以前に比べてIPA感は穏やかで、蒸溜所の個性と麦芽の甘みとが分かりやすく、バランスの取れた仕上がり。
ICHIRO’S MALT CHICHIBU IPA cask finish 2017 Release 57.5%
評価:★ ★ ☆
CP:☆ ☆ ☆
価格:¥ ¥
香り:
しっかりとした香り立ち。やや野暮ったい印象がある。僅かに若さが残るが溌剌とした麦芽の甘さ。秩父原酒に特徴的な香り(秩父香)。樽由来のホップの香りは思ったよりも穏やか。オレンジ、遅れてシトラス。
味わい:
度数相当に力強い口当たりで、刺すような刺激がある。秩父味(本当すいません、適切な言葉が思い付かなくて…。)、カスクの個性としてのIPAの香味があるが、添える程度。穏やかなウッディネス。
余韻:
ドライでどっしりとしている。マスタードを思わせるスパイシーさ。
秩父蒸溜所から発売されたイチローズモルトIPAカスクフィニッシュの2017年度版です。
ウイスキーを払い出した樽をブリュワリーに貸し出し、IPAの熟成に使用してもらい、返却された樽をウイスキーの後熟(フィニッシュ)に用いるという作り方をしています。
秩父蒸溜所のIPAカスクとしては2016年の成田空港免税店限定シングルカスク(cask#3867)が有名かも知れません。極めて特殊なリリースでしたが、このボトルは同年のWWA日本地区大会シングルカスクモルトウイスキー部門で最優秀賞を受賞しています。
その後、日本のインディペンデントボトラーであるePmwer向け(cask#4663)のシングルカスクが発売されており、今回は3回目にして初のヴァッテッドでのリリースになるのかな?と思っていたのですが、調べてみると他にもウイスキートーク福岡2017向けがあり、後は2015年の秩父ウイスキー祭向けのボトルに至ってはフィニッシュどころかインペリアルスタウトバレルで熟成されていました。さすが秩父。先取の精神ハンパないです。あとシングルカスク多過ぎで追えないです。
IPAカスクをはじめとしたビアカスクはウイスキーの熟成樽としてまだ一般的ではなく、市場に出てきたのも本当に最近のことです。2016年にはグレンフィデック蒸溜所もIPAカスクフィニッシュ(写真)を発売して、大手蒸溜所の実験的な意欲作として話題になりました(2016年Spirit Business)。
ウイスキー熟成におけるフィニッシュという手法の確立と、ウイスキー需要の高まりと共に従来のシェリーカスクやバーボンカスクの調達が年々困難になっていることを合わせて考えると、今後もこうした変わり種カスクを用いたウイスキーは増えていくのではないかと考えられます。
今回のボトルですが、ヴァッテッドなだけに昨年度に発売された成田空港免税店限定シングルカスクと比べるとIPAの主張が押さえられ、代わりに蒸溜所の個性や麦芽の甘みがしっかりと現れていて、個人的には結構美味しいと思います。ホップやシトラスといったIPA由来の香味と秩父原酒の香味とのバランスが良いです。
IPAもシングルモルトも共に麦芽が原料なので、個性的な味わいであることに変わりはありませんが、相性は意外と良いのかも知れません。
なお、秩父のカスクが貸し出されたのは「志賀高原ビール」と「箕面ブリュワリー」の2つで、今回のボトルは両者から戻ってきたカスクが複数ヴァッテッドされています。
どちらのブリュワリーからも秩父蒸溜所の樽で熟成させた限定ビールがここ2年ほど発売されており、ビジネス的にも成功を収めているようです。
そのため、秩父のIPAカスクフィニッシュは今後も数量限定で毎年発売されるんじゃないかな?と思っています。
ところで、「IPA、IPA」と連呼しまくった今回ですが、IPAというのはインディア・ペール・エールの略です。
詳しいことを抜きに説明するとビールです。
もうちょっとだけ説明するとホップの苦味が効いた傾向のあるビールです。
これでいいかな?
どうかな?
駄目かな?
やっぱりこういうときは、説明を聞いただけで分かった気にならず、飲んでみるのが一番ですよね(丸投げ)
というか、正確な定義は私もよく分からないんですよ。
なので、IPAについてもう少し知りたい方はこちらへ。でも、読んでも結局どういうことなのかよく分からなくなるんだよなぁこのウィキペディア…。
ちなみに「ラガーじゃなくてエール?」みたいなことが知りたい場合はこちら。有名なアサヒィィ↓スゥゥパァァァ↑ドゥゥラァァイはエールではなくラガーに分類されるビールです。
この程度が限界ですね、私のビール知識は。