経年品。シンプルな香味、ライトな飲み口、紙を食んだような収斂。
LITTLEMILL 12Y. 40% 700ml, Official bottle.
評価:★ ★
CP:☆ ☆ ☆
価格:☆
香り:
穏やかな香り立ち。やや発酵した藁のような酸臭、その後に穏やかにレモングラス、林檎、未熟な印象はないが熟成感もない穏やかな麦芽香。新聞紙、もしくは有名な「濡れた段ボール」を彷彿とさせる香り。樽由来のバニラと穏やかなウッディネス。香味要素はどれも穏やかで積極的に主張しない。
味わい:
度数相当。滑らかで軽い口当たり。麦芽、乾いたウッディネス。僅かに紙を食んだような水分を奪う感じのある収斂。全体的に穏やか。ライトボディ。
余韻:
僅かにドライで、穏やかな収斂は少しだけ持続する。穏やかなマスタード系のやや酸味のあるスパイス感。微かなミント。余韻は短い。
最近めっきりリリースの減った、ローランド地方の閉鎖蒸溜所、オフィシャルボトル
リトルミルはかつて存在したローランド地方の蒸溜所で、創業は1772年。現存していた中ではスコットランド最古と考えられていた蒸溜所でもあります。閉鎖は1994年、その後2004年に火災で消失し、現在は存在していません。
80年代後半から90年代に蒸留されたリトルミルには割とフルーティーなタイプの原酒が存在し、閉鎖後の2000年代後半から2010年代にかけてボトラー各社からのリリースが比較的続きました。また、リトルミルの味わいを形容する言葉としては「濡れた段ボール」というものが非常に有名です。
ただ、ボトリング年代や各ボトルによって味わいの個性は異なり、個人的には明確なハウススタイルを掴むのがやや難しい蒸溜所のうちの一つだと認識しています。
最近はめっきりとリリースが減り、直近で老舗ボトラーG&Mからリリースされたボトルは6万円以上の高額ボトルでした。1990年代や2000年代から飲んでいるドリンカーからすれば隔世の感があるかも知れないですね。
自分の手元の記録によると、このボトルを購入したのは2011年。自分のモルト歴の中では最古参に近いボトルです。
閉鎖がアナウンスされてそれなりの年月が経過してから購入したことになりますが、物凄く売れ残っていました。そして2500円以下で購入しています。
抜栓は同年の11月20日なので、既に抜栓後6年半が経過していることになります。
このボトルの評判は当時からあまり高くなかったようで、個人的にも残念ながらあまり異論はありません。写真でもお分かりの通り、自宅抜栓にも関わらず6年半でこの程度しか減っていないことからも、何となくニュアンスが伝わってしまうかも知れません。
抜栓当初からよく言えば個性的、正直に言えば口に合わなかったボトルでした。泥臭かったような記憶すらあります。そういえば、当時購入した信濃屋新宿歌舞伎町店の商品紹介にも「万人受けする味わいではありません」と、しっかりと書かれていたと記憶しています(笑)
経験という意味で
経年変化なのか当時よりは香味にまとまりを感じますが、基本的に特有の紙っぽさも含めて香味全体は非常に穏やかで、他に取れるのはライトで酸味を伴うエステル香と、同じくらいライトな樽香くらいです。加水のためか飲み口は軽いですが、紙を食んだような独特の収斂感があります。
シンプルな香味と軽い飲み口、それがローランドの個性…というには全体的にぼんやりとしていて、香味のバランスの取り方もさほどでもないという印象です。言ってみれば、うん、まあ、普通かな…という感じです。
あまり一般的な使い方ではありませんが、いわゆる「紙っぽさ」「新聞紙」「濡れた段ボール」というような、特徴的な香味を(特に香り、後は味わいの段階で)経験するには適したボトルなのかも知れません。
また、酸味を伴うエステル香にグレープフルーツを感じられないこともなく、こうしたフルーティーさはおそらく90年代の原酒の個性なのかな?と推察してみたりするのも面白いかも知れません。
モルトに限らず、マニアは何事も勉強ですからね(笑)!
もし買いたいと思うなら
現在では最早オールドボトルの範疇に入るボトルになるでしょう。しかし、そもそもあまり売れていなかったということもあり、地方の酒屋さんなどを根気よく探せば今でも十分に見つけられる可能性があります。
もし見つけたとして、自分で飲むことを目的に購入するのであれば、どう見積もっても5000円がボーダーラインでしょう。
転売目的ならもうちょっと出してもいいのかも知れないけど…と思って調べたら既に2万オーバー…。落ち着け。そういうボトルじゃない。
現行もオールドも、バランス良く飲めば良いんだぜ
もう古いボトルですし自分の手持ちだからぶっちゃけちゃいますけど、閉鎖蒸溜所だからって何から何までありがたがって飲むようなもんでもないな!ってやつです。
希少性はともかく、このボトルと比べるのであれば、現行の同価格帯のオフィシャルスタンダードのほうが味わいの点で優れているものが多いと思われます。
ただ、私は古酒礼賛でもなければ現行礼賛でもなく、オールドボトルにも現行ボトルにもそれぞれの良さと意味があると考えています。幅広く行き来しながらバランス良く飲むことで、お酒に対する見識が深まり、見方も広がってくるのではないかと思っています。
そういう意味で、経験として飲む分にはアリかなと思います。
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drinkerslounge, thank you for this post. Its very inspiring.