オールドスタイル。ハウススタイルを踏襲しつつ、飲み心地も大切にしている、GMらしいボトル。
評価:★ ★ ☆
CP:☆ ☆ ☆
価格:★
ARDMORE 1993 – 2008 43% GM
香り:
やや弱い香り立ち。ほんのりとシトラス、レモン、微かにオレンジ。少し遅れて燻製ナッツと穏やかな潮気を思わせるピート香と麦芽の甘さが徐々に現れる。
味わい:
口当たりは度数相当に穏やか。クリーミーで、やや燻製と潮気のニュアンスのある焦げた内陸系ピートが開いてくる。少しドライで麦芽の甘み。
余韻:
穏やかなグラッシーさがあり、ほんのりとドライ、ほんのりとスパイシー。口当たりのクリーミーさがほんのりとオイリーなニュアンスに変化する。
老舗ボトラーのゴードン&マクファイル(以下GM)からリリースされた1993年蒸溜のアードモア。蒸溜所ラベルと呼ばれているもので、蒸溜所元詰めのオフィシャルボトルであるかのように蒸溜所の名前がハッキリと記載されているラベルが特徴です。
ボトラーブランドのリリースは、オフィシャルボトルとの区別を明確にするために蒸溜所の名前を小さくしか書けないというのが通例ですが、GMは有名無名によらず様々な蒸溜所の原酒を長期に渡って買い支えてきたという歴史的な経緯があり、ボトラーブランドとして唯一、このように大きく蒸溜所名を記載したラベルを使用することが許されています。言わば、オフィシャルからのお墨付きをもらったボトラーズリリースです。
当時オフィシャルボトルのリリースがなかった(主にブレンデッド用に回され、シングルモルトとしてのリリースがなかった)蒸溜所では、GMの蒸溜所ラベルがオフィシャルボトルと同じような位置付けで扱われていたそうです。
アードモアは地理的にはスペイサイド地域に属します。ただ蒸溜所の職人たちはスペイサイドの括りに入れられることを嫌がるらしく、「ここはハイランドであり、アードモアはハイランドモルトだ」と言っているそうです。
ほとんどがブレンデッドウイスキーであるティーチャーズのキーモルトとして使用され、オフィシャルボトルがあまりリリースされていないマイナー蒸溜所ですが、作られる原酒の基本スタイルはピーテッドと、結構個性的です。スペイサイド地域でこれほどしっかりピートを炊いた原酒を作っている蒸溜所は珍しく、こうしたところが職人のこだわり発言として現れているのかも知れません。
また、2000年頃からノンピートタイプのアードレアという原酒を一定量生産しています。
はい、ウンチクはこれくらいでお終いです。
味わいは、蒸溜所ラベルらしく往年のハウススタイルを踏襲しつつも、GMお得意の加水マジックによって雑味なく、穏やかで、非常に飲み心地良く仕上げられています。
樽の内側を焦がしたような、土っぽい印象のある内陸系ピートを基調としつつも、僅かながらアイラを思わせる燻製や潮のニュアンスがあるのがアードモアの特徴だと思っているのですが、こうした要素を分析的に自分の元へたぐり寄せるのに、このボトルはうってつけかなと思います。
アイラモルトとのピートの違いを確かめるために飲み比べをするのであればカリラ、また、GM所有で同じくピーテッドタイプのスペイサイドモルトであるベンロマックとの比較も面白いと思います。