リトルミル 12Y. 54% イタリア向け

90年代のフルーティーなリトルミルが基準だった自分に、往年のリトルミルの美味しさを教えてくれたボトル。



評価:美味しい( ★ ★ ★ )

CP:NR

価格:NR

 



香り:
しっかりとした香り立ちで、奥行きがある。最初にビターオレンジ、グレープフルーツ。続けてレモンクリーム、酸味の強いアップルパイとバニラアイスクリーム(要素が個別ではなく立体感を持っているので、「林檎、レモン、バニラ」とはならず、上記のような印象になる)。麦芽の芳醇な甘み。僅かに草を刈った時のような香り。

味わい:少し度数は落ちている印象があるものの、アルコール度数を充分に感じることのできる強さのアタック。フルーツ香に木樽から出るエキスの収斂が合わさったややビターな口当たり。それからクリーミーな麦芽の甘みが絡みつくように口の中に広がる。わずかにワクシー。

余韻:麦芽の甘みを引き継ぐ。長さは中程度。

1980年代にボトリングされていたトール瓶のリトルミル。オフィシャルボトルですが度数54%のカスクストレングスであることと、裏ラベルに本数限定を裏付けるボトリングナンバーが記載されていることが特徴です。80年代当時イタリア国内向けに発売されたものらしく、ベテランドリンカーの間では美味しいリトルミルとして認識されているボトルです。

リトルミルは蒸留年が90年代に入ると香味がより華やかでフルーティーな方向に振れていく代わりに、フルーツの凝縮感の奥に紙を口に含んだときのようなテクスチャーが現れ、麦芽や他の要素が弱くなり、全体としてボディがやや平坦な印象のボトルが多くなります。このリトルミルはフルーティーさを保ちつつ、優しい麦芽の甘さにクリーミーな口当たりまで加わり、90年代蒸留のボトルよりも香味の構成に奥行きがあることが最大の特徴だと思います。

グラッシーさやワクシーさといったローランドモルトに見られがちな(場合によっては否定的にとられがちな)個性があまり強くなかったのは、表記されている度数から予想されるよりも口当たりが優しいことも踏まえて、ボトルの経年変化による影響ではないかと考えています。(実際、90年代のリトルミルをグラスに注いでしばらく放置しておいてもグラッシーさやワクシーさは徐々に弱くなります)

90年代蒸留のボトルが今後の経年変化で同様の個性を持つに至るかは今の段階では判断出来ませんが、個人的にこのボトルにあるようなクリーミーな麦芽感はそのときの酒質に由来するもので、この年代独自の個性なのではないかと考えています。こうした、現時点では実際どうなのか分からない部分は、今後の楽しみの一つになるわけですね。

何はともあれ今回初めて飲むことが出来たボトルだったのですが、美味しかっただけでなく非常に勉強になったボトルでした。

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