特別なボトルだったのではないでしょうか。またボトルの形状の違いから、樽供給元も異なる可能性があります。
発酵バターのような甘く太い麦芽香、奥から現れる濃密なフルーツエステル
当然、このInfamousは自宅で着・即・開しました。
先行する太くクリーミーな麦芽香には発酵バターを思わせるどっしりとした濃密さがあるにも関わらずしつこくなく、奥から現れるフルーツエステル香と合わさって複雑かつ濃密な印象を形成しています。
ゆっくりと飲んでいくと桃やアプリコット、グレープフルーツのワタのような香りも立ち現われてきて、更に複雑さを増していくところが素晴らしいと思います。
ボディは麦芽の太さに支えられ、非常にしっかりとしています。雑味と呼べるような要素もありません。
太い麦芽香を主体にしてフルーティーな華やかさとボディの太さを併せ持った非常に美味しいボトルだと思います。
可能であれば是非飲み比べを!
同一ヴィンテージのNAGOMIフェッターケアンとInfamousフェッターケアンは、両者とも麦芽香が太く、奥から迫り上がるように立ち現れる濃密なフルーツエステル香を持ち、時間経過でも素晴らしく開くボトルで、その意味で基本的な香味要素は似ています。しかし飲み比べるとその方向性には違いがあると感じました。
端的に述べると、NAGOMIはフルーツ香の華やかさ、Infamousは麦芽の香味の太さに、より味わいの重点が置かれたボトルに仕上がっていると感じました。
メタリックで独特なフルーティーさがあるNAGOMI、麦芽の太さを主体として奥から迫り上がるようにフルーティーさが現れるInfamous…、どちらもフェッターケアンという、控えめに言ってもマイナーな蒸溜所の原酒の味わいの幅と奥行きを世に知らしめるような、思わず唸ってしまう出来の良さです。
こうしたボトルを見つけてくるセンスと審美眼、それを世に問う決断力と行動力には、一人の飲み手として素直に脱帽です。飲み手で良かったなと、素直に思えます。
さて、今回このボトルが出たことで、両者を飲み比べると更に面白さと意味が出てくるのではないかと思いますので、可能であれば見つけて飲み比べをしていただきたいです。
そして皆さんの感想を是非お聞きしたいと思っています。
現在、新宿のBar Caruso、もしくは自由が丘のSpeyside Wayで開いています。是非とも足を運んでみてください!
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