アスターからエランタに続く、グレンモーレンジの樽への拘りの出発点となったボトル。
Glenmorangie Artisan Cask (1995-2004 9Y. ) 46%
評価:割と美味しい( ★ ★ ☆ )Recomend!
CP:良いと言える( ☆ ☆ ☆ )
価格:当時安かった( ★ )
香り:穏やかなバニラ香。林檎、オレンジ、洋梨、ローストした麦芽。穏やかなウッディネス。
味わい:度数よりもしっかりとした口当たり。口の中でまとまりがあり、アルコール度数に由来するものとは違った刺激が僅かに舌に残り、香味が一気に広がることがない(個人的にグレンモーレンジで感じる、口に含んでからの特徴。仕込み水の硬度に由来するのではないかと考えている)。麦芽の甘さを控え目に感じる。
余韻:麦芽の甘さと共に優しいウッディネスがじわじわと広がる。比較的長い。
2013年、米国在住の著名なウイスキー評論家ジム・マーレイ氏がベスト・オブ・ザ・イヤーに選んだウイスキーは「グレンモーレンジ・エランタ」でした。その系譜の源流に当たるウイスキーが、今回テイスティングしたグレンモーレンジ・アーティザンカスク、2004年に発売されたボトルです。
グレンモーレンジの蒸留責任者であるビル・ラムズデン博士が、自身の持つウイスキー熟成における樽そのものへのこだわりを、原酒の追加熟成とは異なる形で最初に落とし込んだ製品が、このアーティザンカスクになるのだろうと思います。
米国ミズーリ州のオザーク山地で成育したオークのうち、特に日当たりの悪い北斜面に生える成長の遅いもの(年輪の幅が狭い)を特別に選び出して樽を作成、それを米国のジャック・ダニエルやヘブン・ヒルといったバーボンウイスキーの蒸留所に4年間貸し出した後、スコットランドで自社のウイスキー熟成に用いるという、当時どこもやっていないような手間と時間がかかった熟成樽で、このウイスキーは熟成されたことになります。
ウイスキーの追加熟成も含めたグレンモーレンジのこうした先駆的な実験プロセスは他の蒸留所でも大いに参考にされ、日本では特に秩父蒸溜所が、ここ数年で同じように年輪幅の違う樹木で樽を作成し、自社の原酒の熟成に使用していることを最近のイベントセミナーで発信しています。また、日本に限らず世界各地の新興蒸留所では、立ち上げの段階から様々な種類の樽(バーボン、シェリーだけではなく、ワイン、ラム、ポート、マディラなど)を使用してウイスキーを熟成することは、自社の原酒に合う樽種を見つけるとともに、製品の味わいの幅を広げるための常套手段になっているような印象さえ受けます。
そんな背景を持つこのウイスキーは、熟成期間は9年と短めながら、穏やかでまとまりのある香味を持ち、きちんとした展開も持ち合わせている、美味しいウイスキーです。口に含んだ後の麦芽の甘さは溌剌としていて、若い荒々しさは感じられず、本来の熟成年数以上の熟成感を感じることが出来ると思います。
背景を調べてから飲むと、より深く楽しめるのもいいところです。
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