ダースで買っておけばよかった(涙)!ボウモア1996-2013、16年 54.1% BBRレトロラベル、Whisk-E向けは「90年代ボウモア」の典型的な香味をまとう優良ボトル。

目次

BOWMORE 1996-2013, 16Y. 54.1% BBR Retro Selected for WHISK-E LTD.


評価:★★★ Recommend!

CP:☆☆☆☆☆

価格:★(当時価格)


ボトル紹介

ウイスキー歴10年くらいの飲み手にとっては少し懐かしいかも。ウィスクイー輸入の96ボウモア

アイラ島最古の蒸留所であるボウモアから、1996年蒸留の16年もの。シングルカスク、カスクストレングスでボトリングされ、ボトラーのBerry Bros. & Rudd(BBR)から日本のウィスクイー向けとしてリリースされたボトルです。

なのでこのボトル、実は日本限定ボトルだったりします。

このボトルに限らず、表ラベルに「SELECTED FOR WHISK-E」と書かれているものは日本のインポーター兼ボトラーであるWHISK-E向けなのであり、基本的に日本限定です。

そのスペックはまさに2013年当時の、というか2010年代前半の流行そのものと言えます。こういうボウモア、すごく流行りました。

当時のリリース状況としては、今では伝説的なヴィンテージとなった1993年蒸留ボウモアのリリースがほぼ無くなり、かわりに1994年から1996年蒸留といった1993年に近しいヴィンテージのボウモア、特にバーボン樽熟成のものが豊富に、しかもお求めやすい価格でリリースされました。

ウイスキーの流行は今も昔もバーとそこに集まる飲み手から発信されているわけですが、このボウモアのようなボトルは飲み手にとっても手の届きやすい価格であり、バーとしても提供しやすかったため、当時は非常に気前良く抜栓されました。

その結果、その当時に飲み尽くされているボトルが多く(だから流行なんですね)、今から探すなら結構気合が必要だったりします。

少し前まではどこでも見かけたけど、気がついたらどこにも見当たらない。

このボトルも、そうしたリリースのうちの一つです。


味わい

まさに90年代ボウモアど真ん中!柑橘香るフルーティーさとミディアムピートが主体で、紙を喰んだような香味をまとわない優良ボトル。加えて、各年代のボウモアの特徴的な個性についても少し触れます。

味わいは「柑橘の皮」、「グレープフルーツのワタ」という、まさに90年代ボウモアど真ん中と言えるものです。

味わいに対するこうした表現は現在では他のウイスキーのテイスティングノートでもよく見かけるようになっていて、同様のフルーティーさを持つボトルの先駆けだったと言えるかも知れません。

多くの飲み手に受け入れられるであろう、非常に洗練された美味しいボトルだと思います。

瓶内で7年という割と長い時間経過(瓶熟7年ってやつですね)もポジティブに働いているようで、香味全体から余分な角を取れ、非常にまとまりがあります。ものすごくストレスなく飲み進めることができるので、飲み過ぎ注意で非常に危険です(写真は抜栓4日目のもの)

世界中で人気が続くアイラモルトの中でも特に人気の蒸留所であるボウモアは、今やボトラーズもオフィシャルも2000年代以降に蒸留された原酒が主流となっているため、ここまで典型的な90年代ボウモアはなかなか飲めなくなった気がします。

そんなわけで、懐かしさを抜きにしても味わい全体のバランスが高いレベルで取れており、ネガティブな要素が見当たらず、見方によっては今がピークの一つと言えるような味わいでもあるため、躊躇なくRecommend!とさせていただきました。

90年代のボウモアは1993年蒸留に限らず広い意味でやはり名酒だと思います。

そのままの流れで、せっかくなので各年代におけるボウモアの個性を、ざっくりとおさらいします。

ウイスキー界隈では相当有名な話なので知っている人のほうが多いかも知れませんが、ここはとりあえず説明させてください。

ボウモアという蒸留所のシングルモルトは、原酒の蒸留年代毎に全く違う特徴的な香味を持つことで有名です。

60年代のボウモアを代表する香味はマンゴーを思わせる唯一無二のトロピカル香。この時期に蒸留されたボウモアは現在でもそのほとんどが伝説的なボトルとなっています。今後もずっと伝説でしょう。

70年代に入るとそれが徐々に弱まり(それでも十分フルーティー)、80年代はボウモア暗黒時代とも囁かれるパフューム香が主体の全く違う味わいのボトルとなりました。これも違う意味で今後もずっと伝説となると思います。

そして90年代に入り、1993年蒸留原酒を筆頭に60年代への回帰を告げるような柑橘フルーツの香るボウモア第二の黄金期へと突入します。今回紹介しているボトルはこの時期のボトルに当たります。

2000年代以降はフルーツが少し弱まり、紙を喰んだような印象とボディの軽さが目立ってきます。

直近のボウモアも、特にオフィシャルボトルの12年が分かりやすいかと思うのですが、一時期に比べると紙っぽさは落ち着いてきていているものの度数が40%と低いことを差し引いてもボディの軽さはどうしても気になります。

ただ、話は変わるものの直近のボウモア12年は全然悪い酒ではないんですよね。価格を考えても至極真っ当な酒というか、「洗練された普及品」といって良いくらいには出来がいいと思っています。

で、その流れで、「今まさに流行っている香味が今後も同じように飲めるとは決して思わないほうがいい」という「あるある」についても伝えようと思いました。

いやマジで本当にそれ、というか、現代の若者言葉で表現するならば「ほんそれ」「それな」なんですけども。このボウモアとか当時は信じられないくらい雑に飲まれてたんですね。

だって当時10000円しなかったんだもん、ジャブ飲みです。

みんなでウェイとか言いながら、超適当にウメーウメー価格なりだよねーとか言いながら飲んでました。

で、ですよ?

これを踏まえて、更にこれ以降の事例も踏まえてですが、「今流行っているその香味、しばらく経つと全然飲めなくなるよ説」というものを、僕は唱えたい、というか、割と切実に皆さんにお伝えしたいです。

現在1996年蒸留のボウモアを入手しようとすると、20年オーバーまで熟成年数が進んでいるとはいえ3-4万円くらいになります。普通に考えれば今後はもっと上がるでしょう。

他に良い例として、いわゆる「スペイサイド・リージョン」名義でリリースされた70年代蒸留としては破格だった各種ボトルとか、もう出てないですよね。70年代原酒の弾数が多いわけないのは最初から分かっていたので、そりゃそうだよなという感じではありますが、仮に出たとしてもかなり高額で普通に買える価格にはならない気がします。

そんなわけで、自分が飲んだ現行ボトルで「うま!」と思った香味があった場合には、その香味のあるボトルは長い目で見てその時点が結局底値だったりすることは、きっと今後もあると思うんですよ。

このボウモアは僕にとってはまさにそういうボトルです。

今から考えれば、マジでダースで買っておけば良かったです。マジで。本当に。マジで。

僕も当時飲み散らかした勢なので、これ1本しか買ってないんですよね(涙)

こういうことは今後も絶対にあるので、「好き!うま!」となった香味を持つボトルに巡り逢ったら、その時が底値だと思って、とりあえず手を出してみる!ということを、割と強く、というか比較的超強く、オススメします。

安いボトルなら尚更ですね。


テイスティングノート

香り:

穏やかに始まり、徐々に強くなる。柑橘果実の爽やかさと甘さ、穏やかなミディアムピートが主体。グレープフルーツのワタと皮、バーボン樽由来のオレンジ、オレンジマーマレード、温州みかん、それらに続く穏やかなアイラピート。遅れて仄かにライム、奥から溌剌とした麦芽の熟成感。非常に良い香りである。

味わい:

度数相当にしっかりとした口当たりで、バーボン樽由来のオレンジや弱いバニラ香を伴いながらグレープフルーツのワタのニュアンスが強くなる。それに伴う穏やかな苦味と酸味と甘味、心地良いウッディネス、全体を締めるミディアムピート。ボディは中程度。

余韻:

味わいから継ぎ目なく移行し、ボディの要素を引き継ぐ。樽由来とも柑橘のワタを思わせる香味由来とも取れるような穏やかな収斂、そこから返ってくるオレンジやグレープフルーツの柑橘香、非常に微かな塩気、それらと共にミディアムピート。香りから始まり、余韻に至るまで引っかかる要素がなく、非常にストレスフリー。

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