キャパドニック 1972 – 2011, 38年 53.8% ダンカンテイラー レアレスト・オブ・ザ・レア 信濃屋向け(ユアンズチョイス2nd)

幸福な時代があったんだなと。複雑な熟成香と果実香、ドライで重くないボディ。優良ヴィンテージの優良ボトル。

CAPERDONICH 1972-2011, 38Y. 53.8%

Duncan Taylor Rarest of the Rare

cask# 7428, 129 bottles.

Euan’s Choice 2nd Release for SHINANOYA


評価:★ ★ ★ ★

CP:NR

価格:NR


香り:

しっかりとした香り立ち。熟した果実を思わせる濃密で甘酸っぱいエステル香と、素晴らしい麦芽の熟成香とが渾然一体として立ち昇る。アプリコット、黄桃、白葡萄、ドライフルーツ(パイナップル、無花果)。どんなフルーツ香を取るかは各自ご自由にと言った印象。やや香木のような印象もある。微かにミント。僅かに土っぽい内陸系のピートもあるか。

味わい:

口当たりは力強くドライだが、ボディはそこまで厚くなく、あくまで中程度。麦芽の熟成感や甘み、フルーツエステル香は香りで感じられたものより穏やかになる。それにより樽由来の香味が少し前に出てきて、僅かに乾いたウッディネス、蜂蜜。穏やかに金柑、グレープフルーツの果実とワタ。

余韻:

香りと味わいの要素を穏やかに引き継ぎながら、じんわりと長く続く。胡椒を思わせるスパイス感、穏やかなドライさも持続する。

目次


ウイスキー不況の激動に翻弄された蒸溜所、キャパドニック

長くなるので駆け足で紹介します。

グレングラントの第2蒸溜所として1898年に建設、不況の煽りを受け1902年には早くも一旦閉鎖、その後半世紀以上を経た1965年に復活再稼働(その際にキャパドニックと命名)、1977年にシーバスリーガルに買収され、2002年に閉鎖されたスペイサイド地域の蒸溜所、それがキャパドニック蒸溜所です。

主にブレンデッドウイスキー用の原酒を生産するために作られた蒸溜所で、稼働中にはオフィシャルボトルが存在しなかった蒸溜所でもあります(閉鎖後の2005年に1988年蒸留のオフィシャルボトルが限定で発売)。2010年には蒸溜所の設備も撤去されており、再びの復活再操業の見込みはなくなりました。

しかしキャパドニック蒸溜所の設備の一部は撤去時に保管されていて、アナンデール蒸溜所やウルフバーン蒸溜所といった新興蒸溜所、スコットランド外ではベルギーのオウル蒸溜所へと受け継がれ、今も脈々とウイスキーの生産を支えています。(アナンデール蒸溜所の記事:Whisky Magazine Japan Nov 20, 2014はこちら。ウルフバーンの記事:Whisky Magazine Japan Oct 31, 2013はこちら

こうしてあらためて見ると、時代に翻弄された激動の生涯を送った蒸溜所なんですね。

もしウイスキーブームが到来した現在まで、例えば閉鎖せずに後10年長く生き残っていたとしたら…とか、想像したくなるのは私だけでしょうか。


信濃屋とダンカンテイラーが組んでリリースされた、ユアンズチョイス2nd

当時信濃屋からリリースされた3本の1972年蒸留のキャパドニックが「Euan’s Choice」、「Still Standing」、そしてこの「Euan’s Choice 2nd」です。

このボトルはユアンズチョイスと銘打たれて信濃屋からリリースされた1972年蒸留のキャパドニックとしては第2弾に当たりますが、第3弾以降はリリースされておらず、事実上同名シリーズの最後のボトルです。

キャパドニックの評価が高まったのは長熟原酒が市場に出始めた2000年代中頃からのようで、中でも1972年はキャパドニックの優良ヴィンテージとして広く認知されており、様々なボトラーから数々のボトルがリリースされました。

有名なボトルとしては、ダンカンテイラーピアレスコレクション各種、The Whisky AgencyのPrivate Stockあたりだと思います。

ただ、残念ながら私は飲み始めの時期的に72キャパのブームに間に合わず、語れるほど飲み比べをしていません。

そのため、上記に挙げたボトルの情報に関しては、他の飲み手のブログを検索し、参照してもらったほうがいいと思います。


華やかで熟した果実香と心地よくドライなボディ

オフィシャルボトルがほぼないため、キャパドニックのハウススタイルを定義するのは難しいのですが、個人的には華やかなフルーツエステルと、心地よくドライで、あまり厚くないボディかなと思っています。まさにブレンド用の原酒らしい味わいのシングルモルトだと思っています。

そしてこのボトルですが、純粋にとても美味しいです。

特に香りは素晴らしく、華やかで奥深いフルーツ香と合わせて長期熟成した原酒でしか現れ得ない熟成香があります。様々なフルーツの香りを各自が自由に取れてしまうような懐の深さがあると思います。

こうした香味のボトルが立て続けにリリースされた当時は、今から考えても恐ろしく幸福な時代だったのだろうと、あらためて思ってしまいます。


ちなみにこのボトルの当時価格は税込で18000円ちょっとくらいです。

閉鎖蒸溜所であるキャパドニックの、それも優良ヴィンテージと呼ばれている1972年蒸留の長熟シングルカスクの価格としては、今ではとても考えられません。私もあらためて調べてみてビックリしました。

今の感覚でCPを評価するなら文句なしの☆☆☆☆☆となりますが、既に希少なボトルとなってしまい、それゆえ当時価格に意味がなく、同様の理由で当時価格でのCP評価にも意味がないと判断したため、CP、価格ともにNR(評価なし)とさせていただきました。

つい7年前ですが、もう7年前。

我々がたまたま節目の時期を目撃しているだけかも知れませんが、たかだか10年近くでウイスキーを取り巻く環境は本当に物凄く変化したんだなと感じざるを得ないです。

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