美味しい長熟アイラ。度数落ちした原酒も混ざっている印象で香味の開きは多彩、ボディには枯れ感あり。
Single Malt Scotch Whisky Islay #2, 25Y. 48.7% Boutique-y Whisky Company
評価:★★★☆
CP:☆☆☆
価格:★★★★☆(700ml換算)
香り:
※時間経過でかなり変化する
香り立ちは最初穏やかで、塩素やミネラル、ベーコンを感じさせる鋭いピートが先行するが、時間を置く毎にフルーツ香と熟成感のある麦芽香がどんどん開いてきて複雑さを増してくる。フルーツ香はライムやレモンといった酸味のある柑橘とその皮から始まり、少し遅れて完熟オレンジ、更にはアプリコットジャムも。それらに折り重なるように熟成感のある麦芽香がじわじわと盛り上がってくる。ピート香は最初だけ刺すような塩素感があるが、その後は穏やかで、塩気とミネラルの他、すえた干し草を思わせる香り。他にナッツ、僅かに汗の香り。
味わい:
口当たりは度数より少し優しい印象。僅かにドライだが舌触りはサラリとしている。ピートは熟成感のある麦芽感の中に溶け込み、下支えするように味わいに深みを与えている。やや過熟感、枯れ感があり、ボディの厚みも少し失われているが、滋味深い。
余韻:
余韻の長さは中程度で、僅かな収斂と胡椒を思わせる穏やかなスパイスが現れる。穏やかなピートが溶け込んだ熟成感のある複雑な麦芽とフルーツの甘味がじんわりと持続した後、ミネラルと塩素を思わせるピートが少し戻ってくる。
英国酒販店が展開する新進ボトラー発の長熟アイラモルト
ブティックウイスキーは英国の酒販店Master of Maltが手掛けるインディペンデント・ボトラーです。一風変わったイラストラベル、500ml以下の容量、シングルカスクではなく複数樽をヴァッティングした(混ぜた)リリースに力を入れていることなどが特徴です。
2010年代以降の新進ボトラーですが、セレクションはシングルモルトからグレーン、ブレンデッドまでと幅広く、内容も近年ものから閉鎖蒸溜所(ポートエレンをリリースしています)までと多彩で、大手ボトラーからはなかなかリリースされないようなコンセプトボトルを取り扱う面白いボトラーです。
今回のボトルは蒸溜所非公開のシングルアイラモルト25年で、中身はアードベッグです。樽構成は不明、リリース本数は3124本です。
日本で発売されたのは2018年の10月に入ってからですが、既にインターナショナルワイン&スピリッツコンペティション(IWSC)2018で最高賞であるGold Outstandingを受賞している他、モルトマニアックスアワード(MMA)2017でも部門最高賞であるBest premium peated Whiskyを受賞するなど、華々しい経歴を持つボトルです。
時間経過でこれぞ長熟アイラと言わしめる香りが開く。ボディはやや枯れ気味。
かなり多様な熟成期間の原酒が混ぜられているのではないでしょうか。香りの展開が非常に多彩です。おそらくシングルヴィンテージではこうした香味変化にはならないでしょう。早飲みはせず、是非とも時間をかけてゆっくりと楽しむべきだと思います。
最初は塩素やミネラルが主体の鋭いピートを感じますが、時間をかける毎に奥行きのあるフルーツ香と熟成感のある麦芽香が徐々に開いてきて、渾然一体とした複雑さが現れてきます。その後はピートが徐々に鋭さから溶け込むような丸さへと変わっていき、干し藁のようなニュアンスとともに前述のフルーツ香と麦芽香が加わることで古酒感が現れてきます。言い過ぎだとは思いますが、70年代アードベッグを思わせる印象も僅かながら感じられるのではないかと思っています。
口に含んだ後はピートが更に麦芽の熟成感の中に溶け込み、長熟のアイラモルト特有の深みへと変わっていきます。
フルーティーではあるもののやや枯れ気味で過熟感があり、ボディと余韻からは少し厚みと長さが失われています。この部分は少し残念です。これは90年代以降のアードベッグの酒質によると考えられる他、48.7%とカスクストレングスとしてはやや低めの度数と非常に複雑な展開の香味から、おそらく熟成の途中で40%を割るなどして販売できなくなった超長熟原酒を構成原酒として使っているからではないかと、個人的に推測しています。
ボディの枯れ感が気にならないならオススメ。
500mlで30000円ギリギリと全く安くないボトルですが、信じられないくらい高額な最近のオフィシャル長熟アードベッグと比較すれば十分納得できるコストパフォーマンスだと思います。(ていうかオフィシャルが高過ぎ)
フルーツエステル、麦芽の熟成感、ピートというシングルモルトの三大要素によって紡がれる長熟アイラ独特の香味を探していて、かつ香りの複雑さと引き換えになったボディの枯れ感が気にならないのであれば、非常にオススメな一本です。
いやでもやっぱりちょっと高いよ…という方、容量は下がりますが、海外(主に米国)向けに375mlボトルが容量相応な価格で販売されていた他、海外サイトでは500mlボトルが国内よりも安価に入手可能のようです。良かったら探してみてください。
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