明るい未来を予感させる。
ARDNAMURCHAN SPIRIT 2016/A 53.0%
評価:★ ★ ☆ Recommend!
CP:☆ ☆
価格:★ ☆
香り:
しっかりとした香り立ち。シェリーの甘い香りと雑味のない若い原酒の香り。シェリー香はしっかりしているにも関わらず、嫌味な要素がない。原酒の若さは感じられるが、いわゆるニューポッティーな雑味は感じられない。奥から燻製を思わせるピートが仄かに漂う。
味わい:
力強く、若さはあるが、想像するよりとても綺麗。(麦芽感に最近の秩父原酒のようなニュアンス)、シェリーカスク由来のレーズンのような甘さが続く。
余韻:
僅かなタンニンの収斂と、原酒由来のアルコール感の強いドライさ
熟成1年の原酒と2年の原酒とをヴァッティングした、アードナムルッカンのニュースピリッツ。
アードナムルッカン蒸溜所は、インディペンデントボトラーのアデルフィ社が2014年に、スコットランドのマル島のすぐ北にあるアードナムルッカン半島に開業した新しい蒸溜所です。
日本のドリンカーの間では「グレート・ジャーニー」というTV番組で目白田中屋の店主である栗林幸吉氏が番組の最後に訪れて樽を購入したことでも有名になった蒸溜所でもあります。ピーテッドとアンピーテッドのモルトをバーボン樽とシェリー樽で熟成させ、正統派のモルト作りを進めているそうです。
2500本限定で発売された今回のボトルは、2015年蒸留のピーテッドモルトのオロロソとペドロヒメネス15樽(オクタブ。60リットル程度の小樽)と2014年蒸留のノンピ-トのオロロソとペドロヒメネス14樽(オクタブ)をブレンドし、2か月間スパニッシュオークのペドロヒメネス樽(バット。500リットル以上の大樽)でフィニッシュをかけたものだそうです。小さなシェリーカスクで熟成した原酒を大きなシェリーカスクでフィニッシュしていることになりますね。
原酒の熟成年数が規定の3年に満たないためウイスキーとは名乗れないのですが、ニュースピリッツとしてはかなり出来の良いボトルなんじゃないかと思います。ざっくりと説明すると、複雑さこそありませんが雑味がなく非常にクリアです。
樽は小さいほど原酒と触れ合う面積が相対的に増えるため、オクタブ樽を使うと短い熟成期間でも樽由来の香味が強く現れます。こうした樽のサイズの影響なのか、それとも使用されている樽材が良質なのか、または最後の大樽での緩やかなフィニッシュが何か特別な効果をもたらしたのか。理由は分かりませんが、樽由来のシェリー香はしっかりとしているにも関わらず、サルファリーやゴム臭のような雑味に繋がる香りがほとんど感じられません。原酒由来の香味にはさすがに若さがありますが、仄かなピート香のおかげなのか、ミドルカットが適切なのか、ニューポットに由来する雑味も感じられませんでした。
『樽の香味』、『原酒の香味』共に現時点で十分にレベルが高く、このまま熟成が進むことでここに『熟成による香味』が付与されることを考えると、これらが今後どのような味わいへと昇華されていくのか、期待に胸が高まって仕方ありません。
今の時期しか飲めない特別な原酒、バーに足を運び是非飲んでみて、ウイスキーの未来に想いを馳せてほしいと思います。