ローズバンク 12年 トリプルディスティレーション 52.5%

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経年変化で美味しくこなれたシェリーの香味というのは、たぶんこういうものなのだと思う。ローズバンクっぽいかどうかは別の話。

ROSEBANK 12Y. Triple Distillation 52.5% Matured in Sherry Cask.


評価:★ ★ ★

CP:NR

価格:NR


香り:

穏やかに始まり、甘く、徐々に強くなる。どっしりとした甘口シェリーの香味が主体。ベリージャム、枝付きレーズン(乾ききっておらず、まだ瑞々しさの残る柔らかいレーズン)、苺ジャム、かすかなクレヨンと、かすかなサルファリー。

味わい:

度数から想像するより柔らかい口当たり。レーズンを思わせる甘さが凝縮され、僅かなスパイスと心地良い収斂が現れる。

余韻:

スパイスと収斂に続いて、甘さが返ってくる。ややオイリーな口残り。


Glencara Co.Ltdという、今では聞かなくなってしまったボトラー?から発売されていたローズバンク。私は始めて見たボトルでしたが、昔から飲んでいらっしゃる方々にとっては懐かしさのあるボトルだそうです。当時(といってももう20年近く前なのでしょうか)はかなり売れ残っていたとか。


味わいとしては、「お前昔絶対ヤンチャしてただろ」っていうのと同じニュアンスで、「お前昔絶対とんでもなくサルファリーだっただろ」とでもいうような、しかし今では角がとれて丸くなり、誰からも愛される存在になった…そんな香味なんじゃないかと思います。


で、このボトルですが、美味しいシェリーカスクのシングルモルトです。ただ、ローズバンクっぽいかと言われると、それはもう分かりません。だって樽の個性全開なんですもん。樽の味がします。ほぼ樽の味しかしません。

しかし、しなやかで美しい樽の味わいです。飲んでみて、綺麗なベリー感の隙間にクレヨンやサルファリーのかけらを見つけたことで、このボトルが今と昔では違った表情をしていて、途切れずに結ばれた長い道のりの両端から、昔の面影が今を、今が昔の面影を、別れを告げる少し手前に訪れる一抹の寂しさや懐かしさを含んだ切ない安堵とともに、お互いに遠くから眺め合っている、そんな印象を受けました。

こうした切ないながらも前向きな心情の変化は、人であれば良い経験を経たということになりそうですし、ボトルにしてもたぶん同じでしょう。我々飲み手はこうしたボトルを飲むことで、そういう経験の一部を少しだけ分けてもらうことが出来ます。


評価としては、「三回蒸留のローズバンクの持つ繊細な原酒の個性が樽によって潰されてしまっているため、ローズバンクでこの味わいを出す意味はない」と感じる人もいれば、「三回蒸溜のローズバンクの持つ繊細な個性が下地にあるからこそ、この樽感が今こうして活きている」と感じる人もいるかも知れません。両者はいずれもローズバンクがどういうウイスキーなのかをきちんと理解した上での、美学ある視点だと思います。


テクニカルな話題としては、『サルファリーな要素は時間さえかければある程度消えてなくなる』ということだと思います。このボトルはその証左となり得ます。

経験値の高い飲み手の間で近年良いと言われているシェリーカスクのシングルモルトにも、時間経過でこうした流れに上手く乗ってくれるだろうという予測が幾分にせよ含まれているのではないかということに、一足早く気付かせてくれるボトルがこれなのかも知れません。

翻って考えると、シェリーカスクのシングルモルトは思った以上に時間がかかるというか、むしろ時間をかけて良い、ということなんでしょうか。


何はともあれ、こなれたベリー感、フルーツジャムのような甘さなど、シェリーカスクにしか見られない好ましい香味を存分に楽しむことが出来るボトルになっています。

こうした、経年変化によって昔とは違う味わいに変化し、飲み頃を迎えたシェリーカスクのシングルモルトというのは、このボトルの他にも存在していると思います。BARなどで見つけた際には、試しに飲んでみるといいんじゃないかと思います。

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