独特なミネラル感は何処から来るのか。
AMRUT 10Y. Greedy Angel 46%
評価:★ ★ ★
CP:☆
価格:E
香り:
しっかりとして濃厚な香り立ち。甘く、ウッディ。そこからパッションフルーツのような甘酸っぱさ、パイナップル、切りたてのオレンジ、ピンクグレープフルーツ、洋梨、石灰のような独特のミネラル感。
味わい:
口当たりは度数相当だが、ボディはしっかりとしている。フルーツ香は少し後方に下がり、入れ替わるように樽感と麦芽感が前面に出てくる。樽感は強く、ウッディネスに若干のエグ味を伴う。その後にやってくる麦芽の甘みには熟成感に由来する複雑さはないものの、熟成年数以上に仕上がった印象で荒々しさは感じられない。
余韻:
樽材由来の収斂から始まり、バニラ、キャラメルといった樽由来の甘さを経て、スパイシーでドライな印象が最後まで持続する。
インディアンシングルモルト、アムルット10年グリーディーエンジェル。2012年に初めて発売された同蒸溜所の10年オーバーの原酒です。その後更に熟成年数の長いボトルも発売されましたが、当時はこのボトルが最長熟のインディアンシングルモルトでした。
加水ボトルですが、加水前の原酒が5mlの小瓶で付属しています。こちらの度数はなんと71%という、聞いたこともないような度数です。
シングルモルトで10年熟成というとまだ若いイメージがあるかも知れませんが、アムルット蒸溜所のある南インドの都市バンガロールは雨季と乾季のはっきりとしたサバナ気候で、最も寒い月でも平均気温15.4℃、暑い月では平均気温が32.8℃にもなります(それでもインドでは避暑地として有名で、過ごしやすい気候だそうです)。
この熟成環境において、年間のエンジェルズシェア(熟成期間中に樽から環境中に失われていくウイスキーの割合)は10-16%に登ります。冷涼なスコットランドでの平均が2-3%であることを考えると驚異的な数値です。
ウイスキーは3ー4年で熟成のピーク(主に樽からの影響)を迎え、それ以降は樽由来の要素が強くなり過ぎるため、かなり注意深く見ていないと製品化には耐えられないのだそうです。
当時加水でありながら284本限定で発売されたこのボトルが、如何に特別なボトルであるかというのは、そうしたことが理由です。
このボトルの味わいは独特です。
香りには明確にパッションフルーツやパイナップルを思わせる南国フルーツがあり、口に含むと強い樽感とミネラル感が主張してきます。このミネラル感が口当たりから余韻にかけてやや苦味のような雑味として感じられ、そのままスパイシーに以降していく印象です。
このミネラル感はおそらく仕込み水に由来すると予測しています。
加水前の原酒(残念ながら早い段階で飲み切ってしまいました)を日本の軟水で加水すると、このボトルにあるようなミネラル感は随分と抑えられたことが理由なのですが、アムルットの仕込み水はもしかしたら硬水なのではないでしょうか。
実はかなりの高額ボトルです。悪くはありませんが味わいとしては価格には見合っていません。
しかしアムルットとしては驚きの味わいだと思います。
以下は余談です。
意外に思われるかも知れませんが、実はインドは世界一のウイスキー消費国です。スコットランドよりもアメリカよりも日本よりも、インドはウイスキーをたくさん飲む国なのです。そのほとんどが国内のみで出回っているブレンデッドウイスキーが主体です。
そんな世界一のウイスキー消費国で、1948年にブレンディングとボトリングの工場として創業し、80年代初頭からウイスキーを生産しているのがアムルット蒸溜所です。蒸溜所の発展の経緯としても日本の山崎蒸溜所と似た部分があり、非常に興味深いです。
アムルット蒸溜所の概略を掻い摘んで知るのであれば、ウイスキーマガジンの記事がとても参考になります。
Whisky Magazine「世界が認めたインド産ウイスキー」
I love travelブログは、2011年に実際にアムルット蒸溜所に訪問した記事が書かれています。ポットスチルがインド製であることや、麦芽、ボトリング工場の写真など、ウイスキーラバーが知りたい情報満載で、アポイントの取り方にまで言及した素晴らしい記事です。
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