抑えめに取られたバランス。何これ優しい…。食中酒でもイケそう。
評価:★ ★ ☆
CP:☆ ☆ ☆
価格:¥
香り:
穏やかな香り立ち。ミネラルと海藻を思わせるピート香だが優しい。奥に海鮮BBQ、出汁、ほんのりと柑橘。
味わい:
度数を感じさせない優しい口当たり。出汁、甘さと苦味のあるグレープフルーツの皮とワタ。チャーしたオーク香を僅かに感じる。
余韻:
金属感のあるミネラルなピート、優しい唐辛子のスパイス感。
2017年10月4日に発売となるアードベッグの新しいオフィシャルボトル、「ARDBEG AN OA」です。
このたびMHDが開催したGrand Malt Tasting2017に参加し、先行でいただくことが出来ました。
樽構成は裏ラベル参照。書かれている他に、2種類のシークレットがあるそうです。
度数は46.6%とオフィシャルボトルとしては少し高めですが、それを感じさせない優しい香りと味わいにまず驚きました。ピート香も穏やかで、奥からは柑橘を思わせるフルーツ香も漂ってきます。
アードベッグTENにあるような鋭いピートを期待すると面食らうかも知れませんが、敢えて抑えめに取ったようなバランス感覚は嫌いじゃないです。個人的には、アードベッグTENの個性を残しつつ口当たりを優しくしたような印象を受けました。
食中酒としてもイケそうな雰囲気があり、もしかしたらモルトファンの裾野を広げるのに一役買うかも知れません。
簡単にですがお話を伺ってみたところ、コンセプトとしては、やや味わいに隔たりがあったアードベッグTENとウーガダイルとの間を埋めるような位置付けでのリリースを目指したとのことでした。
さらに特徴的なのは、シェリー酒の熟成に使われるようなソレラシステムと同様のカスクマネージメントで今後作られていくということです。
曰く、オフィシャルからの通常リリースながら、今年のリリースと来年以降のリリースとでは味わいに違いが出てくるだろうということでした。「味わいは徐々に進化していくはずです」という言葉が印象に残っています。
シェリー酒の熟成に用いられる本来のソレラシステムには、熟成の他に品質の安定化という役割もあると認識していますが、このアードベッグのためにおそらく新しく組んだシステムにおいては、今後にかけて徐々に定まるべき味わいに向けての変化が見られるはずです。そうした部分を指しての言葉なんだろうと解釈しました。
ウイスキーがシェリー酒と同様のスピードで熟成するのか、アードベッグの原酒に最適な組み合わせをどのように探っていくのかなど、飲み手としては興味が尽きません。
そういうわけで、蒸留責任者であるビル・ラムズデン氏のキャラクターが出ているかのような今回の実験的な新リリースでした。今後の味わいの変化も含めて楽しみです。
どれくらい先になるかはともかく、古いソレラシステムで多くの樽との調和を経て熟成されたオールド・シェリーのような、複雑な味わいのボトルが誕生することを期待したいです。