原酒の若さと樽の力強さが互いの棘を落とし合っていて、これはこれで悪くないバランス。教科書的な近年シェリーの香味。
TAMDHU 2004-2010 5Y. 45.1% LMDW the ten 08
評価:★ ★ ☆
CP:☆ ☆ ☆
価格:Standard
香り:
甘く、しっかりとした香り立ち。レーズン、プルーン、ブラックベリー。続いてミントのニュアンスのあるアルコール揮発香と、奥からやや未熟さの残る麦芽香。ニューポットにあるような刺々しさは樽由来の甘さによって抑えられている。若干サルファリー。
味わい:
度数以上に力強く、口当たりは重い。味わいでは樽感よりも原酒の麦芽感が前面に現れる。クリーミーな舌触り。麦芽の香味はまとまりきっておらず荒さが残るが、それが樽の甘さと相まって、重い口当たりと飲みごたえの形成に一役かっている。
余韻:
スパイシーでドライ。シェリーの甘さが再び現れ、ややオイリーなニュアンスが残る。
フランスの酒販店La Maison du Whisky(LMDW)が発売した短熟のタムデュー。
同社がリリースする手頃な価格のエントリーシリーズである『the ten』シリーズからの一本です。
『the ten』は”A distinctive range of 10 young Scotch Whiskies profiling classic characteristics”とあるように、キャラクターの異なる10種類の熟成の若いシングルモルトからなっています。どのボトルも複数樽のヴァッテッドで加水でしあげられています。
今回のボトルはファーストフィルシェリーカスク熟成の個性を前面に打ち出したボトルで、ファーストフィルのオロロソバット(オロロソという種類の辛口シェリー酒の、容量500-600Lの大きめの空き樽)で熟成されています。
開けたてはサルファリーな要素がやや強かったと記憶していますが、今はだいぶ落ち着いてきていると思います。
原酒の若さに由来する荒々しい要素はどうしても感じられますが、近年系のややべったりとしたシェリーカスクの甘さがそれを上手く整地してくれているため、ニューポットのようなフェインティな要素はあまり感じられません。逆も同じことが言え、原酒の荒々しさがシェリーカスクの過度な甘さを抑える方向に作用していて、シェリー感は甘みが強いながらも比較的丸い印象があります。
ざっくり言うと、若い原酒の力強さと甘みの強いシェリー感が、それぞれにお互いの余分な棘を落とし合っていると言えるような香味構成です。香味がせめぎ合っているため多少ガチャガチャとしてはいるものの、これはこれで悪くないバランスです。
少なくとも、コンセプトであるファーストフィルシェリーカスクの個性(近年の個性です)を端的に表すという目的は達成されていると思います。教科書的な感覚で付き合ってみてもいいかも知れません。