『ケミカルな』と言われる香味や、『紙っぽい』と言われる口当たりの、分かりやすい見本だと思う。
Littlemill 1990-2009 19Y. 51.5% Three Rivers “The Dance” series.
評価:★ ★ ☆
CP:☆ ☆ ☆
価格:¥
香り:しっかりとした香り立ち。甘さと僅かな清涼感。甘さはアマレットリキュールやライチ酒のような、人工的な香料を思わせる。合わせてバナナも。他にはレモングラス、刈り取った草、根菜。麦芽香には熟成感があるが、奥から控えめに現れ、弱い。
味わい:しっかりとした口当たり。アルコールの刺激がやや強く感じられる。麦芽の甘みは香りよりはしっかりと感じられるが、ここでも香料のような甘さのほうが強い。紙を食んだような独特の収斂。
余韻:口当たりを引き継ぎ、アルコールの刺激がミントの清涼感へ変化する。オレンジの皮やオレンジオイルが感じられ、じんわりと長い余韻。
日本のインポーター兼ボトラーであるスリーリバースの人気シリーズ『ダンス』のリトルミル。確か同シリーズの第12弾だったと思います。
あらためて飲んでみましたが、このボトルはウイスキーの飲み手の間でよく言われる『ケミカルな』香りや、『紙っぽい』口当たりを知る上で非常に有益なボトルだと思います。
このボトルの大きな特徴は、アマレットリキュールやライチ酒を思わせる人工的で強い甘さと、口に含んだ後に感じられる紙を口に入れたような独特な収斂(水分を奪われる感じ)を、かなりはっきりと感じ取ることが出来る点にあると私は思っています。刈り取った草のような所謂グラッシーな香りや、ミントやレモングラスを思わせる清涼感、僅かに根菜のようなニュアンスは、リトルミルを含めたローランド地域のシングルモルトにある程度見られる個性であるため、このボトルの個性というよりは原酒を作っている蒸溜所や地域の個性だろうと考えています。
様々なウイスキーを飲んでいると、甘さはあるけれど今まで飲んできたものと何かが違い、その違いはフルーツが直接想起されるよりそのフルーツの香りがする別の飲料や二次産物が想起される点だということが、今の私の場合はたまにあります。フルーツそのものではなく人工甘味料のような印象があるということです。私はそうした香味を『ケミカルな』という言葉で表現しますが、これは多くの飲み手も同じなのではないかと思っています。
このボトルは美味しいリトルミルだと思いますが、そうしたケミカルな香りが麦芽香を潰してしまうほどに強い点が、麦芽香に未熟な点が見られないだけに、どうしても惜しく感じられてしまいます。
ケミカルな印象というのは、一部コアな飲み手の間ではあまり好ましい香味の表現としては使われていません。ただ、こうした香味は誰にとっても分かりやすく、つまりとてもキャッチーなので、好きな人は意外と多い香味です。かく言う私もそんなに嫌いではありません。惜しいとか言いましたが。
リトルミルは90年代蒸溜の原酒にそうしたケミカルなフルーツ香を感じるものが多いので、気に入ったのなら狙ってみるのも手かもしれません。